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少女、宙を飛ぶ、刃を投げる、転職する?

誰も傷つかないアクションシーン(笑)

 ハーイ、私は雑技団の花形役者、偽リリアことキャサリンよ!

 今、高いハシゴの上にいるの。


 何をするかって? 今から本番に向けて、空中ブランコの練習なの。

 どうよ、このヒラヒラの付いたピンク色の衣装を身を纏った私の姿。

 その華麗な演技目に焼き付けなさいよ!


 

 ……と、虚勢を張ってみたものの、高いよココ。


 いやね、高さだけならもっと高いところには何度も行ってるよ。

 落ちたら死ぬわ! って場所でフィル兄と手合わせしたりとか、登山行軍の訓練に参加したりとか、色々やったけどさ、これはまた別物だよ。


 しかもこの場にいる全員、私をリリアちゃんだと思っている。


 とりあえず今のところバレてはいないが、あまりにも無様な格好を見せつけては、本人ではないと気付かれるか、お前何してんのよ? と彼女の評価が落ちるか、どちらにせよよろしくない。


 ちなみにバレはしなかったけど、衣装に着替えたとき、昨日のお姉さんに私の筋肉美を見られてしまって、お姉さんにいつの間にそんなに鍛えたの? と驚かれてしまいました。


 リリアちゃんも私ほどではないけど、確かに鍛えてましたし、私達の年代の女の子では破格の筋肉美ですが、私も瞬発力が命なので、足には自信あり。普段はドレスだから見えないけど、脱いだらすごいのを見られてしまい、咄嗟に私だって鍛えてるんだよと答えて誤魔化しました。



 以前アリス様には筋肉に栄養取られて上背が伸びないんじゃないと言われましたが、同じように鍛えているリリアちゃんは順調に成長しとる。


 何でだよ!



 ……オホン、話が逸れましたわ。今は目の前のブランコに集中よ。


 最初にやったのは垂れ下がったロープに掴まり、片手で曲芸するとか、逆さまにぶら下がるとかというソロプレイ。これならなんとかなりそう、というか出来た。むしろ良く出来たと褒められたくらいです。


 その後は複数人での共同プレイの練習。

 両側にブランコは2つずつ。

 向こうのブランコのバーに逆さまになって、膝だけでぶら下がっている男性がいる。これが受け手。

 で、私はブランコに掴まって向こうに飛んだら、飛び移って彼に受け止めてもらう。こっちのことを飛び手と言うらしい。


 こちらから向こうへ飛び移るのと同時に、向こうからこちらへ飛び移る人もいる。両側に2つずつあるのはそういうこと。


 私が向こうを掴まえるんじゃなくて、受け手がその名の通り飛び手を受け止め、私はそのままあっちへ向かう勢いを利用して舞台に飛び移る。


 つまり私を掴まえられるかは相手次第。信頼関係が重要だが、残念ながらそんなものはない。


 だって偽リリアちゃんだもん。


(私がタイミング外したら終了だよね……)


 相手だってプロなんだから、なんとかしてくれるでしょ。もし私が落ちたら、それは彼の責任と思いたいが、こっちも動いていれば相手も動いている。

 ここぞという一瞬のタイミングで飛ばなくてはいけない。

 手を離す位置が高すぎれば、横への推力が足りずに届かないし、手前すぎると届く前に落ちて高さが合わない。しかもこっちがバッチリのタイミングでも、向こうの位置が合わなければ飛んでいったところで「あ~れ~」と無残に落ちていくだけ。


(考えていても仕方ない。キャサリン、行きまーす!)


 勢いを付けながら飛び出した私は、大きく揺れるブランコに掴まり、向こうのブランコとタイミングを合わせられるよう下半身を大きく振り、勢いを調整しながら、飛び移る機会を窺う。

 もう1組と同時に飛び移れれば最高だけど、そう簡単にはいかないので飛び移るタイミングは個々に任されているため、自分の動きに全ての意識を集中させます。


(……なんて難しいことを考えたけど……、この感覚何かに似ているのよね……)




 あれはまだ私が野猿と呼ばれていた頃、リングリッドの森の中で遊んでいたときのこと……

 そうよ! 木々を飛び移っていたあの時の感覚だ! 自分の勢いだけで飛び移るのとは勢いが違うけど、タイミングに関しては理屈は一緒だよ。


 それが分かっただけ大分気が楽になりました。リングリッドの野猿令嬢と呼ばれた実力が、まさかこんなところで役に立つとは思わなかったわ。


(そうと分かれば……ここだ!)


 ためらいなく手を離し、宙に放り出された私。

 相手が掴まえやすいよう、無い胸を張って飛び込んでいきます。


(視線を逸らすな! 真っ直ぐ相手を見据えろ)


 こちらに向かってくる相手のブランコに向け、大きく手を伸ばす。

 恐怖で目を閉じれば、自然と身が縮こまってしまうので、大きく目を見開き、相手の動きを逃しません。


<パシィン!>


 物音一つしないテントの中で、私の手を掴まえる音が響きます。

 瞬間、舞台に響き渡る団員の皆さんの歓声。


「ブラボー! リリア~!」

「おっしゃあ! 良く飛んだ!」


 勢いに合わせて私がヒョイと反対側の台へと飛び移りますと、受け手のお兄さんが白い歯を見せてサムズアップしております。


 リリアちゃんは普段から練習で上手く飛んでいるようですが、それでも1回1回が大事。

 ネットが下に張られているとはいえ、一歩間違えば命の危険だってある演技なのだ。成功すればみんながホッとするのも頷ける。


「よーし、リリア、その勢いで連続ジャンプもいってみようか」


 私の演技に気をよくした団長が、さらなる大技を指示してきます。

 無茶言うなよと言いたいところですが、何だかいけそうな気がする~!


 と、練習はどんどんテンポアップし、大きな失敗も無く前日練習を終えられました。


 ちなみにナイフ投げの方も問題ありません。わざと身体のちょっと外を狙えばいいと思ったら、意外とすんなり出来ました。

 ちょっとギリギリすぎて的役のお兄さんが「いつもより攻めすぎだろ」とビビっておりましたが、当たってないんだから問題ないですわ。




 あら、もしかして私、オリヴァー様に離縁されても食べていけるわね。

お読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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[一言] ドレスを着た野猿がドレスを脱いで本領発揮
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