7 第三王子は満足げなようです
第三王子アンドリュー視点です♪
「あーあ、なんで僕がこんなのに参加しなきゃいけないんだろ。」
第三王子のアンドリューは自室の机に置かれた書類を眺めて、大きなため息をついた。
そこには、王家主催のケーキコンテストの審査概要が書いてある。
そしてこのコンテストは自分の母である王妃が主催しているため、審査を断るという選択肢はない。
・・・というか断ったところで、「アンドリュー、たまには息抜きも大事よ。」と言いくるめられて強制的に参加させられるのだ。
(まあ、今に始まったことじゃないけど・・・。)
アンドリューは仕方ないと半ばあきらめながらも、できることなら現在彼の心の大半を占めている別の事柄に時間を割きたいと考えてしまう。
それは、サーシェでの魔獣討伐のこと、そして討伐時に自分をかばった案内役のことだった。
(あの案内役には助けられたな・・・。)
サーシェは地方都市でありながら港を擁しているためか人の往来が多くかなりにぎやかな場所である。近年、そのサーシェの北部にある山へと続く森で、魔獣の目撃報告が多数挙がるようになってきていた。
その中にはかなりランクの高い魔獣が含まれていたことから王宮へ討伐依頼が出され、討伐隊である第十士団が何度かサーシェを訪れていた。
しかし、魔獣の出没が予想以上に多いことや、ランクの高い魔獣は山奥になわばりを持つものが多く、追跡自体が難航し討伐は困難を極めていた。
そんな中、ある人物に道案内を頼んだところ、魔獣の出没が通常に比べて格段に少なく、戦力を温存したままランクの高い魔獣と交戦することができたため、非常に効率よく討伐ができたという報告が上がってきた。しかも、その人物に頼んだときは常に同じ様な状況だったという。
それならば実際に自分の眼で確認してやろう、と第三王子アンドリュー自らが騎士団とともにその案内役の力量を測るためサーシェまで遠征したのだった。
するとやはり報告どおりに、まるで魔獣がこちらを避けているかのごとく、魔獣と遭遇することが少なかったのである。
(確かに、こんなに戦闘の少ない討伐は珍しいな。)
そう思っていたため、アンドリューは少し油断していた。
背後から突然、巨大なモグラのような魔獣が地面から姿を現すとともに、大きなかぎ爪を振りかざし襲ってきたのだった。
それにいち早く案内役が気づき、アンドリューをかばいながら魔獣に斬りこみ、彼の危機を救ったのだ。
その案内役こそがライアンだった。
そしてアンドリューは自分をかばったことを口実として、ライアンにこのまま王都まで同行して騎士団試験を受けるように命じたのだった。
また王都に帰還してからは、ライアンが道案内すると何故魔獣の出没率が低下するのかを突き止めようと、王宮専属の魔導士にライアンを調べるよう指示していた。
しばらくして魔導士から報告書が届き、その報告内容を読んだアンドリューは、有無を言わさずライアンをサーシェから王都に連れ帰ったこと、そして騎士団に入団させた自分の判断は正しかったと満足したのだった。
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