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1:英雄召喚

新作です! よろしくお願いします!

 魔術大国イングレッサ――王杖の間。


 玉座には、王冠を頂いた冴えない顔付きの青年が座っていた。青年は傍らに、先の戦争で捕虜にしたエルフの女を侍らせており、鼻の下を伸ばしながらふんぞり返っている。


 やはり我が王ながら、いつ見ても小物臭が漂っているな、とその前にかしずく赤髪の青年――ヘルト・アイゼンハイムは思っていた。


「いやあ……素晴らしかったですね。先の戦争におけるヘルト師の考案した噴進爆破の魔術は。くくく……エルフがゴミのように散っていく様は見ていて爽快でしたな――ですよね、イングレッサ王?」

「そ、そうだな! うん、ミルトンが言うならそうなのだろう。良くやったぞヘルト!」


 イングレッサ王が、横に立つ痩せぎすの男――宮廷魔術師ミルトンの顔色を窺いながら、声を発した。


 それに少し苛立ちながらもヘルトは言葉を返す。


「有り難き御言葉。ですが、かの魔術は戦争用の、人を殺す以外に何の役にも立たない魔術。周辺国を平定した今となっては必要のない物です。どうか、これを期に私にもっと平和利用できる魔術の理論構築をさせ――」

「黙れヘルト。貴様、たかが魔術師の立場で王に具申するとは、無礼が過ぎるぞ! ですよね、イングレッサ王?」


 ミルトンの怒鳴り声が、余計にヘルトの苛立ちを募らせた。魔術の腕も二流で、理論構築も出来ない政治力だけのクソ野郎が調子に乗るな、と言いたかったが王の面前なので我慢した。


「そ、そうだな! 生意気だぞヘルト!!」

「ですが、良い事も言いましたな。最も厄介だった、かの長耳族の国も完膚なきに滅ぼしましたし……しばらく戦争は必要ないでしょう。つまり、戦争にしか使えないこの男は――()()()()。そうですな? イングレッサ王」

「え? あ、ミルトンがそう言うのなら……」


 どうにも良くない状況だと察知したヘルトが無礼を承知で頭を上げて、声を張り上げた。


「待って下さい! それはどういう意味ですか!?」

「こういう意味ですぞ――【魔封縛鎖】」


 ミルトンが背中側に隠していた短杖をヘルトへと向けた。


「っ!? 貴様、王杖の間に杖の持ち込みは禁止のはずだ――かはっ!!」


 ミルトンの杖から伸びた赤黒い鎖が宙を走り、ヘルトを縛り上げ、魔力と身体の自由を奪っていく。皮肉にもそれはヘルトが理論構築し、作り上げた対魔術師用(アンチ・メイジ)の魔術だった。


「く……そ……魔力が……」

 

 床に倒れたヘルトは腕どころか指一本動かせないことに気付き、こんな魔術、作るんじゃなかったと今さら後悔していた。


「ふははははは!! 流石はその歳で大魔導師まで登り詰めた男よ! 素晴らしい魔力量だ! だが、お前の魔力はもう、全て私のものだ! 王、奴は生かしておいては危険です。もしこいつが敵国に寝返ったら、どうなると思います? 奴の軍用魔術で我が国に甚大な被害が出ますぞ!」

「そ、それはマズイ!」


 その言葉を聞いて、ミルトンはにやりと笑ったのだった。


「であれば、処分するのが王の役目かと。英雄も――平和になればただの虐殺者ですからな。奴を戦争犯罪者として首を差し出せば、国際会議で言及されるであろう今回の侵略も許されますぞ。そして何より……王の威光が更に高まるでしょう!!」

「しょ、処分だ!」

「そん……な馬……鹿な……話があって……たまるか……!!」

「衛兵! 戦争犯罪者だ。裁判は省略。私と王の名において、こいつを処刑する。さあ首を斬れ。ああ、身体は切り刻んで豚の餌にしていいぞ」


 駆け寄ってくる衛兵達が斧を掲げた。


「ふざけ……んな! お前ら……だけは……絶対に許さ――」


 ヘルトの目に憎悪の炎が宿る。しかし、無情にも刃は振り下ろされた。


 こうして彼は処刑され――稀代の大魔導師ヘルト・アイゼンハイムは、英雄あるいは史上最悪の戦争犯罪者として歴史書に載る、()()()()となったのだった。



☆☆☆



 旧リーフレイア森林国、所在地不明――〝賢者の根〟


 そこは薄暗い空間だった。周囲の壁や天井、そして床の至るところに太い樹の根が這っており、中央には複雑な魔法陣が描かれていた。


 その前にはピンと尖った長い耳が特徴的な、水色の髪の少女が立っており、ユグドラシルの枝を削って作った杖槍を振り、詠唱を始めた。


「〝逆巻の時よ翻りし聖杯よ、星に刻まれし英なる雄を想起し我が前へと喚び出したまえ〟――【英雄召喚(サモン・サーヴァント)】」


 少女の言葉と共に魔力が注がれ、魔法陣が光り出す。


「我が望むのは――()()()()()()()()()なり! さあ過去の英雄よ、その姿を私に見せなさい!!」


 それは――エルフ族の中で最も高貴であり、無限に近い魔力を持つハイエルフのみに許される大魔術であり、術者の魔力を依代に、この星の大地に刻まれた過去の英雄を召喚し使役できるという。


 だが、これまでにこの大魔術――【英雄召喚(サモン・サーヴァント)】を成功させた者は一握りしかおらず、その正しい方法は、既に歴史の闇の中に埋もれてしまっていた。


 ゆえにハイエルフのこの少女は、数少ない資料や口伝を頼りにこの魔法陣の書き方から、魔力の込め方までを再構築したのだが――


「――やっぱりダメか。良いところまではいけてると思うのだけど……」


 魔法陣からは何も現れず、光が消えはじめたのを見て少女がため息をついた。


 少女は仕方ないとばかりに魔法陣に背を向けて、その空間から出ようとしたその瞬間。魔法陣の構築が――パチリパチリとひとりで組み替わっていく。


「え? 待って、魔力が勝手に!?」


 慌てて振り向いた少女から魔力が勝手に溢れ、魔法陣へと吸いこまれていく。


「何が起こってるの!?」


 少女の脳裏をよぎったのは、魔法陣の暴走……つまり、別世界の何かしらからの逆干渉、という現象だった。召喚魔術の魔法陣はいわば、扉のような物だ。それを一度起動させてしまうと、こちらから開けることは当然、場合によっては……向こう側からも干渉ができるのだ。


 歴史上で、召喚魔術を失敗し、逆に悪魔や魔神と言った類いのモノの干渉を許してしまい、国を滅ぼした魔術師もいるほどだ。


「ま、まずいかも!?」


 焦る少女の前で――()()()()()()()()


「きゃっ!!」


 もうもうと粉塵が舞い、少女が咄嗟に顔を庇う為に上げた腕を下げると――魔法陣があった場所がまるで爆心地のようにすり鉢状になっていた。


 そしてその中心地――


「くそ、何がどうなってやがる。死んだと思ったらいきなり変な手に掴まれたし、掴んだクセに消えようとするから必死に引っ張ろうとしたら爆発するし! 天国でぐらいゆっくりさせろよ!」


 そこには悪態を付きながら、立ち上がった赤毛の青年――ヘルト・アイゼンハイムの姿があった。


死んですぐ喚ばれるとか忙しいやつだなヘルトさん。

召喚魔術のシステムは聖杯戦争のあれみたいな感じです(色々違う点もありますがまた作中内で説明があり)


ヘルト君の第二の人生をお楽しみください!



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<タイトル>

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ノリと勢いだけであまりにも酷すぎる。 [一言] 数撃ちゃ当たる戦法の完結できない系か。
[良い点] エルフ魔力貯金に興味持ってきましたが、 面白かったです。 サーヴァントな某作品ではありませんが、主従の性質は似せたのかも。王道ってw
[気になる点] 私と王の名において・・・ え、こいつ王より偉いの?それとも常識が無くて周りから直されないでいるの? 普通、王と私の名において、じゃないか
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