表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/57

第2話 聖女の力と呪い

 呪いが自分の夫の身体を蝕んでいく。

 苦しそうに何度もはあ、はあ、と息を吐きながら、目を閉じて苦しむ。


「コルネリア様?」

「少し外に出てきます」


 コルネリアは静かにその場を去ると、庭園へと向かった。

 庭の象徴ともいえる一際大きな木の裏に隠れると、そのまま崩れるようにしゃがみ込む。


(呪い……レオンハルト様……!)


 呪いを目の当たりにするのは実は初めてではなかった。

 そう、彼女がルセック伯爵家でいた時の患者に一人、酷い呪いにかかったような老婆がいたのだ。

 しかし、もうその老婆がルセック家に来た時には、コルネリアは聖女の力を失ってしまっていた。

 医療で助けることもできず、聖女の力も受けられなかった彼女は、翌日に亡くなった。

 一晩中苦しみ悶え、そして意識を失った数時間後に──


(嫌……もうあの時のようなことは、見たくない)


 コルネリアは涙を堪えながら、唇を噛む。

 そして自分の手のひらをじっと見つめて力を込めてみる。


「どうしてなくなってしまったの?」


 彼女にとって救えなかった事実が重くのしかかり、そして自責の念に駆られる。

 苦しむ老婆の様子を見ていたからこそ思う。


(レオンハルト様にあのような思いはさせたくない……でもどうしたら……)


 コルネリアは何か自分に出来ないかと必死に思考を巡らせるが、答えは見つからない。


 その時、ふと足元にある花を見つける。


(この花……)


 それは白い花でコルネリアが幼い頃、教会で出会った頃にレオンハルトといた庭にあった草と同じだった。

 白く小さな花を咲かせているそれは、誰かに踏まれたのか茎の部分が折れてしまっている。

 曲がってしまった茎は栄養を与えても元には戻らないだろう。


 コルネリアは少しの間考えると、その花に自分の手をかざしてみる。


(お願い、元気になって……)


 茎の折れてしまっていた花は少しずつではあるが生気を取り戻し、また再び真っすぐに太陽のほうを向いた。

 失った聖女の力が戻ってきているかもしれないと思ったコルネリアは、急いで病室へと戻る。



「コルネリア様?」

「できるかどうかわからない、でもやってみる」


 そう言ってレオンハルトの近くに寄ると、先程やったように手のひらを禍々しさを放つ胸にかざす。


「──っ!!」


 先程とは違って今度はコルネリアの中に苦しみや悲しみのような負の感情が勢いよく流れ込んでくる。


「んぐっ!!」

「コルネリア様っ!!」


 あまりの禍々しさに抱え込むことができずに意識を手放してしまいそうになる。


(これが、レオンハルト様が受けてる呪い……?!)


 自然と涙が溢れてきて、その雫がぽたりとコルネリアの靴に落ちる。


「おやめくださいっ! コルネリア様が死んでしまいます!!」

「それでも構わないっ! たとえ死んでも、私はレオンハルト様に生きてほしい!!」

「──っ!!」


 それまで見たことも聞いたこともないほどのコルネリアの感情の叫びに、テレーゼは思わず手が震えた。

 今、必死に彼女は自分の愛する人を助けるために力を使っているんだ、と気づき、同じように涙を流して見守る。


(レオンハルト様を死なせない、死なせたくないっ!)


 彼女の叫びが届いたのか、禍々しい跡は少しずつ小さくなって次第にうっすらと一つの傷になる。

 それまで彼を蝕んでいたものは収まった。


「レオンハルト……さ、ま?」


 先程まで苦しんでいた彼は正常な呼吸を取り戻し、静かに眠りを続ける。


「よか……った……」


 レオンハルトの頬を優しくなでると、コルネリアは力尽きたようにそのまま倒れた──

ここまで読んでくださりありがとうございます!

処女作を大改稿して掲載しはじめました!

旧作も載せてますのでよかったらどうぞ!

 ↓

(溺愛×和風×逆ハーレム、乙女ゲーム風)

『天牙の華~政略結婚から始まる復讐は、最強の【刀】に至上の恋を教える~』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ