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世界の行方を決める旅


 私とメグルとシグレの3人は、魔術の名門校であるゴールデウス魔術学校を卒業しておきながら、就職しない。代わりに旅人となり、この世界を渡り歩く道を選んだ。旅人といっても、ただの旅人ではない。魔術師として、各地で困っている人を魔法の力で助けながら旅をする。できれば助けたお礼として、旅の資金としてお金をいただく予定だ。でもほんのちょっとだけだよ。最低限でいい。

 何故そんな道を選んだかというと、メグルのお父さんを探すためである。

 メグルが私の村にやってきたあの日から、炎賢ランドグリースは行方知れずとなっている。そのため、このままではメグルの、お父さんを殴り飛ばしたいと言う願いを叶えてあげる事ができない。なので旅をしながら、彼を探す事にした。

 というのは若干建前であり、本当はこの世界の全体を見てみたいという私自身の願望もある。私には、この世界から魔法を消し去ると言う選択肢も託されているからね。その責任を全うするためにも、まずはこの目で世界を見なければいけないと思う。


「──本当に、いくのだな」

「はい」


 現在私達は、エリシュさんの家で出立の支度を整え、エリシュさんとルナさん。それから屋敷のメイドさん達に見送られる形で家の前にいる。

 卒業したその日の内に旅に出るのは、当初から予定していた事だ。だらだら伸ばしていたら、決意がにぶってしまうかもしれないからね。この日を境にして旅に出るのを、私達姉妹3人は1年くらい前からエリシュさん達に伝え、そして今実行しようとしている。

 旅立つ前にメグルのお父さんが見つかれば、それはそれで良かったんだけどね。エリシュさんも、色々手をつくして探してくれたみたいだけど、結局今日までは見つかっていない。なので予定通り旅立つ事になった。


「初めてこのお屋敷に来た時が、まるで昨日のように思えます。……立派になられましたね。お嬢様」


 エリシュさんの隣のルナさんが、珍しく私を褒めながらそう声をかけてくれた。その表情は柔らかく笑い、私達の門出を祝ってくれている。


「……ありがとう、ルナさん」


 私はそんなルナさんを抱き締めた。ルナさんも、私を抱き締めて迎え入れてくれる。


「旅の中では、危険な事もあるでしょう。できれば何事もなく目的を達成される事を願っていますが……もし失敗したり、もうダメだと思った時は、迷わず戻ってきてください。私達は、ここで待っていますから」

「うん。絶対に、帰ってくる。だから、ちょっとだけ行ってきます」

「しかし大丈夫なのか?シェスティアの男嫌いは、未だになおっていないだろう。そんな状態で旅をしてみろ。私の可愛い娘に、旅先で男達が寄ってくる事は目に見えている」

「確かに……!」


 美しく成長してしまった私を、世の中の男が放っておくとは思えない。私は未だに男の人がいるだけで緊張してしまう状態にあり、男の人と至近距離で接する事は不可能な状態だ。


「それなら心配いらねぇ。シティに近づく男はオレがぶっ殺すからな」

「私も、お姉さまに悪い虫がたかるのは許しません。ぶっ殺します」


 口々にそう言ってくれた2人が、心強い。旅は、1人じゃないからね。3人いれば、例え嵐が襲い掛かって来ようともなんとかなる気がする。


「お二方、下品な言葉遣いは感心しませんね。特にメグルお嬢様は、私がその口調を直すために教えた事がまるで何も活かされていないのでは?」

「うっ」


 ルナさんは私から手を離すと、そう言いながらメグルに詰め寄った。

 ルナさんはメグルのその男口調を直そうと、一生懸命だったからね。結局何も変わりはしなかったけど、でも頑張っていたと思う。その努力は認めるよ。


「こ、こればっかりは……クセというか、もう身体の一部というか……だから無理なんだよ」

「ふふ。分かっています」


 ルナさんはムスっとした表情をしていたけど、言い訳を聞いて私に向けてくれたのと同じ柔らかな笑顔で、メグルを抱き締めた。


「メグルお嬢様も、どうかお気をつけて。お身体を崩さないよう、ちゃんと体調管理をしてくださいね。それと……お父様と、会えるといいですね」

「……ああ。ありがとな、ルナ」


 メグルもルナさんを抱き返すと、その姿は恋人と別れを惜しむカップルのように見えてしまう。メグルの背が大きく、その容姿が凛々しいせいだね。


「私は、気の利いた台詞は言えない。できれば皆には残ってもらい、私の傍で私を囲って働いてもらいたいのだが……それは私の我儘だ。君たちの自由を阻害するつもりはない」


 エリシュさんの望みは、可愛い女の子に囲まれて余生を過ごす事だから。私達もその、エリシュさん理想のハーレムに含まれている。

 だから、私達が旅立つ事には反対だった。でも私達の自由を尊重し、そう言って送り出そうとしてくれている。


「エリシュさんの望みは、いつか私が叶えます。私はエリシュさんに、お姉さまと過ごせる時間を作っていただきました。それだけではなく、共に過ごす時間はとても貴重で、とても楽しかったです。まるで本物のお母さん……いえ、お父さん?のように感じてしまう程で……ですから、そんなエリシュさんのためでしたら、私はどんな事だってします。ですから、待っていてください」

「……そこは素直に、母と言ってほしかったよ」

「す、すみませ──」


 謝罪の言葉を口にしようとしたシグレを、エリシュさんが抱きしめた。その言葉は遮られ、謝る必要はないと、行動で示したのだ。


「君たちが帰ってくるのを、私は心待ちにしている。だから、身体にだけは気を付けるんだ」

「はいっ」


 シグレもエリシュさんを抱き締め返し、そして元気に返事をした。

 そこに更にメイドさん達が口々に私達を気遣う言葉をかけてくれて、現場はちょっとした騒ぎとなった。中には泣き出してしまうメイドさんもいたから、旅立つのにちょっとだけ躊躇してしまう。

 それから事態が収拾するのに若干の時間を要し、改めて私達は家を後にする事になった。


「それじゃあ、行ってきます!」

「行ってきます!」

「行ってくるぜ」


 私とシグレとメグルは、それぞれ大きなリュックを背負い、皆に背を向けて歩き出した。私達に向かい、皆が手を振ってくれる。そんな皆に向かって私達も手を振り返し、そして本当にお別れとなった。


「そういえば、ディシアさんは一体どこへ行ってしまったのでしょう」

「どこだろうねー……」


 歩いて町の外へと繋がる門へとやってきた所で、シグレが心配そうに呟いた。私も同じように彼女の事は心配していて、気になっていた。


「……さすがに、変だな」


 ディシアを止めようとしたシグレの行動を制してまで、ディシアを行かせたメグルもさすがに心配そうに呟いた。卒業式に来なかった上に、その後も会いに来ないと言うのはあまりにもおかしいからね。彼女は今日、卒業式の後に私達が旅立つ事を当然知っている。このままお別れと言うのは……あまりにも呆気なさすぎる。


「どうする?探しに行く?」

「んー……」

「──遅いぞ、シェスティア!」

「わぁ!?」


 空から私の名を呼ぶ声が聞こえて来て、私の名を呼んだその人物が私の目の前の地面に着地した。

 今朝もあった出来事に、私は今回も驚かされてしまったよ。でもそれよりも、ディシアが目の前に現れた事に安心した自分がいる。


「待ちくたびれたぞ!余は準備万端だ!さぁ出発しよう!」

「は、え?何、どゆこと?」


 ディシアが私の両手を引っ張って一緒に歩き出そうとするので、私は混乱気味だ。状況がつかめない。


「つまり、ディシアもオレ達と一緒に行くって事だろ」

「その通りだ!」

「「えええ!?」」


 私とシグレは、声を合わせて出して驚いた。どうしてとか、なんでとか、色々な疑問が浮かんで来る。

 というか何でメグルはそんな知ってるような口ぶりなの。もしかして、ディシアがそうしようとしていた事を知ってた?いや、今朝のやり取りからそれはないか。


「皆と別れた後、余の意向を余の付き人に伝えに行ったのだが、反対されてしまった!だが余はもうシェスティアと共に行くと決めたので、強行してここにいるのだ。つまり、帝国の者が余を探している。見つかったら捕まってしまう。だから早く行こう!」

「そりゃそうだ……ていうか──」


 私達の様子を見て、こちらに駆けつけて来る大人達がいるのをディシア越しに見た。男が駆け寄ろうとしてくるという気持ちの悪い光景を目にした私は、反射的に駆け出した。ディシアと手を繋いだ状態のままだ。


「お姉さま!?」

「行くぞ、シグレ!」

「は、はい!」


 そんな私達に、メグルとシグレも続いて駆けだす。


「ははは!」


 この事態を招いたディシアは楽しそうに笑っているけど、笑いごとではない。でも私も釣られて笑ってしまった。

 こうして、私達の旅立ちはちょっとだけ慌ただしい物となってしまった。これから先の旅も、このようになるのだろうか。それとも、逆に穏やかな物になるのだろうか。何にしても、楽しみで胸が躍る。

 目的は、メグルの父親探しだけどね。だけど異世界を旅するとか、ワクワクしないはずがない。この広い世界で、この先何が待っているのだろうか。


 この4人なら、何が起こっても楽しい事になるに違いない。


これにてこの物語は終幕となります。読んでいただきありがとうございました!

なんとか終わらせられた……

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