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少女、旦那に妹を紹介する

 オリヴァー様と二人でお出かけです。

 デートではございません。二人でお出かけです。

 

 何が違うのか? 何も違いませんが、本人がお出かけと言えばお出かけなのです。


 目的地は雑伎団の公演会場。

 サザンポートで会った彼らが王都までやってきたのです。

 それはつまり、リリアちゃんと久しぶりに再会できるということ。オリヴァー様も会ったらビックリしますわ。 


「そんなにケイトに似ているのかい?」

「そっくりもそっくりですわ。双子と言っても疑われないです」


 サザンポートへは同行しなかったオリヴァー様に、リリアちゃんのことを話すと、是非あって見たいねと仰りますので、雑伎団の公演を見に二人でお出かけし、その後に彼女を紹介しようという段取りです。


 会場へと馬車で向かいますが、相変わらず座る距離の近いオリヴァー様。

 いえ、むしろ前よりもよりくっ付いて離れない姿勢です。


「オリヴァー様、近すぎますよ」

「私を離すなと言ったのはケイトだよ」


 いや、言いましたけど、さすがに馬車の中からは逃げませんわよ。


「それでも離したくない。出来るものならもっとくっ付いていたい」

「これ以上はくっ付けませんよ?」

「出来るよ」

「どうやって?」

「こうするんだよ」


 言うやいなや、オリヴァー様は私の両脇を持ち抱えると、私を自分の膝の上に乗せ、後ろから両腕で腰を抱きしめます。


 これは……みんな大好き膝乗せ&バックハグの欲張りダブルコンボですわ! 白昼堂々なんて破廉恥なの!


「ケイトがやれるものならやってみなと言ったからだよ」


 これ以上どうやってくっ付くのですか? と聞いただけで、挑発したつもりはないのですが、


「一回やってみたかったんだよね。どうせ誰も見ていないんだから、恥ずかしがることないよ」

「後でリリアちゃんに会って、私と間違えてハグとかしちゃダメですよ」

「僕がケイトを見間違えることなどない。本人か別人かなど見ればすぐに分かるよ。そうでなければ婚約者などとは呼べぬ」


 オリヴァー様は自信満々に胸を張り、公演会場に入り、公演前のリリアちゃんと久々のご対面です。




「リリアちゃーん!」

「ケイト様!」


 うり二つの妹と再会を喜んでハグします。


「リリアちゃんちょっと見ない間に背、伸びた?」

「はい、最近身長が結構伸びているんです。ケイト様も同じくらい伸びてますよね」


 サザンポートで会ったときには身長がほぼ同じでした。

 それから、私は急成長したはずなのに、今日も身長がほぼ同じ。


 成長期までかぶるとは……いや、リリアちゃんの場合は年相応に成長期なので、かぶるとは言わないかもしれないけど、背が伸びた私を見せて、お姉ちゃんぶりたかったという思惑がないわけではありませんでしたので、少し残念ですわ。


「でも元気そうでよかったわ」

「ケイト様もお変わりなく」

「そうそう、今日は一緒に連れてきた人がいるんだ」


 そう言って、オリヴァー様を紹介します。

 

「初めまして、リリアと申します。ケイト様にはサザンポートでお世話になりました」

「…………」

「オリヴァー様?」

「……そっくりだな」

「でしょ」


 リリアちゃんの姿に、オリヴァー様も驚いています。


「似すぎではないか?」

「だから似ているって言ったじゃありませんか」

「隠し子?」

「ウチのお父様がそんなこと出来る人に見えます?」

「無いよなあ……」


 入れ替わったら分かりますか? と聞けば、ううんと唸るオリヴァー様。


「いいや、分かる、僕には分かるよ」

「本当ですか? このまま衣装を入れ替えても分かりますか?」

「うん、分かるよきっと」


 ずいぶんな自信ですわね。何か判別方法でもあるのでしょうか。


「すみません、そろそろ公演の準備に入るので……」

「忙しいところありがとうね。公演見ていくから、終わったら一緒にご飯食べに行こう。頑張ってね」

「ありがとうございます。頑張ります!」


 リリアちゃんはペコリとお辞儀をすると会場へ戻っていき、私達も観客席に向かいます。




 雑伎団の公演が始まりました。

 サザンポートでは人間の身体能力を生かした演技だけの公演でしたが、王都では調教した動物による曲芸なども加わり、演目が多くなっています。

 どうやら動物たちの搬入が遅れていたのが原因のようです。


 そして、いよいよナイフ投げの演目です。 

 清楚さが際立つ真っ白な舞台衣装に身を包んだリリアちゃん。観客が固唾をのむ中、難なくナイフを連続して命中させますと、万雷の拍手と歓声が湧き起こります。


「見事な腕前だね」

「あそこまで的確に狙うのは、騎士団員でも中々難しいと思いますわ」

「でもケイトだったらいけそうじゃない。君があそこに立っていても誰も見分けがつかなそうだな」


 え? 判断するのはそこ?

 そういやサザンポートでアリス様にも出来るんじゃない? って聞かれたな。

 どんだけ戦闘狂だと思われてるのよ、私。


「いやですわ。貴族令嬢としての嗜みとか雰囲気とかそう言うところで見分けられますでしょ?」

「冗談だよ。どれだけそっくりでも、僕がケイトを見間違えると思うかい?」

「見分け方があるんですわよね」


 先ほども見分けられると言っていましたが、結局それが何かは教えてくれませんでしたけど。


 そして公演も終了。観客が一人、また一人と会場を後にする中、リリアちゃんとご飯の約束をしている私達は、通用口の近くで彼女が出てくるのを待っています。


「公演はどうでしたか」

「各国でも評判だというのが頷ける内容だったね。あのリリアちゃんと言う子も見事だった」

「では今日はたくさんご馳走してあげてくださいね」

「もちろんだ」


 そうして暫く待っておりましたら、もう一つある関係者用の小さな通用口から中へ入る人影が見えました。


「あれは……ロニー?」


 私達がいることに気付いていないようで、こちらから声をかける間もなく彼はそそくさと中へ入っていきました。


 彼は何しに雑伎団へ?

お読みいただきありがとうございました。

次回から物語はシリアスな展開になりますが、お付き合いいただければ幸いです。

よろしくお願いします。

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