1 帰ってきたらなぜか失恋したようです!?
初投稿です!
不慣れな点が多々あるかと思いますが、あたたかい目で見守っていただけると嬉しいです♪
「どうして・・・。」
出張から久しぶりに自宅に帰ってきたら、隣室がもぬけの殻になっていた。
あったはずの表札は取り払われ、しんと静まり返って人の気配はない。
思いもよらない事態にリーネは思わず声を震わせて呟いた。
隣室に住んでいたのは、一人の青年。
青年の名はライアンといい、横にまっすぐ伸びた眉毛の下にはオリーブ色の瞳が輝き、日焼けしてやや赤みがかった肌とショートウルフにカットされたダークブラウンの髪を持つ、高身長で筋肉質ながらすらりとした体格の男性だ。リーネよりもひとつ年上で、魔獣駆除を得意とする便利屋で働いていた。
一方、リーネはマロンベージュの長いウエーブヘアにエメラルド色の大きな瞳と艶やかなピンク色の唇、そしてマシュマロのように色白で小柄なかわいらしい女性だが、実年齢よりも幼く見える顔立ちのせいか、なんとなく頼りなさげに見える。
そんなリーネを隣人のライアンは何かと気にかけ、リーネもライアンを頼りがいのある兄のように思っていた。
・・・そう、この出張の前までは。
リーネは出張でライアンとしばらく会えなくなって初めて、自分の心の中でライアンの存在がとても大きくなっていることに気づき、ようやくライアンを兄のような存在としてではなく恋愛対象として慕っているという自分の気持ちを自覚したのだった。
早くライアンに会いたいという思いを募らせながら仕事をこなしようやく帰ってこれたというのに、留守の間にライアンがいなくなってしまったという事実。それは自分の恋心を自覚したリーネに対して突きつけられたものとして十分なほど残酷に感じられるものであった。
なによりもライアンが自分に一言も告げずにいなくなってしまったことに、リーネはショックを隠し切れなかった。
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リーネはネーヴェ王国の地方都市サーシェにある全寮制の製菓学校を15歳で卒業し、その後サーシェのパティスリー『メゾン・ド・グローリア』で、パティシエとして3年ほど働いている。
職場は従業員が全部で4人と少人数であるが、人間関係は良好で特に3歳年上のシェフパティシエのミネアがリーネを非常にかわいがってくれている。
今回の出張は、リーネが将来王都で働きたいという夢を知ったミネアの厚意で、2週間にわたって王都にある店舗で実地研修を行うという内容だった。
リーネが出張のことをライアンに話すと、彼はそれを自分のことのように喜んでくれ、出張に出かけたその日の朝もリーネを見送ってくれた。
だから、ライアンからは少なくとも嫌われてはいなかったはずだ。
それなのに、帰ってきたら自分には一言も告げずにいなくなっているとは。
リーネはライアンが自分を気にかけてくれていると思っていたのは完全に自惚れであったこと、そしてどうやら自分は失恋してしまったのではないかと思い至った。
リーネの大きなエメラルド色の瞳から、とめどなく涙が溢れ出た。
読んでいただきありがとうございました!