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少女、お持ち帰りを所望される

「近いうちにそうなりたいと思っているから、ケイトさえ嫌じゃなければ、あながち間違いでは無いんじゃないかな」


 オリヴァー様に言葉の真意を質すこともできず、採寸のため別室に案内されてしまいました。



『ケイトは僕の想いに気付いてないみたいだから、これからは遠慮しないから覚悟してね』


 夜会の時に確かにそう言われたことを思い出す。

 オリヴァー様はホントにそう思ってくれているのか……それが本当であればこんなに嬉しいことはないと思う反面、本当にそれでいいのかと申し訳なく思う自分もいる。


(後で確かめよう……)




「はーい、ではサイズを計りますね」


 お店の方に声をかけられて、ふと我に返る。

 本人に聞いてみなくちゃ分からないことだ。今一人で色々考えていても仕方ないと、新しい服のデザインに思いを馳せる。


「キャサリン様は普段はどのような服を着てますのかしら?」


 新しい服の希望などを質問されたので、なるべく大人っぽく見える服がいいと伝えます。


「それなら身体のサイズにピッタリ合った、細身の服の方がいいわね」

「大きめの服はダメですか?」

「ダメではないけど、服に着られてる感が強くなるわ」


 なるほど、着てるというより服に包まれているように見えるのか。

 それは学園の制服でイヤと言うほど思い知りました。


「口で説明するより、実際に試した方が分かるかもね」


 夫人はそう言うと、既製服の中から私の希望に合いそうなコーデをしてみようと提案されますので、是非にとお願いします。


「ついでだから髪型やアクセサリーなんかも合わせてみようかね」

「夫人、楽しそうですね」

「キャサリン様には失礼かもしれませんが、お客様の中には、体型に自信のないと言われる方もいらっしゃいます。そんな方を美しく着飾るときこそ私達の真価が問われます。ご心配なく、キャサリン様はちょっと背が低いだけで、美しく見せることは難しくありませんから」


 うん、私が体型に自信がないと暗に言われているわけだが、相手は一流だ。大丈夫というなら大丈夫だろう。


 

 しばらくして……



「オリヴァー様、お待たせいたしました」


 私が色々とお着替えをしている間、隣の部屋でお待たせしていたオリヴァー様に夫人が声をかけています。


「ケイトは?」

「今からお呼びしますわ。だいぶ印象が変わったと思いますので、きっと驚きますわ」


「え、えーっと……オリヴァー様、どうですか。似合ってますでしょうか?」

「……」

「似合ってませんか?」

「…………」

「オリヴァー様?」


 私の姿を見たオリヴァー様はしばらく言葉を発しないまま、急に立ち上がると一言「美しい」と言って、私の手を取ります。


「すみません、こちらのお嬢様を服やアクセサリーと一緒に、一式お持ち帰りで包んでいただけますか?」


 残念、このお嬢様は一点物の非売品でこざいますわ。


「ご冗談がすぎます」

「いやいや、予想以上に大人の装いでビックリした」

「サロメ夫人の見立てが良いからですわ」


 身長の低い人は、下半身に目線がいかないよう、上半身を目立たせたり、ボリュームを持たせるのがポイントだそうで、用意されたワンピースはシックな色合いの細身でシンプルなデザイン。

 服が大きく見えないよう暖色系は避け、肌の露出を抑えすぎると重苦しいそうなので、出しすぎず隠しすぎずで膝丈七分袖。

 服をシンプルにした分、髪をアップでまとめ、イヤリングやお化粧で上半身にインパクトを持たせる。

 

 ……すいません、全部受け売りです。

 私は大人のファッションなんか興味がない、というか、今までは無理しても、子供が背伸びしたぐらいにしか見られないと思っていたので、知りませんでした。


 鏡を見て自分でもビックリです。

 ホントは小柄な女性用の丈の短いワンピースなのですが、私が着ると膝丈のちょうどいいサイズ。横幅が少し大きいのも、ハイウエストの位置にベルトのようなアクセントをつけるなどの方法で上手く調整してくれます。プロにお任せしましたら見事に化けるものですね。


「さすがに背の低さはどうしようもありませんね」

「そんなことはない、実際の身長よりだいぶ高く見える。これでヒールを履けば、他のご令嬢と比べても何ら遜色はないよ」


 オリヴァー様とそんな話をしていると、サロメ夫人がイブニングドレスだったら足元が隠れるから、ヒールで延ばし放題よと笑います。


「でもドレスだと、足元は隠れますが、デコルテは大きく開きますよね」

「そうね、キャサリン様なら、背中がパックリ開いたデザインなんか似合いそうね」


 大きく開いても、胸無いです。虚無です。貧相です。開いているのが背中か胸か分かりません。


「胸なんかオマケみたいなものよ。髪と一緒で見えないところで盛ればいいんだから」

「なるほど」

「それに、オリヴァー様は胸なんか無くても気にしないわよね」


 夫人はそう言ってオリヴァー様に視線を向けます。


「夫人、あまり誤解を招くような言い方はしないでほしい。別に私は胸の大きさで相手を決めているわけではない」

「オリヴァー様、そうなんですか?」

「そうだよ。僕はありのままのケイトがいいんだよ」

「では、着飾らない方がよかったですか」


 オリヴァー様が少し困った顔をしています。


「そうだな。このまま街に連れ出すのは怖いな」

「この格好でオリヴァー様のお隣に並ぶのは難しいですか」

「そうではない、今の君は素敵だよ。僕の側にずっと一緒にいてほしいが、街に出て、他の男に見せるのが勿体ないから連れ出したくない」


 だからお持ち帰りしたいと? 大丈夫でしょ、服の補正で多少は大きく見せてますが、幼女がかなり小柄なご令嬢になった程度です。

 私のことを気にするような殿方はいませんわよ。


「では、似合っているか、そうでないかと言えば?」

「よく似合っている」

「オリヴァー様から見て、こういうコーデはお気に召しませんか?」

「いや、素敵だと思う」

「それならば、一緒にこのまま街へお出掛けしませんか?」


 折角似合っていると言ってくれているのだ。出来るならばこの格好で一緒に街へお出掛けしたいと、オーダーメイドの服のほかに、こちらの服も購入したいと申し出ます。


「では、そちらの服も合わせて買い取ろう」

「オリヴァー様、こちらは私がお支払いしますわ」

「大丈夫、今日は全部僕持ちだから心配しないで」

「すみません、お気遣いいただいて……」

「いいんだよ。今まで個人的にこういうプレゼントも出来なかったからね」

 

 確かに今までは、誕生日とかお祝い事のプレゼントはアリス様、もしくは公爵家のお名前で頂いてましたので、オリヴァー様個人からのプレゼントとしては初めてですね。



 初めてのプレゼント……

 いかん、意識してしまったらドキドキしてきたぞ……

 顔が赤くなっているのが自分でも分かる程だ。



「あらあら、若いっていいわね」


 夫人やお店の方達の暖かい眼差しを浴びながら、工房を後にするキャサリンであった。


「なあケイト」

「私、お持ち帰り商品ではございませんよ」

「ダメ?」

「ダメです」


(オリヴァー様の気持ちを確かめるまでは……)

お読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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