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少女、潜入調査する

「リリア、こんな遅くまでどこに行ってたのよ」

「ごめんなさい」


 雑技団の宿舎に戻ってきた偽リリアことキャサリンよ。

 帰りが遅くなったことを心配する女性団員に怒られてます。

 年齢からリリアちゃんを妹のようにお世話している方のようで、怒りながらも心配していたのがよく分かります。


(どうやらバレてはいないわね)


 


 潜入調査の前に、オリヴァー様やネイ兄様と打ち合わせをしました。


 まず大前提として、相手は国際的犯罪組織の隠世。

 そして、何らかの意図があってその手引きを王権派が行っており、ベルニスタも関わっている可能性が高い。


 その中で私達が出来ること。


 ひとつ、キャサリンは襲撃によって重傷を負い、自宅療養中と称して当分表には出ないということ。

 万が一見舞いがあるときは、リリアちゃんが影武者を務める。寝たふりして喋らなければ問題ないはず。


 その間にリリアちゃんにはこれまで自身の身に起こったことをオリヴァー様から説明してもらう。

 ショックを受けるでしょうが、負の連鎖を断ち切るためには必要なことです。


 ふたつ、ロニー達を襲撃の実行犯として騎士団で収監し、取り調べを行う。

 全員貴族の子弟ではあるが、事が事だけに抗議されてもラザフォードのおじさまは保釈するつもりはなく、私への襲撃に関する取り調べと称して、王権派や隠世の動きを調べ進める予定。


 みっつ、私は隠世の動向を探る。

 今回襲われた理由は、毒の知識を持つ(と彼らは思っている)私を幽閉して、一時的に表舞台から退場させること、及び私から毒の事を教わった別の者がいないかを吐かせるためでしょう。


 ところが予想に反してロニー達が返り討ちに合った挙句、私に逆に尋問される始末だったので、隠世的には事態が明るみに出る前に、まとめて始末しようとしたのでしょう。


 ひとまず毒の対処法を知っていると思われる私が大怪我で表に出れないと装ったので、彼らの1つ目の目的は達成したが、2つ目については不確定要素が大きく、それによって次に打つ手が変わる可能性があるため、それが何かを探る。


(という手はずだったんだけど、この人の反応からすると、リリアちゃんの本当の外出理由を知らない可能性もあるのよね……)


 隷属の禁呪がどのタイミングで解けるのかが分からなかったので、最悪戻ってきた私の様子から禁呪にかかっていないことがバレれば、「お前誰だ!」となる懸念もありましたが、リリアちゃんの証言通り、暗殺から戻るまでの間に術は解けるようで、団員達が私を怪しむ様子はありません。


 雑技団全体が隠世に関与している可能性もありますが、隷属の呪術を使うあたり、知らぬ間に関与させられている可能性もあります。


(どちらにせよ証拠を掴まないとなんとも言えないわね)


「まあいいわ。明後日からまた公演が始まるから、明日は通し稽古よ。体調不十分で事故でもあったら困るから、今日はもう寝なさい」

「明後日?」

「忘れたの? 明後日から公演の第二クールでしょ。猛獣が出れなくなっちゃったから、私たちの演目が増えるって聞いたでしょ」


 この子は話聞いてなかったのと、若干呆れられながら、お姉さんが状況を説明します。


 第一クールで披露した猛獣を使ったショー、これは私とオリヴァー様が観覧したときにやっていたものですが、猛獣達が原因不明の病に罹り出場出来ないため、第二クールは団員達の曲芸のみで勝負するとのこと。


 そのため、普段は披露しない演目が増え、各自が練習していた未公開の演目をプログラムに組み、登場機会が多くなるとのこと。


「リリアの空中ブランコは初お披露目だよね。アンタみたいな子供が成功させたらみんな拍手喝采よ」


(は? ナイフ投げだけじゃないの!)


 これはやべー、想定外だわ……

 ナイフ投げだけならなんとか出来るかもだけど、それだって一つ間違えば殺人事件だぞ。その上、空中ブランコだと! 


 下痢だと言って朝からトイレに立て籠もろうかしら……


「何今から緊張してるのよ! 練習では普段からヒョイヒョイ成功させてるじゃない。団長にだって、いつになったらステージに立てるのかって言ってたじゃないのよ」


 マジか……リリアちゃん、アンタすげーわ。私と違った意味で身体能力お化けだよ。


「うん……頑張る、頑張るよ(って言うしか無いじゃない!)」

「そうそうその意気。きっと成功するわよ」


 気負う私にお姉さんが優しく微笑みかけます。

 この感じなら突っ込んだ質問しても大丈夫かな。


「それはそうと、猛獣達は大丈夫なの?」

「うーん、原因がよく分からないのよね。今はアカデミーの獣医さんに看てもらっているみたいだから、元気になって帰ってくると思うよ」

(ここでその名前を聞くとは……)


 貴族派との交歓会で現れた野獣、そして原因不明の病でアカデミーに保護されているという雑技団の猛獣達。

 タイミング的に雑技団から搬送されたのと、交歓会に現れた時期がリンクするのは偶然でしょうか?


(まさかとは思うけど、調査の必要はありそうね……)


「どうしたの? 難しい顔して」

「ううん、あの子達が元気に帰ってくるといいなあって」

「大丈夫よ。あの子達の分まで私達が頑張れば、きっと元気になって帰ってくるよ」

「そうだね」

「ほら、子供はもうお休みの時間だよ。早く寝なさい」


 お姉さんに促されて寝室に向かいます。

 雑魚寝かと思ったら、意外にも一人部屋でした。

 一応、愛すべき雑技団のマスコットキャラの少女だから、気を使ってくれているようです。


「いやはや、まさか空中ブランコとは……」


 部屋に戻り一人になると、思わずため息が漏れます。


 見様見真似しようにも、実際に見たのはサザンポートと王都で見た二回だけ。それもひゃ~すげ~って感じでしたので、動きとか体の使い方まで観察しているわけではありません。


「練習の間に感覚掴むしかないか……」


 やれやれ、一つミッションが増えてしまいましたわ。

お読みいただきありがとうございました。

次回はキャサリンのアクションシーン(バトルシーンとは言ってない)になるかな? 

よろしくお願いします。

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[一言] 大粛清の嵐がやって来る 王権派がベルニスタと手を組んでるから戦争不可避? チャラ男は宣戦布告代わりの塩漬けの首になってしまうのか
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