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山椒姫~小粒でもピリリどころではない激辛少女は美人すぎる女性騎士と呼ばれる日を夢見る  作者: 公社
第3章 異国でも辛いぞ山椒姫(身長150cm)

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山椒姫、つかの間の休日(2)

本日2話投稿の1本目です。

「鉱山焼きってなんですかね?」


 エンデヴァルドの街巡りをしながらお昼を過ぎた頃、どこかで昼食をと考えておりましたら、店先の看板にデカデカと掲げられた鉱山焼きという謎の料理の名前が目に入ります。


 想像するに、山で産出する鉱物には燃焼するタイプの物もありますので、それを使って直火、もしくは蒸し焼きや燻製にしたものあたりでしょうか?


「とりあえず入ってみようか」


 オリヴァーも興味がありそうなので、早速店の中に入ってみますと、店内は席の3割くらいの入り。

 

 女将さんと思われる女性に空いている席へどうぞと通されるので、ついでに鉱山焼きの正体を聞いてみました。


「すみません。鉱山焼きってどんな食べ物ですか?」

「鉱山焼きかい? 女の子向きの料理じゃないよ」


 女子向きではないというのはどういうことでしょうか?


「元々は鉱山労働者の賄い飯なんだよ」


 鉱石以外に目ぼしい特産品や名産品が無いエンデヴァルドの街に新しく名物を作ろうと、賄い飯をヒントに女将さんが最近考案した料理だそうです。


「考案と言ってもね、元はなんてことはないオーク肉の直火焼きだから、あんまり期待しないでよ」


 定期的に森に討伐隊が向かい、モンスターを間引きしているそうですが、オーク肉は腐敗するのが早いので、鉱山労働者の皆さんに消費してもらって、いい栄養源になっているのだとか。


 元々は塩分補給のため、そこへ大量の塩を振りかけて、直火焼きにしたものを召し上がっていたそうですが、ある日のこと、焼こうとしていたお肉を間違って保存食用のタレの中に落としてしまった方がいたそうで、勿体無いからとタレを付けたまま焼いて食べたところ、美味だったそうで、それ以来、各鉱山ごとにオリジナルのタレを開発して秘伝の味を受け継いでいるのだそうです。


「鉱山のタレは企業秘密だから、私は私でオリジナルのタレを開発したってわけさ」


 観光客向けにオシャレな感じを意識してみたそうですが、まだまだ研究段階なので、ワイルド感が拭えないのだとか。


 ワイルド……私にピッタリですわ。


「折角遠いところまで来たのです。是非食べてみたいです」

「そうかい。じゃあすぐに用意するよ」




「お待ちどうさま。白い方が塩焼きの『白夜』、黒い方が私オリジナルのタレで焼いた『極夜』だよ」


 出てきたお皿には、一枚肉ドーンではなく、一口サイズに小分けされた塩焼きとタレ焼きのオーク肉が半々で盛られています。


 お皿のデザインといい、オシャレさを研究した成果が覗えます。それに、白夜と極夜なんて素敵なネーミングではありませんか。


 ちなみに極夜とは白夜の反対で、冬の時期に太陽が地平線からほんのちょっとしか登らないため、一日中日暮れ前みたいに薄暗い時期のことを言うそうです。


 エンデヴァルドは鉱山が街の北側にあるので大丈夫ですが、山の向こうはお日様の光を見ることも出来ずに真っ暗だったりするそうです。


「追加のパンとサラダ、スープは食べ放題。必要ならあっちに置いてあるから、セルフサービスで取ってきてね」

「はーい。では、いただきます」


 まずは白夜から……


 モグモグ……あー、知ってる味だわ。

 鉱山では塩分補給のため塩多めだそうですが、観光客向けに塩分薄めなので、あっさり食べやすく、肉の旨味も良く分かります。


 リングリッド領にいた頃は、オーク肉を腐るほど屠っては焼いておりましたが、最近ご無沙汰なので、懐かしい味ですわ。


 しかもこの焼き加減、オーク肉の扱いを良くご存知の方の手ですね。


「次は極夜ですね……」


 うん、黒い。白夜との対比のために敢えて黒い感じを強調してますが、焦げているというわけではなく、タレに漬け込んだ色なのでしょう。


 モグモグ……モグモグ……!! 美味い!


 タレは濃いめですが、肉との相性がバッチリで食の進む味です。


「肉は直火焼きか、ソースをかけるくらいの食べ方しか知らなかったなあ。不思議な感覚だ」


 オリヴァーも美味しそうに食べてます。

 肉は腐敗が早いので、さっさと焼いて食べるか、乾燥して干し肉にするかくらいしか思いつきませんでしたが、タレに漬け込むとは驚きです。


 塩分多めのタレに漬けることで、干し肉ほどではありませんが、保存も効くそうです。


「女将さん、美味しいですこれ」

「そうかい? 私達にとっては馴染みの料理だから、よそから来た人にそう言ってもらえると嬉しいね」

「この白夜と極夜のバランスもいいですよ」


 濃いめの極夜とあっさりめの白夜をバランス良く食べることで、くど過ぎず、淡白過ぎず、最後まで美味しく食べられますし、付け合せのパンやサラダも食が進みます。


「ケイト、張り切って食べ過ぎじゃない?」

「美味しいから仕方ありません」

「ははは、ケイトらしいや。出発前にお腹を壊さないようにね」


 何も無い街と侮ってごめんなさい。この味は第二騎士団にも伝授せねばなりません。


「女将さん、絶対にこれは名物になりますよ」

「少しワイルド過ぎやしないかい?」

「ベースになるのが賄い飯なんですから、その特徴を消しては勿体無いですよ。女性向けには量を調整するくらいで大丈夫だと思います」

「そうかい。お嬢さんにそう言ってもらえるなら、ちょっと自信になったよ。ありがとね」


 結構な量がありますが、美味しくて止まりません。

 女将さんと話をしながら、気が付けばいつの間やら完食です。


「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした!」

「何か飲み物を取って来よう。ケイトはお茶でいいかい?」

「大丈夫ですよ。自分で行きます」

「気にしないで。ケイトはそのパンパンのお腹を少し休ませたほうがいい」


 オリヴァーが私のお腹を見ながら、からかうような笑みを見せます。意地悪ですわ……

 

 ふぅ……ですが言われてみれば少し食べすぎましたかね。


 昔は体を目一杯動かした分、消費も早かったのでモリモリ食べてましたが、最近は運動の絶対量が減っているので、食べ過ぎ注意ですね。


 などと食休みでボーッとしてましたら、店先で何やら揉め事が起こっているような声が聞こえます。


「真っ昼間から酔っ払って、しょうもないことすんな!」

「イテテテテ、離しやがれ!」


 ……って、あれは、ネイ兄と……パティ?

お読みいただきありがとうございました。

2話目は19時頃に投稿となります。

よろしくお願いします。

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