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少女、思わぬ二の矢に焦る(アリス視点&キャサリン視点)

前回に続きアリス視点。

ラスト近くでキャサリン視点に戻ります。

 <引き続きアリス視点>


「そのワイン、毒が入ってますわね」

「な! な、突然何を言いますの……」

「それも、まだ世間には知られていない新種の毒ですわよね」

「……!!」


 あらどうしたのかしらダイアナ様? 脂汗が泊まりませんわね。何に怯えていらっしゃるのかしら?


「この場にいる誰もが治療のできない、新種の毒ですものね。飲んでしまったら……大変なことになりますわね……」

「さっきから毒だの何だのと、何を仰っているのかしら……」

「毒を飲まされた私は、治療することも叶わず儚くなり、クイントン家はその騒動の責任を取らされて没落といったところかしら? そうなると王子妃の座はダイアナ様の足元に転がってきますわね」


 私がありったけの嫌味を詰め込んで、事の真相を知っているんだぞと仄めかすと、ダイアナ様はそれを全力で否定なさいます。

 ここまできて隠し通せると思っておられるとは……存外頭の回転がよろしくないのですね。


「ねえダイアナ様、いい加減観念なさった方がよろしいわよ。お気づきになりません? 貴女が私にワインを勧めたとき、アデレイド様が私達の前に現われたは偶然だと思いますか?」


 そんなわけないわよね。表向きには私と貴女が近い関係で、アデレイド様は敵対派閥だと思われていますもの。

 なのにその二人の間にアデレイド様が割って入るようなマネをしたのか……いくら鈍くても分かりそうなものですよね?


「ダイアナ様は私が何のためにここに来たのか、まだご理解できないみたいね。わざわざ私があのメイドの素性を探るようなことをしたのか、私自ら使用人全員の素性を調べ上げていたか、分かりませんか?」

「それに関しては僕も一緒だね。偶然通りかかったにしては、タイミングが良すぎるよね」


 私の言葉に続いて、不敵な笑みを浮かべてアデレイド様と殿下が言葉を続けますと、ダイアナ様はあからさまにたじろいだ様子を見せます。

 ようやくご自分の状況が理解できたようですね。


 自分がハメられたことに。


「相手を罠にかけるつもりが、自分がハメられた気分はいかがかしら。もしかして、私とアデレイド様が手を組むなんて思ってもいなかったかしら?」


 今日のパーティーに向けて、事前に根回し済みですよ。

 クイントン家に使用人の選定を一任し、毒を盛る可能性のある協力者の数を絞り込み、いざダイアナ様が私に接触してきて、何か怪しい動きをする場合は割って入ってきてほしいと協力をお願いしましたの。


「最初はアデレイド様に怪しまれたわね。まさか事実を詳らかに話した上で、私がそんな申し出をしてくるとは想像もしていなかったようですし」

「ホントよ。私が裏切って毒を仕込んだらどうするつもりだったのかしらね?」

「ふふ、長い付き合いですもの。アデレイド様は()()()()と違ってそんな汚い手を使うような方では無いと知ってますから」


 私とアデレイド様が仲良く話しているのを、ダイアナ様は呆然と見ています。


「な、なんで……二人は仲が悪いはずなのに……」

「あら? 誰が仲が悪いなんて言ったのかしら? たしかに王子妃選定のライバルとは言われてましたが、私がアリス様個人を嫌いだと言った覚えは無いわ」

「私もアデレイド様個人を嫌った覚えはありませんわ」


 私とアデレイド様が犬猿の仲だと噂していたのは、主に貴女の派閥の方だったことをすっかり忘れてしまっているようですね。


「だ、だって……二人は王子妃を争う敵同士……」

「あー、ダイアナ様にはそう見えたのね。立場上、候補からドロップアウト出来ないから、否定しなかっただけで、私は元々王子妃に興味なんか無いのよ」

「アデレイド嬢、そこまでストレートに言われると、僕も反応に困るよ」

「普段からアリス様のことしか見ていない殿下との間に割って入るほど、私も無粋ではありませんわ」

 

 だからなのか。

 普段からアデレイド様が殿下に接する態度は、令嬢として十分な風格を持ち、ケチの付けようがない完璧な姿。逆に言うと婚約者に選ばれるために、親しくなろうという雰囲気は感じませんでした。


 ゆえに口さがない人達からは、気位が高いとか、可愛げが無いとか散々に言われてましたが、元々そのつもりが無く、立場上候補というスタンスを崩さなかっただけなのですね。


「アデレイド様のそういう凜々しいお姿、同じ令嬢として尊敬しますわ」

「アリス様も、可憐な見かけによらず剛胆なところが素敵ですわよ」

「あら? 『()』というのはどういうことかしら?」

「あちらにいらっしゃる『も』の方の影響ですかしらね?」


 アデレイド様はそう言って視線を舞台に向けます。

 まあ未来の義姉ですからね。影響がないとは言い切れませんが、面と向かって言われると、そんなに影響されてるかしらと思ってしまいますわ。


「ダイアナ嬢、あの舞台に立っている少女が分かるかい?」

「あの少女が……何か?」


 殿下はとても穏やかな様子でダイアナ様に声をかけてますが、顔は完全にいたずらっ子のそれですわ。


「あの少女、リングリッド伯爵令嬢にそっくりだと思わないか?」

「え、ええ。似ていますね……」

「世の中には3人は自分にそっくりな人間がいると言う。もし君がお見舞いに行ったときに会ったキャサリン嬢がそっくりさんで、今舞台の上にいる少女が本物だったら……どう思う?」

「そっくり……さん……?」


 もしそうだったら、その毒で人を殺すことは出来ないよね。ダイアナ嬢ならその理由はよく分かるはずです。


「君がコントロール出来ない人間の中で、毒に対処できる唯一の存在が彼女だものね」


 だから彼女を襲ったのだろう? と、殿下は穏やかな表情を崩さずダイアナ様に問いかけます。

 表情は柔らかいままですが、その声は咎人を尋問する法曹のごとく、低く冷たく、一切の偽りを許さないという断固たる意思を感じるものです。


「知りません……私は何も知りません。私は、そう命じられただけです……毒など、知りません」

「僕達が何でここまで準備していたと思う? 君がどれだけシラを切っても、誤魔化しきれないくらいの証拠が上がっているからだよ」


 これでトドメですわ。血の気を失ってその場に倒れそうになるダイアナ様を殿下が優しく受け止め、そのまま近くにいた騎士に引き渡します。


 周囲には貧血を起こした彼女が、介抱を受けるため騎士達に連れ出されたのだと見せかけます。

 実際の行先は救護室ではなく、取り調べの部屋ですけどね。証拠品として毒入りワインも預けます。


「ご協力頂きありがとうございました。お陰で助かりましたわ」

「他ならぬアリスの頼みだ。それに、王家にとっても無関係な話ではないからな」

「お二人とも、イチャイチャするなら私がいなくなってからにしてくださいませ」


 私が微笑みかけ、殿下も同じように返してきますと、アデレイド様がからかうように声をかけてきます。

 自分が思っていたより甘い空気を放っていたようですわ……




<キャサリン視点>


 演技をしながらアリス様のいる方向を確認します。

 ダイアナ様が現われたときは、とうとう来ましたねと思いましたが、殿下やアデレイド様も駆けつけたことで大事にはならなかったようです。


 あ、ダイアナ様が両脇をかかえられながら退場していきましたわ。


 ひとまず危機は脱したようですね。アリス様達の表情を見ると、先ほどまでの張り詰めた空気が溶けたようです。


(とりあえず毒殺は防げたね)


 と思いましたら、会場内に響く女性の悲鳴と共に、間髪入れず思いもかけぬ方向から次なる凶行の知らせが舞い込んできます。


(誰か倒れてる? あれは……宰相閣下!)


 様子を見ると泡を吹いて倒れており、足元には割れたグラスの破片が散乱しています。


(まさか、毒……しまった、そっちが狙われるなんて!)


 宰相は今回の首謀者、もしくはそれに近い人物のはず。まさかそちらが標的だったとは、思いもしませんでした。


(もしかしたらアリス様を狙うというのは、防がれることを承知の上で流したフェイクだったのか!)

 

 警備の騎士達が医師を呼ぶ声が響く中、会場内は騒然となり混乱が生じています。

 これが狙いだったのかと、気付かれぬよう舞台袖に目をやると、偽のミシェル王子こと本物のアルベールが憎らしいほどの薄笑いを浮かべて会場の様子を見ています。

 

(これで私が混乱に乗じて、このナイフを標的目がけて投げつければ第二段階は終了ですわね)


 私が受けた指令……それは……


 <国王を狙撃せよ>

お読み頂きありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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