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聞く所によると工藤の親父さんはソープを経営してるらしい。
いわゆる女性とファックできるお店だ。
「そういうこと言ったら女子は引くだろ……。だから俺は言えねーんだよ、親父の職業をさ……」
「……」
「でもさ、お前はそれを軽く超えてった。性奴隷って(笑)」
工藤はそう言ったあとめちゃくちゃ笑っていた。俺が口にした言葉がこいつにとってよほど痛快だったらしい。
「そんなに変な言葉だったかな?」と僕は言ってみた。
「そりゃあな」と工藤が答えた。「そりゃ俺だってヤリたいさ、でもよ。その言葉には女性に対する敬意ってもんがねぇんだよ」
敬意……。
僕はしばし、その言葉について考えてみた。僕なりに十分敬意を払ったし、彼女の道化にもなったつもりなのだが……。だが、工藤に言わせるとそういうことじゃないらしい。
「その言葉は女性ってものを舐めてる言葉なのさ。たぶん俺が同じ言葉をいったら親父に張り倒されるだろうな」
「そんなもんなのか?」
「親父ほど女の子に対して親身になる奴はいねーよ。だからそういう所もムカつくんだけどな」
どうも事情が複雑らしい。工藤の言葉が分かった気もするし、分からなかった気もした。工藤には母親がいなかった。それとも関係しているのかもしれない。
とにかく、僕等は友達になった。




