少女、王子の無茶ブリに巻き込まれる
私の足の痛みは成長痛と言われました。
オリヴァー様によると、骨格が成長するに従い筋肉も成長するが、両者の成長にはタイムラグがあり、骨の成長に筋肉が追いつくまで痛みが生じることがあるというのです。
従って骨格が急激に成長する時期は痛みが続くうえ、靴がサイズに合わずピッタリだったり少しキツい物だと、外から筋肉を圧迫することで、より痛みが増すのだそうです。
「オリヴァー様よくご存じですね」
「僕もアリスも小さい頃に経験したからね。アリスも記憶があるだろう」
「確かに小さい頃、よく足が痛かった記憶がありますわ。そのうち痛みも無くなったので気にしてませんでしたが、あれは成長に伴う痛みだったのですね」
つまり、今私の足が痛いのは、私が大きくなっているから?
皆様が小さい頃に経験したものが、今になってやって来たと? この二人みたいに高身長になる兆しが遂にこのキャサリンに訪れたと!
「運動のしすぎで痛むのであれば年中痛いはずだけど、夜の間だけというのであれば、多分成長痛だよ」
ほえ~、オリヴァー様物知りすぎます。
「お兄様、良く気づきましたね」
「この前ダンスしたときにも少し気にしていたようだから。ヒールを履いているにしても『あれ、少し大きくなったかな?』とも感じたし、もしかしたらと思ってね」
さっきのは頭ナデナデではなく、自分との身長差を確かめるのに頭の上に手を乗せただけのようです。
勘違いしてしまったではありませんか。
「さすがオリヴァーだな。よく観察している」
「ホントに。私なんかいつも側にいすぎたせいで気づきませんでしたわ。さすがお兄様、ケイト相手ならば些細な変化も見逃しませんね」
「二人とも変なこと考えてませんか?」
からかう殿下とアリス様の二人をジト目で窺うオリヴァー様。
二人の言い方ではまるでオリヴァー様が、私のことを気にして仕方がないと言わんばかりではありませんか。
前言撤回、アリス様も嗜虐趣味だわ。殿下もS、アリス様もS、SSカップルですわ。
「そうなると、キャサリン嬢はヒールを新調した方が良さそうだね」
「ローファーも新しくした方が良さそうですわ」
「服も新しい物を用意しないとね」
「何でしたらアクセサリーも買いましょう」
殿下とアリス様でワイワイやってますが、私の服や靴のことをなぜ二人がそんなに楽しそうに話しているのだ。
「ではオリヴァー、サロメ夫人に話を通しておくので、キャサリン嬢の新しい服と靴の調達を君に命ずる。これは王子命令だ」
「まあ、サロメ夫人のお店なら間違いありませんわね」
「命令! 殿下は何を考えているのですか!」
殿下のとち狂った命令にオリヴァー様が困惑しています。
私も迷惑だわ。王子の命令で調達ってなによ……
しかもサロメ夫人と言えば、王妃殿下御用達でオファーが絶えることの無い一流デザイナー。そのお店を利用するということは、社交界の貴婦人にとって一種のステータス。
アリス様の家はよく利用しているようですが、伯爵夫人のウチのお母様だってサロメ夫人にデザインしてもらったのは数えるほど。
「いやいや、サロメ夫人デザインの服なんか買ったら、お母様に殺されますわ!」
価格的な理由もありますが、私だってそんな服持ってないのにー! という嫉妬の方がデカい。
「大丈夫。買うのはお兄様だから」
「アリス! 勝手に決めるなよ!」
公爵家のお金を使えば良いと言う発言に慌てるオリヴァー様を、アリス様が引っ張っていって何やら話しています。
「お兄様、命令お受けなさいませ」
「なんでだよ。デザイナーを彼女の家に呼び寄せればいいし、それにわざわざサロメ夫人のお店でなくてもいいだろ」
「はあ……サロメ夫人のお店だからこそ、直接出向く口実になるんです。お兄様がエスコートしてあげるのです。街に行くんだから当然それだけで終わりにはなりませんわよね」
「……」
「服と靴を買えば、当然アクセサリーも見たくなりますわね。ケイトのことだから武器を見たいと言うかもしれません。本を見たいと言うかもしれません。色々とお店を回っていれば、時間が経ってお腹も空きますわね」
「何が言いたい?」
「お兄様も中々鈍感ですわね……つまり、合法的にデート出来るじゃありませんか」
「……! そういうことか!」
「お金のことはお父様に話を通しておきますのでご安心を。後はお兄様次第です、ご武運を祈りますわ」
話が終わったのか、オリヴァー様がこちらにやって来ます。
後のアリス様がニヤニヤしているのが気になりますわ……
「えーと、そのー、ケイト」
「は、はい」
「良かったら、僕から一式プレゼントさせて欲しい」
「え! いや、その……それには及びませんわ」
「気づいたのは僕なんだから、是非僕から贈りたい」
「よろしいんですか」
「受け取ってくれると嬉しい」
最初こそぎこちない感じで話し始めたオリヴァー様ですが、私がお受けすると答えると、嬉しそうに微笑みます。
クッ! 眩しい! 此奴、光魔法の使い手か!
「話はついたかな」
側で話を聞いていた殿下が声をかけてきます。
「ええ。それではいつにしましょうか」
「そうだな。あまり遅くなってもいけないから、次の休みの日でいいだろう。夫人にはそう伝えておく」
え? 人気デザイナーだよ? 早くない?
「そんなにすぐに夫人のスケジュールって押さえられるのですか?」
「大丈夫だよ。お店に行く分には問題ないだろ」
お店に……行く?
「邸にデザイナーの方が来るのではなくて?」
「キャサリン嬢は初見だから、お店に行ってもらうんだよ。夫人が不在でも腕利きのデザイナーが揃っているし、オリヴァーがエスコートするから大丈夫だよ」
殿下の説明で夫人に直接デザインしてもらうわけではないと分かりましたが、その最後に引っかかる発言があります……
「エスコート?」
「ん? 初見の君を一人で行かせるわけないだろう。当日はオリヴァーが迎えに行くから」
「ほえ?」
一緒に……行く?
「殿下、ケイトが理解出来なくて頭が回っておりませんわ」
「話を端折ってしまったからね。キャサリン嬢、当日はオリヴァーが君の邸に迎えに行くから、一緒に買い物してきなさい。あとは二人でゆっくり街巡りでもするといい」
一緒に……買い物? 街巡り?
「それは……つまり」
「王子命令でデートしてこいってこと」
で、で、で、殿下! 何ウインクして格好つけてるんですか-!
「ケイト、当日は迎えに行くから待っててね」
オリヴァー様もキラキラボイスで微笑むなー!
血圧上がりすぎて膝痛いわー!
お読みいただきありがとうございました。
次回、初デート回です。
よろしくお願いします。




