ヒロイン2 教室にて
ハデスさんはやっぱり優しくて、お兄ちゃんみたいで、どきどきして惹かれる気持ちと、兄に対するような安心感が半々あった。
悪役令嬢は快く許してくれたみたいで、ハデスさんも「うちのお嬢さんは意外に太っ腹だから」とか笑っていた。
なんでも昔は意外におてんばで、木登りしては降りれないと途方にくれていたり、一人で秘密基地を作っては悦に浸ったりしていたらしい。
これは絶対に転生者だ、と思いながら、ハデスさんが面白おかしく話してくれるのを笑って聞いていた。
私も、ハデスさんが王都に行った後どうなったかとか、畑の出来がとか、庶民臭いけど話した。ハデスさんのおばさんたちには今でもお世話になってる、というと、今度帰省しようかな、と言ってくれた。夏季休暇、私と一緒に帰ろうかな、って! 嬉しくて「本当に!?」って昔みたいに手を握ちゃって、慌てて離した。令嬢らしくないから駄目って言われてたのに!
学校で友達はいないけど、たまにハデスさんが『頑張れ』って目配せしてくれるし、いじめられそうになったら悪役令嬢が守ってくれるし、案外楽な生活だった。
そう、悪役令嬢が守ってくれるんだよ!
ざまぁとかされないように気を付けてたのに、助けてくれるんだもん。拍子抜けしちゃった。ま、あっちも逆ハー作ってるくせに鈍感とかいうテンプレ悪役令嬢転生者っぽいから、私に奪われないか、バッドエンドにならないか、とかで必死なんでしょ。貧乏男爵の娘がそんな大それたこと出来るわけないっての。王子とか本当に要らないから、ハデスさんくださいって感じ。
でも、アレスの婚約者じゃない女の子が言い寄ってたのはびっくりした。無表情だったけど普通に綺麗な子だったし、どうなってるんだろう?
ハデスさんが私、つまりヒロインと幼馴染とかゲームにはなかった設定もあるし、やっぱりここはゲームとは違うんだな。
そう思って呟いたら、
「──昼休み、一緒に中庭で食事しましょう」
ぼそりと、すれ違いざまにアレスに言い寄っていた無表情の子に言われた。
えっ!?と思ったら、彼女の侍女がにっこり微笑んで、それ以上言えなかった。
ど、どうなっちゃうんだろう……?