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少女、実家に帰る

タイトル詐欺です。夫婦喧嘩はしてません。

 貴族派の皆様に殴り込みをかけられたあの日からしばらく。

 王権派は相変わらず挑発してますが、貴族派もだいぶ弁えてきたようで、今のところ学園内も傍目には平穏な日が続いてます。



 そして日も進み、学園は夏期休暇。

 王都に残る者、帰省する者など人それぞれ。


 私はリングリッド領に帰省。しばらくしたら、アリス様もいつも通り避暑に来るそうで、今年はエマ、サリーも来ます。



「オリヴァー様、実家に帰らせていただきます」

「ケイト……帰省するだけだよね」

「そうですが?」

「その言い方だと離縁するみたいだよ」

「イヤですわ。まだ婚約すらしていないのに」

「だから、今回は一緒に行くからね」

「え?」


 言われてみれば当然ですよね。

 人の娘を嫁にくれと言っておいて、相手の親に挨拶しないわけにはいかないですものね。


「一緒に……行く?」

「そうだよ」

「馬車は?」

「別々に行くのは無駄でしょ。当然同じ馬車だよ」


 というわけで、オリヴァー様と同伴帰省ですわ。

 道中ずっと同じ馬車の中で、はわわ~が止まらなかったのは、今更ですので割愛します。





「お父様、ケイトが帰って参りましたわよ!」 

「おおケイト~、こんなに変わり果ててしまって~」

「それは死んだ方にかける言葉ですわ」


 家族と約一年ぶりの再会。会って最初の言葉が変わり果てたとはどういうことですの。

 私、別に魔境に冒険に行ったわけでもないし、死んでもいませんよ。


「何を言うか、こんなに背が伸びて、あの小さかったケイトの見る影も無いではないか」

「フィル兄様、その言い方ではブサイクになったみたいではありませんか。背は伸びましたが、可愛いらしさ全開ですよ」


 二人は背が伸びた私に驚いているようです。

 私事で恐縮ですが、身長がとうとう140cmを越えましたの。二人とは一年近く会っていないので、前より10cmほど伸びたことになりますね。


 そして! なんと! 地殻変動が! キター!


 見た目変わらない? ええ、そうでしょうそうでしょう。今はまだ、服の上からじゃ違いなど分かりません。

 でもね、見渡す限りの地平線にわずかではありますが、盛り上がるアレがその麗しいお姿を顕現されましたのよ。これはまさに僥倖。


 そりゃあの三人(アリスたち)に比べれば微々たるものですが、一、二ヶ月であそこまで大きくなったら逆に怖いわ。


 小さな事からコツコツと、あと何年かすればスレンダーナイスバディのνキャサリンが爆誕しますわよ。

 

 

「ケイト、そろそろ挨拶したいんだけど……」


 あらいけません、オリヴァー様のことを忘れてましたわ。


「オリヴァー君……よく来たな」


 オリヴァー様の姿を見た瞬間、お父様が急に厳しい表情に変わり、よく来たなの言葉に、歓迎の意ではなく、よくもぬけぬけとやって来れたなという威圧感を感じます。

 無駄に威圧スキルを発動するのは止めてください。オリヴァー様が引いてますよ。


「マルーフ卿、来訪をご承諾頂きありがとうございます」

「うむ、まずは長旅の疲れを癒してくれ。話はそれからだ」


 お父様、どうされたのかしら?


「フィル兄様、あれは何ですの?」

「父の威厳を見せたいんじゃないかな」


 フィル兄様にもすでに娘、私にとっての姪がいますので、お父様の気持ちはよく分かるそうです。


「男親ってのは勝手なものでな。娘にはいい縁に恵まれたいと思っているのに、いざ相手が来れば手放したくないとなってしまうのだよ」


 先日、フィル兄様が騎士団員の結婚式に行ったときのこと。

 バージンロードの先で待つ新郎。

 父にエスコートされ、新郎の元へ向かう新婦。

 新婦を新郎に任せ、一人来た道を戻る新婦の父。


「そのときの新婦の父の背中がさ、すげー寂しそうなんだよ。俺も娘が嫁入りするときのこと考えて、自身に置き換えたらさ、なんだか泣けてきちゃったんだよ」

「お兄様、娘まだ2歳だよね。早くない?」

 

 あーはいはい、確かに義姉さん似で可愛い子だけど、親バカここに極まれりですわ。


「早いとか早くないじゃないんだよ。娘が嫁に行く日を想像しない父親などいないさ」


 想像の翼を広げすぎですわ。


「女性の場合、逆に息子の嫁とかが気になると思うぞ」

「息子いないから私にはよく分かりませんわ」

「想像してごらん……オリヴァー君との間に息子ができて、将来、この人を妻にしますって紹介される日のことを……」


 フィル兄すまん、そもそもオリヴァー様との間に子を成すという想像がハードル高すぎて出来ません。

 人生終わるまで、はわわ~の「わ」を連呼しそうです。

 

「お父様に限ってそんな情けないことにはならないと思いますが」

「本人は気付かないかもしれないが、お前まあまあ溺愛されてたからね」


 ビシビシしごかれた男三人の下の末っ子長女なので、兄達から見れば私は溺愛されてたように見えるらしい。

 まあやりたいことを好きにやらせてもらえたから、あながち間違っちゃいないか。 


「で、お前に娘はやらん! 娘が欲しければ俺に勝ってからにしろとか言っちゃうの?」

「さすがにそれはないだろ。父上がそんなこと言い出したら、お前は一生行かず後家だ」


 お父様がオリヴァー様をギッタギタにしたら、第一騎士団と戦争になりますわ。


「剣の腕ならそうですが、格好良さならオリヴァー様の圧勝ですわ」

「それ、父上に言うなよ。マジで凹んで騎士団員に当たりがキツくなるから」


 お父様って、もしかしてメチャクチャ気分屋? と聞きましたら、お兄様が武人なんて多かれ少なかれ本能で生きるものさと答えます。

 

「なんだかんだ言っても、反対はしないから大丈夫だろうさ」

「もし反対したら?」

「ケイトが『お父様なんか大嫌い。もう一生口きいてあげない!』とでも言えばいい」

「それだと、騎士団の方に迷惑かかりますね」

「そうなったら仕方ない。そうならないよう上手く話してくれよな」


 うーん、ラザフォードのおばさまは、ウチの両親も知ってたと言っていたが、いざとなると渋るということなのか?




「ケイト、おかえりなさい」

「お母様、ご無沙汰しております」


 邸に入ると、お母様がお待ちでした。

 我が母ながら相変わらず美人だ。おかげで私もその遺伝子の恩恵を存分に受けている。


「お母様、帰ってきて早々ですが、ご相談があります」

「オリヴァー君の事?」


 さすがはお母様、話が早い。


「ええ。お父様が反対しないか心配で」

「タイミングがいつなのかというだけで、分かっていたことだし、反対はしないわよ。」


 ただ、少し拗ねるかもしれないけどね。とお母様は笑います。


「拗ねる?」

「嫁に出すというのは、親として寂しいものよ」


 フィル兄と同じ事を言ってる。やはり親になるとはそう言うことなのか……


「でも、それ以上に幸せになってほしいから、相手は見極めるわ。オリヴァー君なら問題ないと私は思うけどね」

 

 おお、お母様は味方なのか。

 あとは……お父様を凹ませることなく、婚約を了承させるだけね。

お読みいただきありがとうございました。

明日もよろしくお願いします。

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