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山椒姫、アリスと対応を協議する

引き続き説明パート長めです

「お姉様、ジョゼフィーヌ様のこと、いかがなさるおつもりですか」

「根底に国家間の問題がありますから、そう簡単にはいかないでしょうね」


 レセプションでの諍いを鎮め、一方の当事者であるブロワーズの王女ジョゼフィーヌ様と初めて会話をして後のこと、グリゼルダ様からこの後どう対処するのかと問われます。




「アリス様にご相談なさいますか?」

「うーん、報告はいたしますが、表立っての力添えは難しいでしょうね」

「そんな。アリス様は困った方を見捨てるような方ではありませんでしょう」


 提案をあっさりと否定されたヘレンは納得出来ないようですが、グリゼルダ様が「立場上難しいかと」と私が否定した理由を補足してくれます。


「今は婚約者というお立場ですが、アリス様は実質王家に連なる御方と目されております。その方が一方に肩入れしては逆の立場にいる方々からすれば、『我が国を蔑ろにした!』と思われても不思議ではありません。ただでさえ各国の思惑が絡んできますから、あからさまにジョゼ様を排除する動きが無い限り、基本的には個人間での解決しか方法は無いでしょう」

「たしかに……その通りですね。私は貴族ではありませんが、商売をしていてもそういったしがらみや利権、人間関係などがとても面倒なことがありますもの。グリゼルダ様のお話で納得しました」


 そういうわけでジョゼ様と他の方の間にある壁を取り払うのは、個人的な友誼によるものでなくてはいけません。


「でもそうなると、ケイト様だって一方に肩入れというのはマズいのでは?」

「無論私も爵位を頂いておりますので、国の益にならぬ行動は慎まねばなりませんが、あくまでも生徒会の役員として生徒間の交流に支障が無いよう努めるだけならば、いくらでも言い訳は立ちましょう」


 今のところ分かっているのはブロワーズ国の外交姿勢に起因して他国の方がジョゼ様を快く思っていないという1点のみ。彼女が何を思いこの国にやって来たのか、その理由如何によって我が国が不利益を被るならば、彼女の方を窘めることも念頭に置かなくてはいけませんが、親善に努めるのであればここで会ったのも何かの縁です。きっかけがあれば皆様とも仲良くなっていただきたいと願います。



 ◆



「……という次第です」

「想定はしていたけど、ブロワーズへの反感はどうしても拭えないわよね」


 後日、アリス様に事の顛末をお知らせいたしました。やはり現状の情勢を見るにこうなる可能性は予測しておられたようです。


「国家間の問題はともかく、個人的な友誼を結ぶことで少しでも関係改善の糸口になるといいのですが。ジョゼ様が我が国に来たのもそれが目的でしょうし」

「それがそう簡単な話でもないのよね」

「アリス様がそう仰ると言うことは裏がありそうですね」

「ウチでもちょっと前まであったじゃない。貴族間での考えの相違が」

「派閥争い……ですか」




 王権派と貴族派の権力闘争。平時であればいがみ合うことはあれど大きな問題とはなりませんでしたが、ベルニスタの工作活動により問題が表面化し、一方の主だった面々が政治の表舞台から去っていったのは記憶に新しい話。


「同じようなことがブロワーズでも?」

「守旧派と革新派という区分けになるかしらね」


 かつての大国の誇りを忘れられず、従来の姿勢を継続すべきという守旧派と、周辺国と強調して新しき時代を拓くべきと主張する革新派。


 守旧派は今までのスタンスを急に改めては他国に足元を見られるという懸念があるでしょうが、その姿勢が故に既得権益を手放したくない旧勢力と見られてしまう。革新派はこのまま何も手を打たなければジリ貧に陥るからこそ改革が必要だと言うものの、それは権力に食い込んで自身が益を享受したいからであろうと見られる。どちらも国の行く末を憂いている部分があり、どちらの言い分にも聞くべき点はあるでしょうが、他国から見れば醜い権力争いでしかありません。一昨年の我が国の出来事もそのように見られていたはず。


 幸いにして我が国は良き方向へと歩み出しましたが、ブロワーズは今この時点で、一歩間違えば亡国への道を進みかねない重要な局面に立たされているわけです。 




「ジョゼ様は留学に来られたと言うことは、革新派に近いお考えなのですよね?」

「いいえ、彼女はどちらの派閥にも属していない。いや、どちらからも必要とされていないと言った方が正しいわね」

「それは彼女の出自に起因するものと見てよろしいのでしょうね」

「そういうことになるかしらね」


 ジョゼ様は現国王がメイドをお手つきにして生まれた方。その出自だけはリリアと似ています。


 もっとも、生まれたことすら無かったことにされたリリアとは違い王宮で養育はされたようですが、後ろ盾を持たぬ王女が軽んじられたのであろうことは想像に難くありません。衣食住に不自由しないとはいえ、周囲から期待も持たれず、顧みられることもなく寂しい暮らしであったろうとアリス様はジョゼ様を慮ります。


「その方が親善目的の留学生に選ばれた理由は……」

「妥協の産物かしらね……」


 続々と各国が我が国と親睦を深める動きを見せ、ブロワーズとしても焦りが出てきたのでしょう。革新派はこの機にと然るべき王族を留学生として派遣すべしと提案するも、足元を見られたくない守旧派はこれを国の威厳を損ねる動きと非難。


 とはいえ手をこまねいてばかりもいられないし、この件をスルーして状況が悪化すれば、革新派からの突き上げによって政情は益々混迷するのは明白なので、白羽の矢が立ったのがジョゼ様。


 特段の後ろ盾もなく、王族としての序列は最下位の彼女であれば、仲良くするメリットも無いから他国から見向きもされないはずと守旧派は睨んでいる。


 ただ、それでも王族の一員がやって来たとなれば一応の面目は立つし、それで親善が叶わなければ他国が狭量ゆえ叶わなかったのだという逃げも打てるのです。


 革新派からしたら何の力も持たぬ第六王女では力不足と言いたいところですが、拒否して留学自体がご破算になっても困るので渋々受け入れたというわけです。


「ジョゼ様からしたらいい迷惑ですね」

「守旧派からはあまり目立つ動きをするなと牽制され、革新派からは身を粉にして働けと発破をかけられ、今まで何の期待も持たれなかった彼女にしたら困惑しきりでしょうね」


 とても中途半端な対応、場当たり的とでも言いましょうか。そんな大人達の思惑に振り回され、彼女の動向は逐一本国の両派閥に伝わることでしょう。後々どちらに転んでも一波乱ありそうですね。


「私としては個人的に友誼を結ぶ方向で動ければと思いますが、国としてのお考えはいかがなのでしょうか?」


 アリス様に聞きたかった本題がこれ。口で何を言おうとも、根底にはそこが一番大事であります。国の指針に反する動きはさすがに難しいので。


「個人的な感情を抜きにすれば、対ベルニスタのためにもブロワーズはこちらに引き込みたいわね。留学を受けたのもそれが叶うなら万々歳だからでしょうし」

「ただ、他の国の方がどう思うか……ですね」

「さすがケイトね、そういうこと。他国が納得しない中で無理やり組み込んでも瓦解するのは明らかだから」

「難しいな〜」

「最終的には陛下やお父様達がお決めになることだけど、私達がするのはあくまでも()()()()()交友だから」


 国同士の関わりはありますが、学生同士の友好は本人達次第と、やり方は我々にお任せになるようです。


「それはまた……面倒臭い、いや……難しいお題を頂戴したものです」

「お父様も宰相閣下も私達を買ってくれているみたいね」


 ちょっと評価が高止まりな気もしますが……


「ケイトが言うとおり私が表立って肩入れは出来ないから、実務に関しては任せることになるわ。必要に応じてこちらから指示は出すから、よろしく頼むわよ」


 どうやら今年は体より頭を使う一年になりそうです。


「大変だろうけど、私もお父様達と同様にケイトの力を評価してるわ。難しいことがあればすぐに相談すること。オリヴァー兄様なら貴女が頼れば喜んで手伝うわよ」


 そうですね。政治的な話なら脳筋の家族よりも、オリヴァーに聞くのが一番ですね。とりあえずギャレット邸に寄ってみましょう。


 しかし……これは護衛騎士の仕事なのでしょうか。頭だけを使う仕事は違うと思うのですが。


「違うわね。学園副会長としての仕事よ」


 あー、左様ですか……私も仕える方を間違えたのかな……!? ヘレンと違って声には出さないけどね。

お読みいただきありがとうございました。

次回は11/6(土)投稿です。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 騎士同士なら拳なり剣なりで語り合えば済む話なのにねぇ お嬢様同士だと裁縫とかで語り合うのか?
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