少女、なんかいろいろ報奨をもらう
あの事件から2ヶ月が経ち、王国は新年を迎えました。
王国貴族間の内紛に隣国の干渉もあって、事件の調査にはかなりの時間が費やされましたが、ようやく諸々の処理が完了いたしました。
まずは隠世がベルニスタ王国直属の工作部隊であること、その頭目は第三王子のミシェルであること、彼らが我が国を混乱させるべく蠢動していたことを公に発表いたしました。
これにベルニスタは猛反発。自国と隠世には何ら関わりはなく、トランスフィールドの発表は我が国を陥れる策略であるとして、報復のため軍を動かす事態に発展。
しかし我が国も、バーネット侯爵に代わり、クイントン侯爵を宰相代理に据え、中央の混乱を最小限に収めたほか、お父様やエドガーのおじさまが万全の体制で迎え撃ったため、両者は国境で睨み合うのみで、本格的な戦闘には至りませんでした。
そのうちにこの情報が大陸中に知れ渡ることになり、各国は我が国への支援を表明。
これは各国に干渉し続けるベルニスタと、支援する我が国のスタンスの違いによる信用度の差もあるのでしょうが、一番大きいのはミシェル王子の自供によるものです。
逮捕後のミシェル王子は憑き物の取れたように、アッサリと自分の指示された任務を自供。
前ラヴァール侯爵には下野した弟はいたものの、その子供など元々存在しなかったが、国王の命でその子供であると偽り、隠世の統率を行うよう指示されたこと、父である現ラヴァール侯爵も前侯爵の実の弟ではないただの影武者であることなどを蕩々と語った。
曰く、自分が頂点に立つ望みは消えたので、どうせ落ちるなら父や兄達も一緒に道連れにしてやるという理由。
最後まで自分勝手な奴だった……
一番の望みではなかったにせよ、アイツの希望通りになってしまうのは気に入りませんが、それによって各国とベルニスタ包囲網的な協力が取れるようになったのでよしとしましょう。
いずれアイツは断頭台の露と消える身なのですから……
そして王権派。
宰相バーネット侯爵が王宮内での権力を確固とするため、貴族派の勢力を削ぐ動きをしていたところ、ベルニスタの誘いに乗り、武官派まで含めて追い落とし、娘であるダイアナ様を王子妃に就ける目算であったのは従前の調べ通り。
交歓会で猛獣が現われたのも、彼の指示。
アカデミーで治療していた雑伎団の猛獣たちは、隠世の手によって事前に軽い毒を盛られており、なるべくしてアカデミーに搬送されていた。
自分達で盛った毒ですから、治療だってお手の物。すぐに猛獣たちは元気になったものの、雑伎団には返さず、あの襲撃事件の舞台装置として利用したそうです。
そしてダイアナ様。彼女は完全に父の言いなりでした。
当初はアリス様を王子妃にするべく、アデレイド様の足を引っ張ることを唯一の目的として動くよう命令されておりましたが、自身が王子妃になるよう突如として命じられたのです。
元々王子妃など望むなと言われて過ごしてきた彼女は、殿下に対する恋愛感情など持ちようも無く、突然の方針転換に困惑することしきりではあったが、父の命令に逆らうことも出来ず、なすがままだったそうで、実際には加害者ですが、ある意味被害者でもありますね。
もっとも、己の意思をしっかり持っていれば、他にやりようがあったのではと思いますので、あまり同情は出来ませんが。
アカデミーの持つ機密情報をベルニスタ側に流したのは政務官のアボット子爵。
当初は宰相を諫めていたが、その決意が揺らがぬ事を悟り、協力するに至ったそうです。
本人はその事実を肯定しておりませんが、おそらくは立場を利用して宰相から圧力、つまりは家族の命などを盾に脅されていたことは想像に難くなく、どこかでこの悪事を未遂に終わらせたいという願いがあったのかもしれません。
その証拠に、ベルニスタとの連絡係としてロニーや学園の生徒を利用していた事実。
まだ半人前の彼らを利用することで、何らかの形で情報が漏れるのを期待していたのかもしれません。
最後に宰相や父に利用されただけのロニー。
幼い頃から貴族派は敵だと教え込まれていた彼は、全ては家のため派閥のため、貴族派を抑えこむために必要なことと信じて疑っていませんでした。
入学当初、私達に接触してきたときに「クイントン侯爵家に気をつけろ」と言っていましたが、貴族派が何か行動をする気配を感じたわけではなく、何物でもない彼の色眼鏡のせいですし、ヒラリー様との交流を避けていたのも、その辺に理由があるようです。
さすがにヒラリー様が重傷を負ったことで、何かがおかしいと感じた彼は、独自に父の目的を調べるに至り、貴族派を追い落とすとは言え、あまりにも卑怯な手段である上、武官派まで巻き込むと言うことに良心の呵責は覚えたそうですが、もう引き返すことの出来ないところまで関わってしまったと後悔しているそうです。
バーネット侯爵は領地没収の上、男爵に降爵。
ダイアナ様はサザンポートの先にある離れ小島の修道院送り。
アボット子爵及びロニーは爵位没収し、平民として放逐。
国王陛下によって彼らに下された裁定。普通であれば全員死罪が相当であると思われましたが、恩赦により罪一等を減じるとのご判断です。
何の恩赦かと申しますと、ジェームズ殿下の婚約、並びに立太子によるものであります。
通常であれば3ヶ月後の卒業式を経て宣言されるものではありますが、状況が状況だけに早く宣言した方が国内の結束をアピールするためにも必要だと言うことで、このタイミングなのです。
アリス様がガチガチの大本命ではありましたが、候補の1人ダイアナ様は失脚、アデレイド様は正式に宰相に就任されることが確定したお父上が、これ以上権力を欲する必要はないとのご判断され、国王陛下に対し婚約者候補から外れることを内々に申し入れた結果、待つ必要もないだろうとのことで、恙なく宣言に至りました。
今回の事件で少なくない血が流れたこともあり、これ以上血を見る必要はないとの殿下の御意志により、恩赦ということになったのです。
そして処罰があれば恩賞もあるわけで……
今日は王宮でその論功行賞により、勲功者への報奨が授与されます。
「これより、此度のベルニスタ王国の煽動による騒動を終息せしめた勲功者への報奨を授与する」
国王陛下の発声により、授賞式が始まりました。
「第一功、エドガー・ラザフォード公爵、並びにランドルフ・クイントン侯爵」
第一功はおじさまとアデレイド様のお父上。
被害を最小限にとどめ、事後の対応も中心になって指揮を取り、ベルニスタの野望を食い止めた功によるものです。
報奨として二人には旧バーネット侯爵領の半分を分割して与えられたほか、クイントン侯爵は正式な宰相に任命するというもの。
これは事前に聞いていた。おじさまはその領地を、法服貴族になるはずだったオリヴァー様に任せるらしい。ということは年の半分くらいは私もそこに住むことになるのか……
「第二功、マルーフ・リングリッド伯爵」
第二功はお父様。
これは言わずもがな、王宮での暗殺者討伐、及びその後のベルニスタ軍の侵攻を抑えた功績です。
報奨はやはり旧バーネット侯爵領の一部。リングリッドの領地とは離れているのでどうするんだろ? と思いましたが、順当ならケヴ兄を独立させるのかもしれません。
そして、伯爵位から辺境伯位への陞爵。
お父様、嫌がってます。事前に聞いていたというのに表情が隠せていません。
おじさま、ニヤニヤしない。お父様にまた恨まれますわよ。
「第三功、キャサリン・リングリッド伯爵令嬢」
おっと、呼ばれた。
通達があるまでは、まさか私が第三功とは思いもしませんでしたが、相手の動きを掴んだのは私の功績が大きいと評価され、栄えある栄誉を賜ることになったのです。
とはいえただの伯爵令嬢だしね。報奨金とか勲章とかだとは思いますけど。
「……以上の功により、リングリッド伯爵令嬢を聖騎士に任命し、併せて男爵に叙爵する」
……は? 聖騎士? 男爵?
女なのに男爵とはこれいかに?
お読みいただきありがとうございました。
次回で第二部完結です。
よろしくお願いします。




