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吸血姫ハ愛ヲ求ム  作者: 金柑乃実
18/23

紅音編③

雅が入学してきて数日。

午後のお茶会の人数が増えたこと以外、特に何も変わらない毎日だった。

雅はまだ一言も喋らない。そのせいで、藍莉はどんな声か予想して楽しんでる。

雪乃と美晴は、自分たち以外の人間に興味はないらしく、相変わらず人目も気にせずイチャつく。

わたしは、理事長に呼び出されたと言って理事長室にお茶を飲みに行くだけ。

18年間続けてきた、変わらない日常だった。


「たまには全員で納骨堂の掃除をしよう!」

「納骨堂はとても綺麗だと聞いているわ。それなら、薔薇園の方が先じゃないかしら?」

最近、藍莉と雪乃は、よくこの話題でぶつかっている。

「薔薇園は雪乃と美晴が2人でやってるんでしょ。わたしは1人よ」

「本当に1人なの?他の方は?」

「い、いないわ!」

藍莉も、一応隠してるつもりらしい。

「ね、紅音、納骨堂の掃除が先でしょ?」

「薔薇園の方が先よね?」

「……どっちも2人がほとんど毎日通ってるから、わたしが行く必要ないと思うんだけど?」

学園内で誰にも邪魔されない場所っていうのは限られてるから。

わたしたちは、立場上邪魔されにくい場所を多く知ってるけど。

それに、わたしとしては、そういうのよりお茶を飲みに行きたい。

「わたしだけじゃ人手が足りない!」

「それはわたしたちだって一緒よ」

「薔薇園のどこに掃除が必要なの?水を与えないから雑草は勝手に枯れるし、吸血薔薇の世話は充分でしょ?」

「それは違うわ」

このまま放置してなんとかなる問題ではないみたい。

「わかったわよ。順番に行けばいいんでしょう」

しばらくお茶はお預けか……。


まずは簡単に終わりそうな温室から。

特にすることはないから、わたしがするのは薔薇の花の手入れ。

雪乃も藍莉に対立するだけするけど、意味が無いことが多いから……。

まぁ、おかげで雪乃の機嫌はいいけど。

わたしは慣れてるけど、わたしの隣で薔薇の木の根元を見ながら雑草を探している雅は、たぶん1番の被害者。

「巻き込んでごめんなさい」

雅は無言で首を振るだけ。相変わらず喋る気はないみたい。

ここにいても楽しくないし、渋々作業してる藍莉のところにでも行こうかな。

「危ない!」

立ち上がった瞬間、バランスを崩した。

……と思ったら、なんかがっしりした腕に支えられてた。

……この感じ……知ってる、けど……。

「……雅……?」

目の前にあるのは雅の顔。けど、さっき聞こえた声も、この腕も、男性的なもの。

わたしの知ってる、こういう腕の持ち主は1人しかいないし、それも何年も前の薄れた記憶だけど、でも覚えてる。

……雅は、男……?まさか……。うん、そんなことありえない。

「……雅、ありがとう」

雅から離れて、そこ姿をじっと見る。男には見えない……はず。

「……今の声……」

「……!」

雅はハッとして口元に手を当てた。やっぱり、あの声は雅で間違いないみたい。

「その声を隠すために、今まで喋らなかったの?」

雅は少し戸惑いを見せた後、頷いた。

「……そう」

「……すみません」

今度はちゃんと喋るみたい。もう隠す必要はないからか。

「その声、コンプレックスなの?」

「はい」

「じゃあ、無理に喋ることはないわ」

「……いいんですか?」

「えぇ。好きにすればいい。別に何も言わないから」

「ありがとうございます」

彼女にどんな秘密があるのか知らないけど、わたしがどうこう言うことじゃないと思うし。

……気にならなくはないけど。


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