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少女、捗る

甘い展開書くの難しいっす…

カカオ80%くらいの甘さだと思ってください。

 学園の帰り、ロニーに絡まれていた私を助けてくれたオリヴァー様のお申し出により、馬車で邸まで送っていただいております。


(はわ、オリヴァー様がこんな目の前におりましゅ……)


「初日から大変だったね。何があったの?」

 

 優しく問いかける彼に、ロニーが推参してきたこと、断ったときの一悶着、それに端を発した帰りの壁ドンなどを話すと、彼の表情が急に険しくなります。


「それは……随分と失礼な奴だね」

「アリス様もアボット家とは繋がりは無いと仰っていたので、どういうことかと思っておりましたの。でも、オリヴァー様は彼のことをご存知だったようですが?」

「アボット卿には去年お世話になったからね」


 学園では2年生の時に、実務研修を行います。

 淑女課程では講師役となる方が主催するお茶会や夜会に招待者として招かれたり、逆にこちらが主催者として会を開く段取りをしたりします。

 そして、文官課程では国の機関で実務を行うと言う形で研修を受けます。


 オリヴァー様は宰相府で研修を受け、その際の指導役がアボット卿だったそうで、面識があるとのこと。


「そういえば、オリヴァー様は何故文官課程にお進みになったのですか?」

「文官というより、僕の場合は事務仕事をする武官ということになるのかな」


 オリヴァー様の話によると、騎士団所属でも補給の手配とか内務との調整みたいなことをする頭脳集団は必要だそうなんです。

 

 家族が脳筋ばっかりだったので失念してました。筋肉自慢ばっかり集まっても後ろの支援がなければ戦い続けることは出来ません。言われて確かに第二騎士団にもそういう方がいたのを思い出しました。

 

 もっとも皆様大体筋骨隆々で、オリヴァー様みたいな王子様タイプの方はいなかったので、結び付かなかったわ。


 オリヴァー様はゆくゆくは騎士団で勤務するつもりなのですが、研修はたまたま宰相府だっただけということらしいです。


「事務仕事をする武官は必要だが、剣を振るう文官は要らないからねえ」


 武官も必要な数は揃えないといけませんが、国を富ませるためにはやはり文官は必要不可欠。

 職種に拘らなければ、武官より文官の方が食い扶持には困らない。


 武官を選んだ時点で、文官より狭き門になるのは決まっているのです。

 なので目端の利く騎士課程の方は、騎士になるための鍛錬もそうですが、後々の仕官先の選択肢を増やすための活動も怠らないそうです。


「だからと言って初日から推参するとは……行動的というか、無謀というか……」

「彼の意図が分かりませんので、アリス様の指示でエマとサリーに調べさせることになりましたの」

「そこは2人に任せれば大丈夫かな。それよりも許せないのは……壁ドンだな」


 え? 何で壁ドンされたことをそんなに怒ってるの?


「不用心すぎるよ。僕だってケイトにしたこと無いのに」

「オリヴァー様?」

「君は可愛いんだから、隙を作れば言い寄ってくる男が絶対に出てくる。あまり僕を心配させないでおくれ」


(はわわ! それは妹的可愛さの事ですわよね)


 でも、こんな女に言い寄ってくる男なんて変な性癖持ちしか来ないですわよ。


「それは無いと思います。私など年頃の男性には見向きもされませんわ」

「だが実際に壁ドンされたじゃないか」

「あれは成り行きというか、不可抗力というか……」

「相手がそれで君の魅力に気付いてしまうかもしれない」

「大げさですわ」

「大げさなものか。ケイトが可愛いのは小さい頃からずっと見ている僕が言うんだ。間違いない」


(はわわわ、小さい頃からずっと見ているって、成長を見ていたってことですわよね。勘違いしてはダメよ私!)


 思いがけずオリヴァーから可愛いと連呼されたキャサリンは耳まで真っ赤で、彼と目を合わせることもできない。


「ケイト……さっきからあまり目を合わせてくれないけど、何か気分を悪くするようなこと言っちゃったかな?」


(はわわわわ、血圧的な意味で気分を悪くするような言葉だらけですわ!)


「えーと、すみません。久し振りにオリヴァー様のお顔を間近で拝見したら恥ずかしくて……」

「恥ずかしい? 昔から見てるから見飽きただろう」

「いえ、最近お会いする機会が少なかったので、久し振りにお会いしたら、オリヴァー様凄く格好良くなったなあって…… あ、いえ! 昔は格好良く無かったわけではありませんよ!」

「オリヴァー様か……昔はオリュ兄様って呼んでくれてたのにな」

「嫌ですわ、小さい頃の話ではありませんか」


(はわわわわわ、黒歴史~! 抉る~!)


 小さい頃、キャサリンはオリヴァーを呼ぶとき、発音が出来ずに「おりゅばー」と呼んでいた。

 父や兄は失礼だからと発音を直そうとしたが、オリヴァー本人が「可愛いからそのままでいいですよ」と言うので、「オリュ兄様」と呼ぶのが定着。


 そのうち舌っ足らずな発音も直り、オリュ兄様呼びは無くなり、最近はオリヴァーが学業で忙しいこともあって、会う機会自体も少なくなったので「オリュ兄様」と呼ばれた昔を懐かしんでいるのかもしれない。


 と、キャサリンは考えたが、自身の黒歴史なので余計に恥ずかしくなって顔も上げられなくなってしまった。


「オリヴァー様は悪い方ですわ。さっきから可愛い可愛いって……そう言って何人ものご令嬢を弄んでおられるのですね」

「確かに女性に優しくは紳士の努めだが、本当に美しいご令嬢以外にはこんな美辞麗句は言った覚えはないよ」

「嘘ですわ」

「嘘じゃないさ。仮に僕が色んな女性を誉めていたとしても、ケイトを愛しいと思う気持ちは偽り無いよ」


(はわわわわわわ、可愛いが愛しいにグレードアップしましたわ。落ち着きなさい私、その愛しいはただの兄妹愛よ)


「これ以上はご勘弁ください。恥ずかしくて死にそうです」

「恥ずかしがるケイトも可愛いな~。でも死んでしまわれては私の生きる糧が無くなってしまうから、これくらいにしておこうか」


(それ! サラッとそう言う事が出来ちゃうそれ! 女殺し!)


「ケイトは可愛い、これは事実。そして不用心なのも事実。変な男には近づいて欲しくないな」

「大丈夫ですわ。いざというときはナニをナニする……オホン、いざというときは力で制圧しますわ」

「でも、学園内ではそれは披露しないことにしているんでしょ?」

「その時はオリヴァー様が助けに来てくれますでしょ」

「善処しましょう、お姫様」


 室内が甘い空気に包まれる中、馬車はリングリッド邸に到着。

 行きと同様、オリヴァーが降車をエスコートするが、さすがにこれは事前に予測できたので、キャサリンは冷静にその手を取る。


「お送り頂きありがとうございます」

「これくらい、お安い御用ですよ」


 馬車へ戻るオリヴァーを見送るキャサリン。するとふいに彼がこちらへ戻ってきます。


「ひとつ忘れていた」


 そう言うと、邸の門壁を背にするキャサリンに向かい腕を伸ばす。


 壁ドン(本日2回目)


「オ、オリヴァー様……」

「これでアイツにされた記憶なんか塗りつぶしてあげるよ」


 そして、もう片方の手でキャサリンの髪に触れ、そっとキスをする。


(はわわわわわわわー! ダメよケイト! 勘違いしてはダメよ!)


「おやすみ僕のお姫様、また明日ね」


 オリヴァーは微笑みながら颯爽と去っていった。


(キスされた……お姫様って言われた……)


 ケヴィン兄様といい、オリヴァー様といい、都会の水は男をああいう風に変えてしまう魔力があるのですか!(※個人の主観です)




 その晩、オリヴァーはもしかして自分に気があるのか? いやいや、妹相手にからかっているだけよ! と心の中の2人のキャサリンが激戦を繰り広げ、眠ることも出来ずに悶々としていた。


(私を見るあの目、向けられたあの言葉……)


 そして馬車の中のことを思い出した彼女の結論は……


(はわわわわわわわわわわわわー! 捗るわー!)









 次の日の朝、目の下を隈だらけにした怪しい幼女が学園の正門で捕獲されたという噂が学園内を駆け巡った。

お読みいただきありがとうございました。

次回は1話閑話を挟みます。

よろしくお願いします。

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