【閑話】幼女、お姫様扱いされる
幼少期のお話です。
子どもらしさ全開で漢字の使用が少ないので、読みにくいところはご勘弁ください。
〈キャサリン6歳の夏〉
きょうはアリスしゃまのごかぞくがあそびにくる日です。
アリスしゃまとさいごに会ったのは春なので、3か月ぶりです。
「ケイト~」
「アリスしゃま~」
アリスしゃまはあいかわらずキレイです。大人になったらきっと……あれよ……そう! 「けいこくのびじょ」とよばれる女になりますわ。
けいこくのびじょってなんですか? とお父さまに聞いたら、王さまがメロメロになっちゃって、そのせいで国がほろびちゃうかもしれないくらいのびじんさんのことだよ。とおしえてくれました。
アリスしゃまは国をほろぼすようなわるい女にはなりません!っておこったんだけど、お父さまは「それくらいキレイだってほめてるんだよ」といいます。
ことばってむずかしいですわ。「びじんすぎるじょせいきし」くらい分かりやすい方がいいとおもうんですの。
「ケイト」
「オリュ兄さま!」
アリスしゃまとひさしぶりのたいめんにはしゃいでいた私に、オリュ兄さまが近づいてきたので、思わずだきついてしまいました。
お母さまは「あらあらはしたない」とすこしおこっていますが、ラザフォードのおじさまとおばさまはニコニコしているし、オリュ兄さまのあたまナデナデが気もちいいので、あとでおこられてもかまいません。3か月たって足りなくなったオリュ兄さませいぶんをほきゅうしますわ。
たたかいにだいじなのは「ほきゅう」だとお父さまも言ってましたしね。今ならモンスターにも勝てる気がしますわ。
「オリュ兄さま、お会いしたかったでしゅ~」
「ぼくもケイトに会えてうれしいよ」
まんめんのえみをうかべるオリュ兄さま。また「いけめん」レベルが上がってましゅ。はわわ~
「エド、長旅お疲れ。立ち話もなんだから、ひとまずは旅の疲れを癒してくれ」
「すまんなマルーフ、また世話になるぞ」
お父さまとラザフォードのおじさまはむかしからのお友だちです。
おじさまをひとことで言うなら「いけおじ」です。オリュ兄さまもしょうらいはあんなシブくてだんでぃーな大人になるのでしょうか。
クンクン、オリュ兄さまからあま~い香りがしますわ。はわわ~
「ケイト、嬉しいのは分かるが、皆様長旅でお疲れだ。早く邸にご案内しなさい」
あまりにじゃれついているせいか、お父さまにたしなめられてしまいました。
オホホホホ、じぶんのよくぼうばかりゆうせんしてはいけませんわね。
アリスしゃまのご家族は2しゅうかんほどこちらにたいざいします。そのあいだにオリュ兄さませいぶんのほきゅうはしっかりさせてもらいますわ。
◆
それから数日、みなさまのんびりとすごして……いません。
お父さまとおじさまはじかんがあれば、こくさいじょうせいとかきしだんのお話とか、むずかしい話をしています。
ウチの兄さまたちはアリスしゃまのいちばん上のお兄さまと年がちかいので、まいにちくんれんしてます。
なんだかいつもとかわらないけどいいの? と思いますが、おじさまはお父さまとちょくせつ話すこともあまりできないので、いいきかいだとおっしゃいますし、アリスしゃまのお兄さまも、年のちかいウチの兄たちとくんれんするのが楽しいんだよ。とオリュ兄さまがおしえてくれます。
私もアリスしゃまやオリュ兄さまとあそべるので楽しいからいいか。
そんなある日、お父さまたちが狩りに行くことになり、私とアリスしゃまとオリュ兄さまはおるすばんです。
「じゃあ何して遊ぼうか?」
「おひめさまごっこ!」
オリュ兄さまの声にアリスしゃまがこたえます。
「分かった。誰がどの役をするの」
「お兄さまは王子さま、ケイトがおひめさま、私はあくやくれいじょう!」
「アリスしゃま、あくやくれいじょう……ってなんですの?」
オリュ兄さまによると、「れんあいしょうせつ」という、おひめさまがあくやくれいじょうにイジメられるのを、王子さまがたすけるお話が、みやこではやっているそうで、子どもたちもそれをマネて、おひめさまごっこというあそびをしているそうです。
バシャーン!(水をかけるフリ)
「あらあら、水もしたたるいい女になったじゃない。アナタにはそのすがたがおにあいね」
「アリスしゃまひどい、なんでこんなことをなさるのですか」
「おだまり! アナタみたいな『うすぎたないドブネズミ』が王子さまのちょうあいをえているなんて、おもい上がるからいけないのよ。みのほどをわきまえなさい!」
「そんな……人をしゅきになるのはそんなにわるいことなんですか!」
「まだ分からないの? アナタみたいなみぶんのひくい女がおきさきになれるわけがないでしょう。王子さまにもてあそばれているだけよ」
アリスしゃまにこう言ってと言われておひめさまをしていますが、おひめさまってこんなにイジメられるものなの?
そしてあくやくれいじょうがいたについています。
けいこくのびじょあらため、しんのあくやくれいじょうとおよびしようかしら。
「何をしているんだアリス!」
「オリヴァーさま!」
王子さまとうじょうです。オリュ兄さまがキラキラしてます。
「ああ、私のかわいいキャサリン。こんなにひどい目にあわされて、ぼくが来たからにはもう大丈夫だからね」
「オリュさま……」
「キィ~~~なんですの、なんですのー! そんなドブネズミより私の方がずっと、ずーっとうつくしいのに!」
「誰が美しいって? しっとにくるって人をイジメるような女をぼくが好きになるとでも思ったのか?」
オリュ兄さま、はくしんのえんぎです。
「君はキャサリンをドブネズミと言うが、心までくさりきった君の方がよほどドブネズミという名にふさわしい。いや、それではドブネズミにも失礼なくらいだ」
「キィ~~~なんですの、なんですのー!」
「二度とキャサリンに近づくな、これは王子としてのめいれいだ。守らねばそのいのち無いものと思え! えいへい、この者をれんこうしろ!」
「あ~れ~おゆるしを~(退場するフリ)」
なんですのこのちゃばん。さんもんしばいと言うやつですか?
「ああ、私の愛しいキャサリン。ケガはなかったかい。」
「オリュさま、だいじょうぶですわ」
「良かった。君に何かあれば、ぼくは生きていくいみを失ってしまうところだったよ」
「オリュさまいけません。私とアナタではみぶんが違いすぎましゅ。これいじょういっしょにいてはいけません」
まだつづくの? アリスしゃまは「ここからがいちばんだいじなのよ!」って、はないきあらいし、オリュ兄さまははくしんのえんぎがつづくしで、とめられませんわ。
「キャサリン、ぼくは君のことを愛してる。愛してるなんてものじゃない。君がちがう誰かのものになるくらいなら、君をころしてぼくも死ぬ」
そう言うとオリュ兄さまは私をギュッと抱きしめます。
ひぇー! えんぎにしてもやりすぎですわ! はわわ~
「キャサリンはぼくのことキライかい?」
はわわ~ そんな目で見ないでー!
「す、好きです。大好きです」
えんぎではありません。ほんきです。
「うれしいよキャサリン。もう二度と君の事をはなさないからね」
(はわわ~ 落ち着けキャサリン、これはえんぎ、えんぎなのよ!)
そのごも、いろいろなしちゅえーしょんでおひめさまをやらされました。
とちゅうでアリスしゃまとやくわりをかわりましょうと言ったのですが、「今日はケイトがおひめさまの日なの!」と、よく分からないりくつで、なんどもオリュ兄さまのあまいあいのささやきをきかされることになりました。
あたまに血がのぼってフラフラです。
それからもおかえりになるまでのあいだ、オリュ兄さまが、まいにちのように「ぼくのおひめさま」とあいをささやくので、いちど、ほんきにしてしまいますよと言ったのですが、「ほんきにしてくれていいんだよ」とからかわれました。
ことばだけで人ってころせるんですね。
◆
「なあアリス」
「なんですかお兄さま」
「さすがにあれはやり過ぎではなかったか?」
「そんなことありませんわ。ケイトはちょうがつく『どんかん』ですから、あれくらい言ってもかまいませんわ」
王都へ帰る馬車の中、オリヴァーとアリスの会話。
オリヴァーが愛を囁き続けたのは、アリスの仕込みであったのだ。
「てれているかお、かわいかったでしょ」
「まあ、ケイトみたいなかわいい子にああやって見てくれるのは男としてはうれしいな」
「これでケイトはお兄さまにはやく会いたくて、もんもんとします。つぎに会ったときは、もっとかわいがるようになさいませ」
「ずいぶんと推すねえ」
アリスはオリヴァーがキャサリンのことを大好きなのを見抜いていたので、仲を深めるため、兄にもっと積極的に行けと発破をかけていたのだ。
「ケイトがぼくのお姫様か……なってくれるかな」
「なってくれるではありません! お兄さまがしてあげるのです! かのじょとお兄さまはおにあいです。私もしょうらい『おねえさま』とよんであげられる女ですわ」
兄妹の悪だくみはこの後も会う度にずっと続き、そのたびにキャサリンは「はわわ~」となるのだが、アリスはまだ気付いていない。
数年後、キャサリンを「お義姉様」と呼ぶことに違和感を覚えることを…… 身長的に……
お読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




