大学1年目 入学後
入学式からちょっと後のお話です。
入学式から一週間が経過した。サークル活動は決めかねている。
入学後の噂話で、文系にカワイイ4人組がいるとの噂を聞く。
でもその一人はすでに結婚してて、旦那が居るらしい。
結婚指輪してるらしく、そいつを旦那にした男許すまじ!という噂だ。
その4人組の事はよく知っている。
「和樹ー」
4人組の一人である里奈がひっついてくる。
「なーに、マウント合戦してるのさ」
「こうしないと理解してくれない奴らが多くてね」
俺の手に抱き着いてラブラブですよーアピールの里奈さん。
「里奈、当たってるよー」
「当ててんの!」
周囲をがるるるると威嚇する里奈さん。
里奈が可愛いから狙われてるんだよと言いたい。
家に帰ると東雲家の使用人、静野さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、乾井のおぼっちゃま」
御年60後半のおばあちゃんだ。幼少の頃から里奈のうちに伺うと、アメやらお菓子をくれた顔なじみである。里奈談によると料理すきで、わざわざ週2日来訪してくれるらしい。
「里奈は?」
深々とお辞儀をする静野さん。そこまで畏まる必要ないのだけどな。
「お嬢様は食材を買って帰られるそうです」
俺にとっては、里奈のうちのお手伝いお祖母ちゃんなのだけど。
静野さんにとってみれば、お嬢様の旦那様らしい。
ちなみに先進派で器用にスマホを活用している。よく里奈とレインのやりとりしてるらしく、何でも最近ポケ〇ンGOGOにハマっており、俺らの家から帰るときは、近所の公園を通って帰宅するらしい。
それから暫くすると、里奈が帰ってきた。
「ただいまー。あ、静ちゃんもいらっしゃい」
「里奈お帰り」
里奈を出迎えると、きょとんした顔をしている。
どうやら照れているようだ。
「もう2週間位経つけど、和樹のお帰りって言葉はまだ慣れないね」
屈んで靴を脱いで、落ちてきた髪をかき上げながらニコリと笑っていた。
静野さんは里奈と料理を作り、帰っていった。
2時間半の通勤だ、疲れるだろうな。
食事の歓談中。
もうそろそろ、周囲のアピール必要ないんじゃないかと話を振ってみた。
「理系にも、里奈達の話が届いてるよ。一人は結婚指輪してて、捕まえた男許すまじ!だってさ」
キッと睨みつけるようにこちらを見る里奈。
箸を置いたまま、そっと語りだす。
「甘いわ、和樹」
「何がさ」
ニコリと微笑みになる里奈は可愛いね。
「狙われてるのは、和樹よ!」
は、俺かよ?俺も箸を置いて、里奈の話を真剣に聞いてみた。
「いーいー?和樹。貴方は自己評価低過ぎよ?貴方の自己評価の倍・・・・、いえ自己評価の10倍位が世間の視線評価よ?」
えー、そんなもんかー?
姉の和葉も、妹の和沙からもメチャメチャに言われてるけど。
「高校もそうだったけど、大学生の男連中って、ガッツいてくる面倒な男か、超草食系のナヨい男しかいないの」
そんな事もないと思うけど、女性視点わからないな。
「そんな中で、私が手塩にかけたイケメン、ガッツイて来ない紳士、しかも医師の卵。トラ・・・。いいえ、野獣の前に投げられた肉同然よ」
「俺は肉なのかよ」
「最高級よ。それも超高級和牛で、カットしたばかりの血の滴る美味しい部分。野獣娘達にとってみれば、とりあえずツバ付けときたい肉よ!」
いつの間にか、野獣娘になってるし。
「しかも腕にはブランド物の時計をした金持ち。婚約プレゼント、失敗したわ」
えー、そうかー。
この時計凄い気に入ってて、つけてるんだけど。外さないとダメかな。
「俺は、里奈が選んでくれたこの時計気に入ってるんだけど。つけない方が良い?」
彼女の眉間にシワがよった。
幾分か経った後、首をふってニコリと微笑んでくれた。
「んーんー、私もつけてくれてて嬉しいよ。野獣猫が来ようが心配ないわ」
この後は話題を変えて、今日も楽しくお食事をした。
とある日。
今日は今日とて、先日のお嬢さん3人組と、俺と同期理系3人とのお食事会だ。
お食事会といっても学食の昼飯だね。
同期3人にはクレグレも説明しといた。
彼女たちは男のアピールに飽き飽きしている。理3系なのだから、こちからかアピールせず、がっつかず、紳士に対応せいと!ちなみに里奈に声かけるのは許さんとも伝えておく。
色々なお話をしつつ、終わった。
うん、男性諸君よく耐えてくれた。上から目線過ぎるが、先日の里奈の話をすると、男性諸君は一応理解してくれたもの。
そんな中で、女の子の一人が
「レイン交換しませんかー」
と声かけてきた。ありがたい。
絶対的に、こっちからレイン交換といっちゃ駄目よと押さえつけてる3人。
ここで、本性出すなよー。紳士になと、すかさずレインする。
俺以外の3人と交換が終わったようだ。
視線を交わされるが、スルーだ。里奈がいるのだからさ。
勇気ある女の子がいた。
「乾井君もどうかしら」
「里奈とレインしてるんでしょ?用があれば、里奈を通じてほしい」
そう答えると、落胆な気配が漂う。しらねーよ、俺は里奈が大事だ。
ちなみに男連中には、里奈とレイン交換するなよと伝えている。
「和樹ー、今夜のご飯どうするー?」
皆の居る合コンであからさますぎだぞ里奈。いや言いたい事はわかるがな。
「今日は静野さんが来てるんでしょ?」
「えー、でも私が作りたいしー」
マウント合戦すね。男のマウント合戦としても動きますよ。
「んじゃ、カルボナーラ」
ここで手助けしてくれるのは、男同期の1人、超ガタイの良い大貫君だ。
「乾井と、東雲さんは一緒に住んでるんだってー?」
ちょっと某読み過ぎるが、及第点としよう。
「そだよー、私の実家からのお手伝いさんも来てくれてるし」
ビックリする女子3人組。
あー、そこまで話してないのね。
「婚約したてだからね。俺らに生活力無いの心配して、里奈の家が派遣してくれてるんだ」
「和樹とラブラブだし、家事の生活力も身についてきたんだけどね」
当たり障りなく、俺等ラブラブよーとアピールする里奈。助かるよ。
美女3人と理系3人の男達とのやり取りがおわった。
男連中には、くれぐれも紳士にしろと連絡するのを忘れない。あとはお前らの頑張り次第だとも。
里奈と校門前で待ち合わせて帰宅。
お買い物して、静野さんと里奈の料理を食べる予定。
相変わらず、俺の腕に抱きつく里奈。
猫が来ようが、野獣が来ようが、心配ないけどさ。
猫の前に差し出された肉が俺。そんな大学1年の始めを締めくくるのは味気ない。
「なー、里奈」
スーパーに向かう道で里奈に声かける。
「なーにー?」
「今日は俺も料理に参加したい。里奈と一緒に作りたい」
キョトンとする里奈。
「今日だけよ」
ニコリ笑う里奈と、カルボナーラの話をする。夫婦で一緒にお料理。やってみたかったんだ。
周りの同期連中より、早い足での同居する新生活。
大学1年入学直後は、新たな新生活だろうか。
いや、『新婚生活』だな。
結婚届はまだだけど、新婚生活には違いないさ。
駄作を閲覧頂きありがとうございました。
次話はGWまで日付を飛ばそうか、別人視点の閑話にしようか迷い中です。
リクエスト等も受け付けております。