やみをほる -昏き伝説を刻む-
心の内へ深く深く潜る。
そうして、魂の奥底に潜んでいる闇色の塊を掘り出す。
血と汚ならしい記憶を掻き分けると、
新たな赤黒い血やどす食い怨嗟が滲んでくる。
鋭い、胸を抉る痛みに囚われず、過去の傷を押し広げて、
血を流し続けている塊をもぎ取って、
闇を照らすぼんやりとした灯りの下に晒す。
掘り出した闇は、手の上で、時おり軋むような呻きを上げ、
闇の塊を掘り出す時に、血や汚濁にまみれた手の中で、
その塊は、真っ黒なその身をよじる。
わたしは、ほの暗い灯りに照らされる透明な刃物を取り出して、押さえつけた闇へと刃を立てて抉り削る。
闇は掠れた耳障りな悲鳴をあげて、汚くよごれたわたしの手から逃げ出そうとし、
わたしは闇の塊をしっかりと押さえ直して、さらに闇を刃で刻み続ける。
闇を削る不快な感触と、悲鳴と、
闇を彫る厭な音が響く中で、
わたしは薄い笑みを浮かべ、
闇色の塊を彫り続ける。
不快な雑音と共に彫り上げた闇は、果たして何になるのだろう。
怨嗟の如き、昏き恨みを撒き散らすものか、
復讐を望む暗い輝きを放つ、鋭き意志を持つものか。
それとも、怨念に塗れた濁る眼を、わたしへと向けるものか…。
いずれにせよ、この闇はやがて皆の知るものとなるだろう。
わたしは笑みを浮かべながら、悲鳴を上げ身じろぐ闇を彫り続ける。
透明な刃だけが、闇の中でほの暗い輝きを放つ。