8 コンテストの最終選考に進めるようです
リーネ視点です♪
いつものようにリーネとミネアがバックヤードで昼食をとっていると扉をノックする音が聞こえ、リーネは慌てて卵焼きをゴクンと飲み込みドアへ向かった。
(そういえば、お昼にノックされることって今までなかったなぁ。何かあったのかしら?)
そんなことを思いながらドアを開けると、いつもより緊張した面持ちを浮かべた初老の女性、販売員のカレンが立っていた。
そして、リーネに目配せをしながらミネアに向かって声をかけた。
「ミネアお嬢様、旦那様がいらっしゃいました。応接室でお待ちです。」
それを聞いたミネアは「しまった!」という表情を一瞬浮かべたものの、平静を装いすぐに応接室まで行くことを伝えた。
応接室はパティスリーの2階に設けられた部屋で、通常は取引先との商談や上客の来店時に使用している。
「多分、お父様がコンテストの連絡を受け取ってしまったんだわ。リーネも一緒に来てくれる?」
「はい・・・。」
(旦那様って、ミネアさんのお父様のことだったのね。)
リーネは少し緊張しながらミネアの後をついて応接室へ向かった。
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ミネアが応接室のドアをノックすると中から少し怒気をはらんだような声で応答があった。
「ミネアか?あまり時間がない。早く入れ。」
ミネアとリーネはその声色に思わずひるみながらも覚悟を決めて部屋に入った。
中には仕立ての良いスーツに身を包んだ顔立ちの整った男性が立っていた。
「ミネア、これはいったい何なんだ?」
そう言う男性の手元には一通の手紙が握られていた。
そしてその手紙に押された金色の封蝋を見て、ミネアとリーネはそれが王家からのものであることを悟った。
「お父様、それは王家主催のケーキコンテストの結果通知ではございませんか?」
「やはりお前は予想外のことをしてくれるな。最終選考に残ったから王宮まで来るようにと書いてあったぞ。何故事前に知らせないのだ!?」
「申し訳ありません。・・・ですが、これは王家の皆様にグローリオーザ家を知っていただく良い機会ですわ。ぜひ伺いましょう。」
ミネアは最終選考に残ったとの知らせに思わず顔をほころばせながら答えた。
一方、リーネは二人のやり取りをハラハラしながら聞いていた。
(ミネアさんはお父様の威圧的な態度に動じないだけでなく、ご自身が意図するように事を運ぼうとするなんてさすがだわ・・・。)
そんなリーネの気持ちなどどこ吹く風でミネアはどんどん話を進めていってしまう。
「では、わたくしとリーネで最終選考に参加いたしますから、お父様には後方支援をお願いいたしますわ。」
「・・・王家からの招集では辞退するわけにもいかないし仕方ないな。だが、こういうことは必ず事前に話を通しておいてくれ。」
「お父様!ありがとうございます!!次回からは必ずそのようにいたします!!!」
ミネアは父と同じ色の瞳をキラキラと輝かせながら喜色満面で父に抱きついた。
「こら・・・やめんか。では護衛をつけるから明日その娘と一緒に王都の邸宅へ向かうように。そちらはリーネといったか?ミネアが無茶をしないように頼んだぞ。」
「は、はい。」
リーネはミネアの父から声をかけられて返事をしたときに思わず目が合ってしまい、あることに気がついた。
(ミネアさんのお父様、ひょっとしなくてもグローリオーザ伯爵家のご当主様よね?ってことはミネアさんは伯爵令嬢ってこと!?でもって、私はミネアさんと2人でコンテストの最終選考で王宮に行くのよね???はぁぁぁ、展開が早すぎてとてもついていけないよぉ・・・。)
そんなリーネの気持ちなど知らずにミネアは大喜びで明日の支度を始めるのだった。
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