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──その子との出会い その1


 その子との出会いは、私が初めて魔力を解放してから、少し経ったある日の事だった。

 その前に言っておくと、私は同年代の村人との仲が上手くいっていない。何故か。それはあまりにも、相手が低能で無能で無知で痴愚で表六だったからだ。

 いや、分かる。今の私と同年代の子供なんて、所詮はその程度の知能指数なのだ。前世から合算して実質大人となりつつある私と比べてしまっては、相手がかわいそうすぎる。

 だけど、せっかくパパとママに買ってもらった私の服を、平気で泥のついた手で触って汚してきて、挙句にブチ切れた私を見て大泣きし、まるで自分が被害者の如く振舞うような奴は赦せない。

 パパとママがどうして同年代の子供と私を邂逅させたのか、その理由はなんとなく分かる。私は基本家から出ず、同年代の友達もいないのでぼっちだ。幼少の成長過程でそれはあまりよろしくない。だから私に、友達を作ろうとしたのだと思う。だけどそれは誤りだった。

 私も最初は、子供相手に合わせて接してあげようと思っていたよ。パパとママの気持ちを踏みにじる訳にはいかないから、馴れてないけどそれなりに、仲良くするつもりだった。だけど手をあげてくるなら別だ。私は鬼の如く怒り、その周囲にいた同年代の子もそんな私を見て引いていた。勿論その場に男はいない。全員女の子である。

 私のあまりの怒りっぷりに、見ていただけの子も泣いていた。あまりに怒り過ぎて、パパとママにも怒られた。怒られたと言う程のものだったかどうかは置いておいて、言いすぎたったとは思う。

 うん。この時の私は、完全に前世の私と化していた。でも怒るだけの理由はあったので、理不尽に怒った訳ではないのでそこは違う。

 前置きが長くなったけど、つまり私はその件がキッカケとなり、近所の同年代の子供からハブられているという訳。あまり大きくない村だから、その件は決定的な物となってしまった。でも別に、どうでもいい。思い返せば前世でも同年代の友達なんていなかったし、何も気にする事なんてない。


「シティ!」

「ひっ」


 私は突然扉を開いて出現したパパに驚き、思わず飛び上がって部屋の隅っこに駆け寄った。

 避難先の部屋の隅っこで縮こまった私は、訪れたのがパパだと理解すると、怯えながらも非難の目を向ける。ノックがなかった事と、私が男性恐怖症だという事を度々忘れるその記憶力のない頭に対してだ。


「わ、悪い……。パパだから、平気だぞ」

「……部屋に入る時は、ちゃんとノックして。次忘れたら、嫌いになるから」

「本当に悪かった!次からはちゃんとノックするから、嫌いにならないでくれぇ!」


 半べそかいて謝ってくるパパだけど、このやり取りは既に過去数回行われている。

 ここで本気で怒って口もきかなくなれば、さすがに忘れる事はないと思う。だけどそんな事でこの関係を壊したくはない。だからこの同じやり取りで、この話は終わり。


「それで、何?またママを泣かせたの?」

「またってなんだよ!泣かせてねぇよ!……今日はシティに、会ってもらい人がいるんだ」

「……」


 この間、そう言ってこの家を訪れたのが、同年代の子供一行様だ。まさか、その結果まで忘れた訳じゃないよね。もし忘れているのだとしたら、私はこの人を連れて病院に行かなければいけない。頭をみてもらいに。


「……この間の事は覚えてる。前はパパとママもシティの事を考えず、ただ親らしく娘に同年代の友達を作ってやれたらなと思ったんだが、結果はあんな事になっちまった。ゴメンな」

「悪かったのは私と、私の服を汚したあの子。だからパパに謝られる必要なんてない」


 私は本心でそう思っている。パパとママの気持ちを踏みにじるような行動をしてしまった自分が悪い。だから謝ったりはしないで欲しかった。自分がみじめになるだけだから。ただでさえ相手の親に謝ると言う行為をさせてしまい、みじめな気持ちになってるのに、私にまでそうさせらたら私の立場がない。


「それで、前の事があるのに、それでもあえて私に友達を作らせようとしてるの?」


 私は話を変えたくて、思考を切り替えたかのように尋ねた。


「いや、違う。今回は友達にならなくてもいい。ただ、会ってほしいんだ。その後は自由にすればいいと思ってる」

「……まぁ、いいけど」


 パパのこの様子を見る限り、何かありそうだ。私としても、このままハブられ続けるのは問題があると思っていたので、この状況を脱するチャンスだと思う。だから、パパの提案を受け入れた。

 そして、後悔した。


「──なんだ、このション便くせぇガキは。あんたらの子供?はっ。随分と大切に育てられてそうだな。見るからに、お嬢様って感じだぜ」


 私がパパに連れられてやってきたのは、家の近くの草原だ。そこで待ち構えていたのは、ママと赤髪の少年だった。

 そして開口一番、私を罵り始めたのだ。私はまだ、何もしていない。何も喋ってもいない。さすがにまだ何もやっていないし言っていない相手に、この態度はないだろう。見事なクソガキっぷりに、前世の私もビックリだ。

 だけど私は、彼に対して反論したりはしない。何故なら彼が、男だからだ。相手が例え子供だろうと、恐怖を感じてしまうようになった自分が情けない。私は言いたい事をぐっとこらえ、ただ罵られるだけである。

 私に会わせたいという相手が、まさか男だとは思わなかったよ。分かってたら会うなんて言わなかった。


「ま、まぁ落ち着いてくれ。こいつは、訳あってこの村に引っ越して来た、メグルっていう子だ。誰に対してもこんなだから、友達がいない」

「はっ。何が友達だ。そんなもんいらねぇっての。あんたらまさか、オレと自分の娘を友達にするつもりで連れて来たのか?」


 そのつもりだったんだろうけど、相手が男という時点で私は辞退させてもらう。相手にもしたくないのでさっさとこの場を去りたい気分だ。


「よく見てみろよ、そいつを。オレを見て、怯えてるぜ。それにこんだけ言われて何も言って来ないような根性無しが、オレと友達になれる訳ねぇだろ」


 いや、本当にその通り。友達になれる訳がない。だから、帰っていい?

 私は目をママに向けて訴えたけど、ママはニコやかに首を振って来た。


「シティちゃん、勘違いしてみたいだけど、この子。メグルちゃんは女の子だよ」

「へ?」


 ママが彼──いや、彼女の頭の上に手を乗せながら、そんな事を言って来た。

 そう言われて改めて見てみると、確かに女の子に見えなくもない。目つきが悪く、だけど睫毛は長いし、カッコイイけどどこか可愛さも感じさせる。


「あ、そう。女の子なんだ。ふーん、そうなんだ」


 私はそう知ったその瞬間から、態度を改めた。堂々と前を向き、胸を張り、腕を組み、ふんぞりかえって彼女を見返す。


「なんだ?急に態度がデカくなったじゃねぇか。やんのか?」

「いやいや、訳わかんないから。目があっただけで喧嘩腰になるとか、狂犬?町のチンピラの方が、まだ理性あるんじゃない?そもそも、何その喋り方。まるで男だよ。最初私も男だと思った。女の子らしい要素が何にもない。気品もない。もしかして私につっかかってくるのは、女の子らしい要素がない自分に対するコンプレックスから来る、嫉妬?だとしたら凄く情けないからやめたほうがいいよ」

「てめぇ、喧嘩売ってんのか?」

「悪いけど、売って来たのはどう考えてもそっちだと思うよ。そんな事も分からないの?やっぱりこの年齢の子供は、皆低能だね。自分が悪い事をした事に、大人に怒られなきゃ気づけないんだからペットと同じだよ」

「この──!」


 私の挑発に我慢できなくなった彼女が、私に襲い掛かろうとしてきた。前は私の罵倒に、ただ泣くだけだった同年代の子供とは違う。前世で私に罵られた子供たちとも違う。こちらは私の権力を恐れ、そんな行動には出ずただただ許しを請うだけだった。


「はい、そこまで!」


 彼女の行動を止めに入ったのは、ママだった。彼女を抱き締めたママにより、私に殴り掛かる事ができなくなる。

 その行動を見て、私は心がモヤっとした気持ちになった。その理由は分からない。だけど確信できたことがある。やっぱり彼女とは仲良くなれそうにない。


「私が思った通り、二人は仲良くなれそうね」

「「どこが!?」」


 とんでもない事を言い出したママに、私と彼女は意図せず声を合わせて言ってしまった。あまりにもキレイに声が合ってしまったので、お互い睨み合って真似するなと抗議をする事になる。

 コレが、私とメグルとの出会いだった。


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