山椒姫、異国へ往く
お待たせしました。
第3章開始です。
時は流れ、学園に入って二回目の春。
私は留年することなく無事に二年生に進級出来ました。
よく進級できたなですと? 点数? 問題ないですよ。
爵位持ちを留年させるわけにいかないという、何らかの力が働いたですと? 邪推ですわ。
決してお茶をグビグビ飲んでプハーッとか、ダンスで相手を振り回したりなどしておりませんよ。
そしてアリス様、エマ、サリー、ヘレンやパティなどのお馴染みメンバーも全員進級しています。
一方でダイアナ様は、アリス様暗殺未遂の罪で修道院送り。ロニーは事件に関与した父親共々、身分を平民に落とされ、王都を追放されたことで、学園を去ることになりました。
ヒラリー様は、毒の後遺症はそれほど深刻ではありませんでしたが、ロニーがいなくなったことの心理的ショックが大きく、学年末まで休学したことにより留年。今年は私達と同学年になります。
騒動を起こしてくれたベルニスタ王国は、隠世が再び壊滅したことや、その組成に国として関わっていたことをバラされて、周りの国からそれはそれは白い目で見られており、貿易などの経済活動も停滞気味とのことで、暫くは悪さのしようも無いだろうということです。
まあ……何人かは処刑されてしまったので、後味が悪いですが、自業自得としか言いようがないですね。
オリヴァーは卒業を機に、お義父様(エドガーのおじさまに、正式に婚約したんだから気兼ねなく呼んでくれと、半ば強制的に言わされてます)から、伯爵位を譲り受けました。
よって婚約者の私も、学園を卒業後には伯爵夫人となります。
ギャレット伯当主の座を継承いたしました彼は今、宰相府で政務官を務めてます。
おや? 第一騎士団の人間ではないのか?
そうなんです。配置換えというか、出向ですね。
例の騒動で、王宮の内政官を務めていた王権派の皆さんの多くが失脚してしまい、人が足りないんです。
新宰相のクイントン侯爵は、空いたポストを貴族派で固めて中央政府の権限を独占しては、王権派の二の舞になりかねないと考え、武官派にも人材の供出を求められました。
とはいえ、名前の通り武官派ですからね。ゴリゴリの武人はいくらでもおりますが、内政向きの人材は少ないんです。
そこで白羽の矢が立ったのがオリヴァー。
何人かいる政務官の中で当然一番年下ですが、精力的に動いております。
伯爵領に関しては、お義父様の手配で、ラザフォードの家から人を派遣してもらっているので問題ありません。
そう言えばお気づきでしょうか?
私が彼を呼ぶとき、「様」が消えたことを。
国王陛下にもご承認頂いた婚約でございます。いつまでもはわわ~と言って赤面しているようでは、先が思いやられます。呼び捨てに慣れるよう、婚約以来、常にそう呼んでおります。
彼はより親密になれたと喜んでおりますが、私はまだまだ全然慣れません。
それと、私にもう一つ増えた肩書きが男爵位。
特に新しい家を興すわけではありませんので、家名はそのままリングリッド男爵という名称です。
もっとも学園では男爵と呼ぶ方はおりません。山椒姫の名前が定着してしまい、変えるのも面倒なのでそのままでお願いしております。
稀にからかい目的で「男爵様」と呼ぶ人はいます。
アリス様とか、アリス様とか、アリス様とか、たまにエマとサリー。
エマとサリーには揉乳の刑で仕返しです。
この2人はまたデカくなりおった……もう私の手のひらでは収まりきらない、男のロマンとやらを一身に集める、たわわで(自主規制)、サイズは(自主規制)ですわ。
私はどうなんだ、ですと?
ふふふ、よくぞ聞いてくれました。
とうとう150cmの大台に突入ですわ!
え? 無い胸を張って威張るほどのことでもないですと?
失礼な。あるか無いかで言えばある。ちゃんと2つのお山が出来ておる!
そりゃあね、巨乳爆乳のあのエロティックシスターズと比べたらまだまだ。無乳から微乳くらいの成長ですよ。
そこ、貧乳って言うな、微乳とお呼び。マジで刺すぞコラ。
微乳と侮るなかれ、寄せて上げれば谷間だって出来るし、(自主規制)ですよ。
……何で胸の話ばっかりしているんだ。背の話をしているんですよ。一年で20cm近くも大きくなりまして、見える視界が全然違うんです。なんだか不思議な気分。
後はアリス様ですね。さすがに揉乳の刑はムリです。
だって未来の王妃殿下ですよ。
私とオリヴァーの婚約に先だって、彼女も正式に王太子殿下の婚約者となったことで、忙しい日々を送られているようです。
学園を卒業してしばらく後、なのであと三年後くらいには、王太子妃となられるわけで、これからはお妃教育で相当時間を取られるのではないかと思います。
ようです思いますって、アンタは護衛騎士なのに、何で伝聞系なんだと思いました?
護衛騎士になるのは確定だよ。だけどそれは王太子妃となってからの話。
今のところはお妃教育で王宮に滞在する時間が多いですから、私がしゃしゃり出なくても身の安全は十分確保できます。
じゃあお前は何してるのかと問われたら……
今から留学に行くのです!
行き先は同盟国ノルデン。
トランスフィールドの北に位置し、小国ではありますが、資源が豊富で豊かな国です。
そのせいか西南で隣接する、例の国からしばしば内政干渉のようなことをされているため、昔から我が国が支援をしており、同盟関係にある国です。
何故このタイミングで留学なのかと申しますと、交換留学というやつです。
お互いにそれなりの身分の学生を留学させて、友好を深めようと、ノルデン側からの申し出でそれぞれが留学生団を編成。私は一応副団長という立場。
ここだけの話、友好を深めるという以外にもう一つ理由があるんですよね。
その理由である団長様がお出ましでございます。
「おはようございます。金髪ドリル様」
「おはようケイト。私の名前じゃない何かが聞こえたような気がするんだけど?」
「気のせいです。それはきっと心の声ですわ」
「やっぱり何か言ったんじゃない」
今回の団長はアデレイド様。
「アデレイド様、キャサリン様。おはようございます」
「ヒラリー、パティ、おはよう。準備は出来ているようね」
一緒に留学するはヒラリー様とパティ。
ヒラリー様は分かる。アデレイド様の護衛役だからね。それとパティも成績優秀だから、留学生として送り込まれるのは理解できる。
そこに私が加わるのか? なんだよこの混成軍。
「そろそろ出発の時間ね」
「団長! 準備は出来ております」
何よその呼び方と、アデレイド様がギョッとしていますが、留学生団のリーダーなんだから団長ですよね。
「間違いでは無いけど……合っているけど……私をそう呼ぶなら、アンタも男爵様! って呼ぶわよ」
「すいません……止めましょうか」
「お互いのためにそれがいいわ」
アリス様とも息が合っていると思いましたが、意外とアデレイド様とも上手くやれそうです。
え? 相手が諦めて受け入れているだけ? そうとも言いますね。
とにもかくにもこの混成集団で留学に向かうのには、大人達の事情があるのです。
お読み頂きありがとうございました。
これまでは毎日投稿しておりましたが、仕事の方が思ったより落ち着かないのとか、短編もポチポチ書きたいなあという願望から、この先は水・土の週2回投稿とさせていただきます。
今週は2章終わりまでの整理を兼ねて登場人物の紹介を挟みまして、本編は次回土曜日に投稿させていただきます。
よろしくお願いします!




