表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

二十七話 『夜、彼は瞬く星の下に』

 高校入学を一か月後に控えた誠也は憤りを覚えた。憤慨した。その瞬間の記憶だけ抜け、まるで心に眠っていた悪魔が支配し、言葉という力を暴発させたような。けれどそれを言ってのけたのは他ならぬ自分であると、冷静になり客観的に見ればすぐにわかる。


 父は普段と変わらず努めて笑みを浮かべた。母は優しく微笑みながらも涙を堪えていた。


 それが最後に交わした言葉となり、最後に見た表情となり。誠也を後悔と絶望の淵に立たせた。


 そんな事を言った自分が許せない。父も、母も大人だ。だから子どもの言ったこと、と赦してくれる。けれどそんな言葉もない、罪もない。だからこそそれをはらす術はない。あの日そうしたように、空に刻まれた白い飛行機雲を掴む。手繰り寄せれば帰ってくるかもしれない。そう期待を込めて。けれど届きやしない、仮に届いたとして、そこにいない。


 満月が照らす夜。誠也は自殺を図った。けれど寸前でやめた。既視感があった。脳裡を掠めた映像が、誠也を正常にさせた。


 ――そんなことをしても何も変えられない。


 そう言われた。誠也のようなちっぽけな存在が動いたところで何も変えられない、と。


 誠也は洞窟のような、暗い廊下を抜け出し、街灯とベンチしかない廃れた公園に訪れていた。


 こんな場所に来るなんてどうかしているのかもしれない。そう思いながらとりあえずベンチに腰を下ろした。


「この公園が好き」


 そう不意に、昔母が言った言葉を口に出した。空を向き、白い街灯がジリジリと明滅し、壊れたように消えた。真っ暗になった。


 焦点は空に合い、浮かぶ星が、燦燦と普段より明るく、そして視界一面に広がった。感涙しそうになる。


 けれどそんな隙は無く、


「あんた、こんな時間に何してんの?」


 と、コンビニ袋を揺らす、気の強そうな声がした。


 ――ここに居れば誰かが助けてくれる。絶対に。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ