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少女、顔と武芸には一家言あり

 入学から1ヶ月経ちました。


 学園生活にもだいぶ慣れ、校門で捕獲……コホン、止められることも無くなりましたが、最近はお近づきになりたい方の選別に忙しい毎日です。


 さすがは公爵令嬢、縁を持ちたい方はごまんとおりますので、ご挨拶にくるご令嬢が引きも切らさず、中にはアリス様に直接ではなく、私にコンタクトを取る方もいらっしゃいます。


 確かに下位貴族のご令嬢が直接公爵令嬢にコンタクトは難しいので、私というワンクッションというのは現実的ですが、それにしても数が多い。


 で、その中で毛色の違う人種が一人。


「ごきげんよう、キャサリン嬢」

「何の御用ですか。熊野郎様」


 そう、ロニーです。


「冷たいな。俺と君の仲じゃないか」

「私と貴男が親しいと思っているなら、その基準見直した方がよろしいですわよ」


 壁ドンの変(?)から数日後、彼が正式に謝罪してきました。

 それまでの間、私が何者かと調べていたようで、本当に伯爵令嬢だったと知り、謝罪せねばならんと来たそうです。


 私が伯爵令嬢って、信じて無かったのかよ……


 アリス様への仕官は口利きしないわよと言うと、それはもういい。さすがに無理があったと反省しているようですし、話していると根は真面目な方のようなので、声をかけるくらいは許可しましたの。


 そうしたらまあ、よく現れること。今日は授業でこういうことをしたとか、模擬戦でこういう結果だったとかを話しますが、興味ないわ!


 私が武門の名家リングリッドのご令嬢ということもあって、騎士を目指す彼としても繋がりを持てればとの思惑もあるようですが、騎士になるなら口ではなく実力を見せろっていう話ですわ。


「なら一回、見学に来てくれませんか?」


 ロニーとしてはそれなら是非一回実戦訓練の様子を見て欲しいと言うが、私にも授業があるので、気が向いたら見に行くと答えると、嬉しそうに「待ってるよ」と言って帰って行きました。


 気が向いたらって、一生気が向かないって意味ですわよ。


「もしかしてケイト様に個人的に興味があったりして」


 そんな話をエマとサリーにすると、とんでもないことを言い出します。


 二人は令嬢の習う護身術のほかに、本格的な武術の授業も受けており、ロニーとはそこで一緒。

 色々調べた結果、アリス様への仕官に裏はなさそうというのも確かなようで、それに関する話は一切してこないそうです。

 代わりに最近は私のことをよく聞かれるそうです。

 やめてくれ、モテないとは言え、私にも選ぶ権利はある。


 一応、彼の名誉のために言っておくと、見た目は悪くはないです。

 背も高いし、まあまあ鍛えてますし、(筋)肉好きの女子には垂涎の一品ですが、私はオリ……コホン、王子様タイプが好みなので、ゴリマッチョは趣味ではありません。

 二人もそれは知ってるだろうに、オマエら人をからかって楽しいか?

 

「武芸に関しては荒削りですが、基礎はしっかり鍛錬しているようです」

「あんな見た目なのに意外と理知的な戦い方をします。ただの自信家ではありませんね」


 へえー、熊だよ。わーって襲いかかって、ぐわーって殴りかかってくるイメージだわ。


 二人が自分の目で確かめてみればと言うのですが、熊に興味があると思われるのも癪なので、気が向いたらと答えておきましたわ。


 ◆


 気が向いたらとは言いましたが、本当に気が向く日が来るとは思いませんでした。


 正確には向いていませんが、実戦訓練の授業時間、たまたま私の講義が休講になってしまい、エマとサリーに暇なら自分たちの今の実力を見て欲しいと頼まれて、見学する事にしました。


「おっ、キャサリン嬢やっと見る気になったか」

「貴男を見るためではありません。友人のエマとサリーを見に来たのですわ」


 訓練場に行くと早速、ロニーがやってきましたので、釘を刺しておきます。


「ああそうか、エマ嬢とサリー嬢はお仲間だもんな。まあいいさ、そこにいれば嫌でも俺の戦いも見ることになるからな。よーく目を見開いて見ていてくれよな」

「はあ……せいぜいがんばってくださいな」


 そんな話をロニーとしていると、他の男子がチャチャを入れてきます。


「ロニー、彼女か?」

「違えよ、エマ嬢とサリー嬢のご友人だ」

「そうか~エマちゃんとサリーちゃんの友達なのか~、よろしくね~」


 チャチャを入れてきた男子がそう言って挨拶してくると、ロニーが彼を引っ張って耳元で何か囁いています。


「(ボソッ)お前、相手は貴族のご令嬢だぞ。初対面で随分馴れ馴れしいな。こういう子が好みなのか」

「(ボソッ)馬鹿言え。エマちゃんとサリーちゃんの友達なら仲良くしておいて損はないだろ。あんな小っちゃな子にも優しい男アピールだよ」

「(ボソッ)ほどほどにしておけよ」

(私の聴力をなめるな、全部聞こえてますわよ。)


 よく見れば、他の男子もエマとサリーにやけに親しげに話しかけている。

 この授業は基本的に騎士課程の生徒がほとんどなので、女子率は低い。しかも二人とも美少女。

 動く度に揺れるエロティックお乳、汗で煌めく艶やかな髪。


 エロティックシスターズと命名しますわ。


(強くて美しい彼女達は、そりゃ人気よね)


 つまりアレか、私は二人と仲良くなるためのダシか。

 残念ながら美味しいダシが出るほど熟してませんわよ(自虐)


 格差社会の……止めておきましょう。あまり言い過ぎると精神的に良くないですわ。




 そして模擬戦が始まり、次は先程チャチャを入れてきた彼の出番です。


「エマちゃ~ん、サリーちゃ~ん、あとそこのお嬢ちゃんも俺のカッコいいところ見ててね~」


 はっきり言ってチャラい、そして弱い。


 剣の動きは乱れまくりだし、足さばきもぎこちない。

 入学して1ヶ月、まだまだ始まったばかりとは言え、騎士課程の生徒って、それなりに鍛えた奴が入ってくるものではないのか? 


 他の生徒の模擬戦を見ても、何人かは見所のある方もいますが、全体的にまだまだといった様子です。

 エマやサリーと戦った男なんか、相手の動き見ないでおっぱいばかり見てるからさっさとノックアウトされてるし、何だかなぁ~って感じです。


 お父様が私じゃ相手にならないと言ったのも分かる気がする。




「お嬢ちゃん、俺の戦いどうだった~。結構様になってるでしょ」


 さっきのチャチャ男ならぬチャラ男が声をかけてきました。その自信は一体どこから来ているのかと呆れてしまいます。


「そうですね。頑張ってはいると思いますが、剣先がふらついてますし、打ち合うときの足の踏ん張りも利いてません。まだまだ基礎鍛錬不足かと思います」

「はぁ?」


 あれ? 私、何かマズいこと言っちゃいましたか?

お読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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