2 目覚めて会うのはホワイトタイガー?と美少年
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「……、…どうか…神様…。」
朦朧とする意識の中、誰かの震える声が聞こえる。
その声はどこか諦めているようにも聞こえ、しかし小さな希望にすがっているような声だった。
その声を遠くに聞こえながらポヤポヤ目を閉じていると。
頰にふわふわした何かが触れ、その感触がくすぐったくてゆっくりと目を開けると。そこには目を見開くホワイトタイガー…いや、違うなこの覇気は聖獣の白虎、神様は確か彼が地界に降りてからはハークライドルと呼んでいた気がする。私は白虎と呼んでいたけど。
その顔が間近にあった。彼も私が急に目を覚ました事を驚いているようで目を見開いている。
聖獣は私の後に神様に造られた存在。彼らとは兄弟みたいなものだ。彼らは直ぐに地界に行ったから数年しか一緒にいなかったが、本来なら私が面倒を見るはずが逆に私が面倒をみられていた。
『起きたのか…精霊王よ。』
脳に念話が飛んできた。
そうだよ…と返事をしたかったが喉が乾燥していて声が出なかった。
仕方なく自分の体に魔力があるのを気付いていたので白虎と同じく念話で話すことにした。
『うん。久しぶり白虎。いつぶりだろうね。て、あれ今世では精霊王の魔力がある。前まで使えなかったのに最後だからかな?全て使えるよ。』
そう言いながら白虎に笑いかけた。そして起き上がろうとしたのだが…筋肉がなくてね。最低限しか付いてない様なのだよ。そのことに気付いたのか白虎が考え込む様に顔をしかめ私の視界から出て行った。
え、いや、ちょっと待ってよ。自分で何とかしろってか?あ、身体強化したら何とか…いや、身体強化は元の筋力を倍増するとかだから全然ない今じゃあんま意味ないだろうな。
いやでも、途轍もなく強い身体強化の魔法を使えば…うん。行ける!
そんな事を考えていたら白虎が誰かに話しかけた。
『ブルーノ、顔を上げよ。』
せっせこと上半身だけ起き上がらせた私はこの眠らされてた棺?いや棺桶?いや違うな。よくわからん白い長方形の箱の淵に手をつき体を支え外を見た。
白虎が話しかけている少年は白虎で見えないがここはどうやら森の中の様だ。あたりの草木には花が咲き、上からは木漏れ日が漏れている。私が寝ていた周りには結界が張ってあり汚れは見つからなかった。
「え、聖獣様…⁉︎いつのまにいらしたのですか。」
『ついさっきだが、良かったな。待ち望んでいた者が目覚めた様だ。』
そういうと白虎は体をずらし私の方を見た。白虎の横には金髪青藍の目の美少年。絵に描いたような王子様顔だ。そんな彼と目が会い綺麗な顔だなぁと思っていると彼が持っていた花束を落とした。
すると瞳をこぼれ落ちんばかりに見開きその綺麗な青藍の瞳から大粒の雫を零した。
そんな彼に思わず近ずくため立ち上がろうとしたのだが、力及ばず後ろにふらっとなった。
「はっ!危ない!!」
うん。私もやばいって思ってる。そう思っていると背中にふわっとしたものが触れ私の背中を支えてくれた。白虎が支えてくれたのだ。
振り返り、有難うの意を込めて微笑むと照れたのかそっぽを向いてしまった。
パタパタと駆け寄ってくる足音を聞きつけ前を見ると慌てた様子で少年がかけてきていた。そして少年は私の顔を見て一瞬固まり震える手でそっと抱きしめた。
あれ、この顔って…
「あぁ、やっと目が覚めたんだね。ずっと待っていたんだこの3年間。毎日、目覚めるのを待って、ここに足を運んで…やっと…僕の愛しい妹、エレノア。目覚めてくれて嬉しい…嬉しいよ…」
震える肩に顔を埋める。
彼は私のお兄様。攻略対象の一人。年上キャラ。ブルーノ・アマドール・アルヴァレズ。公爵家の後継者。
そして私はエレノア・アマドール・アルヴァレズ。お兄様の唯一の妹。私達は二人兄弟だからね。
「……」
お兄様…と、言いたかったのだが声が出ず喉を潤すため水魔法で口の中に水を出しいざゴックン。
お兄様は体を離し私を軽々と抱き上げ言った。
「今日の仕事はお休みすると王宮に連絡を入れないと。他国にいる父上たちは…取り敢えず後でいいか。別に子供達の事なんてどうでも良いんだろうし。」
ちょっ!えらいネガティブですな!
と言うか仕事そんな簡単にサボるな!と言うか少年まだ13か14ぐらいに見えるけどもう仕事してるの?
そう思い頰を膨らませお兄様の胸板に埋めていた顔を上げ服を少し引っ張り注意した。
「おにいたま、おしごと、おやすみ、ダメでしゅ!」
はは!舌も発達してないからね呂律が回らないのだよ!恥ずかしい!
「ゔゔ…な、なんて破壊力。可愛すぎる!じゃなかった!何で話せるの!」
あ、確かにどう言い訳しよう。真実を話してもな…信じてくれるかな。
『彼女には前世の記憶があるのだ。話せて当然だ。』
気軽に明かされた〜
「成る程、前世の記憶が!すごいね。了解した。…でもせっかく愛しのエレノアが目覚めたんだ一ヶ月は肌身離さずずっと一緒にいたい…」
そんなこと言われてもな…困った。そう思っていいると白虎が助け舟を出してくれる。安定のいいやつだな…
『ならばエレノアの連れて行けばよかろう。何、面倒は我が見てやるゆえ。国王にも言っといてやろう。』
え、国王に言っとくって、結構白虎て王宮で高位な感じ?と言うかお兄様の仕事って何?ゲームでは第1皇子(王太子)の側近だったと思うんだけど…
「じゃぁ、ヴァルツ殿下には僕から了承を取っておきます。エレノアは僕が執務補佐してる時はシーだよ?」
「…おにいたまのおちごとって…なぁに?」
「ん?王太子殿下の側近候補としての執務補佐とかかな。」
うわぁお、やっぱり。
王宮かぁ、三回目の転生(貴族だった頃)ぶりだな…王宮って小さい子あんまり居ないから目立つだろうなぁ
そう思いながらお兄様に抱きしめられ馬車に乗った。ずっと抱きしめられてたから周りの景色も眺められず気付いたらまた眠ってしまっていた。
***
(お兄様目線)
馬車の中、腕の中で眠る暖かい愛しい子を抱きしめる。
今日も仕事の出勤前に生まれた時から目を覚まさない妹の元へ行き、いつもの様に神に祈りを捧げていた。どうか僕の唯一を返してくださいと。
花束を持ち視線を落とし膝をつき祈っていると、いつもは王宮にいるはずの聖獣様がエンデリズ教の本山に来ていたのだ。エンデリズ教はこの世界を創造した神に名をエンデリズと名付けその神が創造し神の補佐をしていると言う精霊や聖獣を信仰し感謝すると言う宗教。
この本山は聖獣様たちが管理されているのでいても何もおかしくないがいつも王宮でしか見かけなかったからあの山にいて驚いたのだ。
しかしそんな驚きより聖獣様が言ったことの方に驚いた。
…待ち望んでいた者が目覚めた…?
つまり、そういうことか?
マジマジと聖獣様を見つめると少し呆れ顔をした後、体をずらした。まっすぐ前を見るとずっと瞳を閉ざし動く事のなかった体を動かし美しいパールパープルの髪を揺らしている少女と目があった。
あぁ、瞳の色は、金色だったのか。なんと綺麗な事だろう。母方のお祖父様と同じ色だ。お祖父様が喜んで隣国に引っ越して来いと言いそうだと思った。
目を瞑っている状態でも思ったがなんて綺麗な顔だろう。儚く揺れる長いまつ毛が大きな瞳を囲む、小さなぷくっとした唇が薄く開かれ、左右対称なのではないかと思うほど綺麗に並んだ顔がこの世のものとは思えなかった。なんと可愛いのだろうか、僕の妹は天使に違いない。
気づけば涙がとめどなく溢れエレノアを抱き締めていた。
しかもこの天使喋れるのだ。聖獣様いわく前世持ちだから喋れて当然らしい。
僕よりエレノアのことを知っている聖獣様には釈然としないがエレノアの可愛さに免じて許して差し上げましょう。
今日はエレノアが目覚めたからずっと一緒にいようと思い仕事を休むと言ったら仕事、休んだら、ダメだと…なんて賢いんだ!お兄様は感動しているよ!!
結果聖獣様の提案で仕事場にエレノアを連れて行くことになり今に至る。
腕の中、エレノアが眠ってしまった時また目覚めなかったらどうしようと恐ろしくなったが聖獣様が大丈夫だと言っていたので大丈夫らしい。
あぁ、今日の執務は捗りそうだ。
あ、勿論エレノアが緊張せずに済むよう仕事はヴァルツ殿下と違う部屋で行う。
気安く最愛の妹を見せてたまるか。
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