表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/159

少女、策謀する

 今日もまたエマとサリーに連れられてお出かけという体で、アリス様を交えて密談会で、パーティー会場での対応について協議しています。

 

 事件が起こるとすれば、毒による暗殺と直接的な武力による暗殺のタブルコンボ。


 毒に関しては、事前に防ぐのはアリス様達の役目。


「万が一に備えて、パティのお父様が戻っていればいいんですが」

「それが消息が掴めないらしいのよ」


 そんなバカな話があるかという内容ですね。

 常識的に考えれば、正体不明の毒による暗殺事件が起きたのです。毒の専門家を緊急召還するのは当然なのに、居場所が分からないとは……


 パティのお父様は命令で他国に研究に行ったわけで、居場所が分からないなどありえません。 

 本当に分からないなら、もっと大掛かりに捜索するはずですし、意図的に居場所が分からないように仕組んでいるとしか考えられません。


「ならば次善の策ですね」


 第一人者のお父様がいないのなら、私が欠席する代わりにパティをアリス様に同伴させることで、万が一毒殺が発生した場合、治療をしてもらいます。

 

「そうなるともう一つの方ね」

「武力行使への対応ですね」


 交歓会で襲撃があった以上、暗殺者のグループも近くに潜伏しているはずです。

 残念ながら雑技団に潜入している間、それらの情報は全く気配も無かったので、完全な別行動だろうと見て良さそうです。


「ただ疑問なのは、いくら何でも王家主催ですよ。第一級の警備が敷かれている中で騒ぎを起こすのは、さすがに無理があると思います」

「ケイト言い分はもっともね。だけどそれはみんな思っている事よ」


 アリス様はそう言うと、今回は騒ぎ一つ起こすわけにいかないのよと付け加えます。


「どういうですか?」

「パーティーの差配は宰相閣下が、クイントン侯爵と私のお父様にお任せすると申し上げたそうよ」


 ああ、そういう事ね。


 交歓会で瑕疵のあった武官派であるラザフォードのおじさまに警備を、貴族派であるクイントン侯爵にパーティーの手配をお願いする。


「前回のミスがあるから、断るわけにいかないものね」


 王族も参加する中、今回はどちらもミスが許されないという状況を宰相が作り出したことに他ならない。

 そして、またしても騒ぎが起きれば、それは貴族として致命傷になりかねない大きな傷となり得る。

 

「はぁ……厄介ですね」

「問題はどのタイミングで仕掛けてくるか……鍵になるのはケイトの演目じゃないかな?」


 毒による暗殺、武力による暗殺、そして私。


 まずは何らかの方法で混乱を生じさせ、騒ぎを拡大するということですね。


「毒殺が先か、貴女が動くのが先か、どちらにしても実行すれば騒ぎになるのは必至」


 でしょうね。どちらかが防がれても、もう一つの手段で騒ぎを起こす。そのためには私を操るため、術をかけに来るはず。



「それで、わざと術にかかったフリをするというけど、どうやってやるの?」

「え? 取りあえずポワポワした感じで操られてますーって雰囲気出せばいいんじゃないですか?」

「よくもまあそれで相手を罠にはめると言い出したものね」


 アリス様が呆れて、バレたら元も子もないじゃないと言いますが、たしかにそうだわ……


 王室主催のパーティーに雑技団員として、リリアちゃんを登場させるというのが、誰かさんの企みにより仕込まれたものであれば、事前に私に呪術をかけるべく、コンタクトを取ってくるはず。


 そうなったときに、私はわざと術にかかったフリをしなければいけないのですが、どういう過程で術がかけられるのか、そしてその時に私はどういう反応をすればいいのか、そのあたりの予備知識が全く無いのです。


「今日はそんなケイトのために、禁呪のことを教えに来たのよ」


 私が潜入調査を始めてから、オリヴァー様が禁呪について調べをつけたそうで、どのような流れで術をかけるのか判明したそうです。


「お兄様に感謝なさい。『これ以上ケイトを危険な目に遭わせるわけにはいかない!』って、あれから寝る間も惜しんで調べていたんだから」


 オリヴァー様とアリス様には、面倒事をたくさんお願いしておりますのに、私にまで気をつかって頂いて感謝です。


 術に係る儀式とでも言いましょうか、聞けば聞くほど何だか怪しいものなんですが、どういう過程で術にかかるのかが分かれば、わざとかかったフリをする事も出来そうですね。


「わざと術にかかったフリをした私は、命令された暗殺をブッチすればいいんですね」

「そう。これで騒ぎの火種になるウチの2つは防げるはず。後は暗殺者の襲撃は……」

「騎士団の仕事ですね」


 そこはラザフォードのおじさまや、ケヴ兄様、ネイ兄様に任せるしかないわね。


「後は王家の皆様への根回しですね」


 宰相以下、王権派がどうやって言いくるめているかは知りませんが、国王陛下やジェームズ殿下が最近の騒動を知らぬわけがありません。


「ジェームズ殿下には私から根回し済みだから心配ないわよ」


 アリス様からジェームズ殿下にはここ最近の動き、並びにパーティー会場での懸念と対策はお伝えしてあるそうです。


 王権派は王家に権力を集めると謳っていますが、実情は中央集権体制にする事で、中央の行政組織に力を持つ自分達が相対的に他の派閥より上に立ちたいからという理由であります。


 国王陛下もその点は重々承知してますが、国王のためと言われれば強く抑えるわけにもいかないし、貴族派、武官派もそれなりの力を持っており、パワーバランスが保たれているため、王権派が強硬手段に出る可能性が薄いということで、これまでは各派閥をうまくコントロールする事で均衡を保っておりました。


 しかし、王子妃争いに見られるように、昨今は貴族派を狙い撃ちする動きがあり、王家としても警戒しているとのこと。


 また、アリス様を王子妃に推していることから、武官派とはそれなりに良好な関係と見せかけてはいますが、貴族派を排除した後、武官派も何らかの手段で権力を削ぐつもりなのでは? というのが、ジェームズ殿下並びに王家の見立てだそうです。


「そういうことだから、今回の作戦は王家も了承済みよ」

「王家もご存じなら大丈夫ですね」

「殿下が言ってたわよ。『あの山椒姫様はとんでもないことを考えるな』ってね。もっとも、貴族の統制は王家の役目なのに、面倒をかけると詫びてもおられましたわ」


 ええ……殿下まで山椒姫呼ばわりかよ……


 まあいいわ。取りあえずこちらの迎え撃つ体勢は整ったようだしね。



「ただですね……」

「まだ何かあるの?」


 言いよどむ私にアリス様が問いかけます。


「あまりにも分かり易すぎませんか?」


 そう。相手の魂胆が分かり易すぎるのが逆に気になる。

 だってこういうのって、もっと水面下で気付かれないように仕込むものじゃない?


 今回で言えば交歓会での襲撃事件、私の拉致未遂事件と、事前に警戒されるような騒ぎが何回も起きている状態で、厳重な警戒を敷く王家主催のパーティーで何かを仕掛けるというのは、あまりにも無謀。


 真の目的は何なのかしら……

お読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 消息不明ってパティのお父様の命大丈夫? 公的に派遣されてるならそれなりに警備もつくだろうけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ