二十七話 『夜、彼は瞬く星の下に』
高校入学を一か月後に控えた誠也は憤りを覚えた。憤慨した。その瞬間の記憶だけ抜け、まるで心に眠っていた悪魔が支配し、言葉という力を暴発させたような。けれどそれを言ってのけたのは他ならぬ自分であると、冷静になり客観的に見ればすぐにわかる。
父は普段と変わらず努めて笑みを浮かべた。母は優しく微笑みながらも涙を堪えていた。
それが最後に交わした言葉となり、最後に見た表情となり。誠也を後悔と絶望の淵に立たせた。
そんな事を言った自分が許せない。父も、母も大人だ。だから子どもの言ったこと、と赦してくれる。けれどそんな言葉もない、罪もない。だからこそそれをはらす術はない。あの日そうしたように、空に刻まれた白い飛行機雲を掴む。手繰り寄せれば帰ってくるかもしれない。そう期待を込めて。けれど届きやしない、仮に届いたとして、そこにいない。
満月が照らす夜。誠也は自殺を図った。けれど寸前でやめた。既視感があった。脳裡を掠めた映像が、誠也を正常にさせた。
――そんなことをしても何も変えられない。
そう言われた。誠也のようなちっぽけな存在が動いたところで何も変えられない、と。
誠也は洞窟のような、暗い廊下を抜け出し、街灯とベンチしかない廃れた公園に訪れていた。
こんな場所に来るなんてどうかしているのかもしれない。そう思いながらとりあえずベンチに腰を下ろした。
「この公園が好き」
そう不意に、昔母が言った言葉を口に出した。空を向き、白い街灯がジリジリと明滅し、壊れたように消えた。真っ暗になった。
焦点は空に合い、浮かぶ星が、燦燦と普段より明るく、そして視界一面に広がった。感涙しそうになる。
けれどそんな隙は無く、
「あんた、こんな時間に何してんの?」
と、コンビニ袋を揺らす、気の強そうな声がした。
――ここに居れば誰かが助けてくれる。絶対に。
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