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少女、女子旅でそっくりさんに出会う

 両親に婚約を了承して頂き、オリヴァー様は2日後には王都へお戻りになりました。

 なんでも、王都で騎士団としての仕事があるとかで、本当に婚約の了承を取り付けるためだけに、遠路はるばるお越しになったのです。


 そして入れ替わるようにアリス様たちがやって来ましたが、今年はずっとここで避暑静養するつもりはなく、数日間を過ごした後、とある目的地に向かいました。


 それは港町サザンポート。


 貿易が盛んな王国一の港町で、学園での私の弟子(ともだち)、ヘレンさんの実家の商会がある街。

 夏季休暇の前に、彼女から良かったら来てくださいと招待されていたのです。


 アリス様も私たちも学園を卒業すれば、それぞれが責任ある立場になりますので、みんなで遊びまわることも出来なくなります。

 まして、王都から離れて違う街に遊びに行くことなど、ほぼ不可能。


 それならば自由が利くうちに見聞を広げるのもいい体験だということで、みんなでサザンポートまで女子旅をすることになったのです。

 一応女子旅と銘打っていますが、護衛の騎士はいますのでご心配なく。




「皆様、ようこそお越しになられました!」


 サザンポートに到着後、ヘレンの出迎えを受けました。

 

「ケイト師匠!」

「パティもいたんだ」

「はい、ヘレンからアリス様や師匠がお越しになると聞きまして、お待ちしておりました」


 歓迎する一団の中にパトリシアもいました。お父様が研究のため隣国に出向いているそうで、夏季休暇の間、ヘレンの家でご厄介になっているので、商売を手伝っているとのこと。

 ちなみに師匠呼びは、普通にケイト様と呼ばれても面白くないので、私が許可しています。


「ねえケイト、折角だから、ヘレンとパティに街を案内してもらいましょうよ」


 アリス様の提案を快く引き受けてくれ、明日、街を見て回ることにしました。

 貴族令嬢という立場上、街の市場などに行くことは少ないので、私もアリス様も楽しみです。


「今日はお疲れでしょうから、ホテルへご案内いたします。夜には歓迎の催しを開きますので、楽しみにしていてくださいね」

「そんなに気を使わなくてもよかったのに」

「私もそう申したのですが、公爵令嬢様がお越しになるのであれば相応のおもてなしをしなくてはと、父が申しますので……」


 さすがは商人、抜け目がない。 

 公爵令嬢であり、将来の王妃に限りなく近いアリス様の来訪は、商会にしてみればいい宣伝の機会です。どれだけ金を積んでも足りないくらいの効果があるわけですから、歓迎は当然と言えば当然。


 むしろ気を使わなくていいと言う方便を真に受けて、何のもてなしもしない場合のリスクを考えれば、こうするのは至極もっともな対応になります。




 泊まるのはヘレンの家が経営する、街で一番の高級ホテル。客室も豪華だし、食事も一流。王都の高級ホテルにも引けを取りません。

 ヘレンってば、ウチよりお金持ちかも……


「この後、面白い出し物がありますので、楽しみにしてくださいね」


 夕食をいただいたあと、ヘレンが面白い出し物を見せると言って案内したのは、ホテルの裏手にある広場に設営された大きなテント。


「ここは?」

「ベルニスタ王国から雑技団が公演に来ているんです」

「雑技団?」


 ベルニスタ王国はリングリッド領と国境を接する隣国。

 かつては度々国境紛争のようなものがあったそうですが、当代の国王に代わってからは友好関係を築いており、今のところは平穏です。


 雑技団は、そのベルニスタから来た演舞集団。

 アクロバティックな曲芸や奇術などで、各国でも公演のたびに大評判だそうです。


「中でも今回来た雑技団は、色々な国からオファーが殺到しているみたいで、この国に来るのは初めてなんですよ」


 各国を周り、この国ではサザンポートでの公演を皮切りに、最後は王都で公演の後、ベルニスタに帰るのだそうです。


「公演は来週からなのですが、今日は特別に私達だけで貸切公演をしてくれるようお願いしたんです」


 歓迎の度合いが半端ないねえ……




 そして雑技団の演技が始まります。


 高い梯子の上で、軟体動物かと思うくらい体を折り曲げたまま演舞する女性。

 体一つがやっと通れるかという大きさの輪に火をつけて、その中に飛び込んで見事にくぐり抜ける男性。

 三人の肩の上に二人が乗り、さらにその肩に一人が乗り、曲芸を披露。


 およそ人間業と思えぬ曲芸、奇術の数々を見せつけられ、野猿の血がウズウズしてしまいます。


(私も訓練すればあれくらいは出来るかな?)



「ねえ、あの子、ケイト様に似てませんか?」

「ホントだー、よく似てるねー」


 次の演目に登場したのは、見目麗しい少女を見てエマがそう言うと、アリス様もサリーも確かにと頷きます。

 背丈や体格は私とほぼ同じ。髪の色も長さもほとんど変わらない。強いて言うなら、彼女の方が若干幼く見えるかな? といった程度。

 まあ私も十分幼いが、コレくらいの身長であれば、間違いなく彼女の方が年下だろうから、幼くて当然よね。

 まさか隠し子? なわけないか……あの父に限って、女性関係で腹芸の出来る人ではないし。


 

 彼女が披露するのはナイフ投げ。

 壁を背にした男性が両手と頭に乗せたリンゴにナイフを投げて射抜くというもの。

 ナイフがダミーでないことを見せるため、少女は手に持ったリンゴを宙に投げ、落ちてきたところをナイフで突き刺す。

 そして迷いなくナイフを男性目掛けて投げると、寸分の狂いもなく3つのリンゴを見事に射抜きます。


「ほえ~、お見事ですわ」

「あら、ケイトやエマなら出来るんじゃない?」


 アリス様はそう言いますが、エマも私も答えはノー。

 飛び道具は牽制や不意打ちに使うもの。ある程度の狙いが定まればいいので、あそこまで完全無比のコントロールは必要ない。

 訓練すれば投げ分けも出来るだろうけど、今の私が投げたら心臓とか頸動脈とか、ヤベー所にしか当てられる気がしない。

 

 

「ということは、あの子は相当訓練してるということね」


 ちょっとの迷いで手元が狂えば、大怪我をします。

 あれだけ堂々とはしていられるのは、己のやってきたことに自信があるということ。


「気になりますか?」


 真面目な顔で彼女の実力を測っていると、エマが聞いてきます。

 

「そうね、戦うとしたらどう立ち向かうか」 

「終わってからちょっとだけお話しできたりしませんかね」


 私達が話していると、ヘレンが団長に頼んでみましょうかと言いますので、ありがたくお受けします。




「はじめまして、リリアと申します」

「ケイトよ、よろしくね」


 演目が終わったあと、ナイフ投げの少女リリアさんとの対面です。


「リリアは何歳?」

「11歳です」


 年相応の体格と見た目よね。

 それにしても、近くで見たらホントに私にそっくり。数年前の私を見ているようですわ。


「ケイト、似ているのは今のケイトであって、数年前の貴女と比べたらリリアの方がずっとお姉さんに見えるわよ」


 アリス様、そのツッコミは野暮ってものですわ。 


「雑技団のどなたかのお子様なの?」


 そう聞くと、リリアが寂しそうに、自分は孤児で、ここの団長に拾ってもらったと語ります。


「ごめんなさい……変な事を聞いちゃったわね」

「いいえ、雑技団のみんなには大切にしてもらっているので、寂しくはありませんから、気にしないでください」


 とはいえ、雑技団はほとんどが大人達、各地を公演で転々と周っているため、年の近い友達はいないそうです。


 うーん、自分にそっくりの女の子。自己満足にすぎませんが、ここで会ったのも何かの縁。せめて思い出に残るようなことをしてあげられないかな……


「リリア、明日は時間ある?」

「はい、まだ公演前なので、予定は開いてますが」

「アリス様、明日は彼女も一緒に連れて行くのはどうですか?」

「そうね。リリアがいいなら私達は構わないわよ」


 リリアにどう? と聞いてみると、こちらの身分を知っているからか、畏れ多いと遠慮してますが、こちら側はみな乗り気です。


「なんか、ケイト様にソックリだから他人に思えないのよね」

「みんなもこう言ってるし一緒に行こうよ!」

「よろしいのですか?」

「構わないわよ」


 みんなが微笑むと、それにつられてリリアも笑みを浮かべて、よろしくお願いしますと答えます。


「ケイト様、嬉しそう」

「久しぶりに妹が出来たからじゃない」


 ふふ、明日はケイトお姉ちゃんが一杯可愛がってあげるからね。

お読みいただきありがとうございました。

とうとう10万字突破!(ダラダラ書いているだけでは? というツッコミはご勘弁)

投稿したての頃は、短編だけにしようとしていたのが、調子に乗って連載してしまったら、気がつけば文庫本1冊分も書いていたとは……これもひとえにお読み頂いている皆様のおかげと感謝いたします。

自分で書くとプロットの甘さとか、文才の無さを実感し、長期連載されている方は凄いなあと改めて尊敬します。

まだまだ粗の多い作品ですが、完結まで頑張って書き続けたいと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。


あと、短編では後書きで評価ポイントくれと書いているのに、ここには書かないねと質問を頂きましたが、連載物は完結してからお願いした方がいいかなという個人的な考えです。

あ、でもブクマは欲しいかも(笑)

もしブクマされてない方は是非ご登録を!


ではまた、明日もよろしくお願いします。


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