そして私は願いを叶えた…はずだった
またしても新しい小説を投稿してしまいました…。
他の小説もちゃんと進めますが、こっちも読んで頂けると有難いです。
唐突だが、私は他殺願望がある。
誰かの手によってこの人生に終わりを告げられたいのだ。
こんなつまらない人生はさっさと終わりにさせたいとそう願っていた。
そして…私の願いは叶った。
グサッ
小気味良い音を立てて一本のナイフが私の胸を貫いた。
ゆっくりと体の中の血が本来の道とは違うところを流れていく感覚を覚えながら、私は目の前の人物に目をやった。
彼は恍惚な表情を浮かべ、私の胸に刺さるナイフを眺めている。
彼は『異常者』だ。…いや、正確に言えば私も『異常者』だ。
私は他殺願望のある異常者。彼は殺人願望のある異常者だ。
お互いに誰かを殺したいと願い、誰かに殺されたいと願った。
そして、私たちの願いは叶った。
ツツーッと口の端しから血が流れていく。
どんどん体が冷たくなって行くのが分かる。
…嗚呼、死ぬんだ。
そう思った瞬間、血を止めどなく流す口を吊り上げて笑みを浮かべる。
彼に対してのお礼の意を込めて今までに見せた事のない程の笑顔を浮かべる。
私の笑みを見た瞬間、今まで恍惚の表情を浮かべていた彼の顔から表情が消えた。
さらに言えば、私の様に多量に血を流している訳でも無いのに顔色が青白く、血の気が引いていっている。
何故そんな表情をしてしまったのか私は分からなかった。
もうほとんど動かなくなってしまった体を無理矢理動かし、彼の頬に触れる。
視界がボヤけ始める。
……嗚呼、もう…。
彼の頬に静かに触れる。
彼の頬に触れた瞬間、プッツリと私の意識が途切れた。
彼の頬は多分、とても暖かかったと………思う。
意識が浮上していくような感覚を覚え、私は目を開け、体を起こす。
何故すんなりと目が開き、体を起こすことが出来たのか一瞬疑問に思ったが、私の基本やる気の無い性格のせいなのかは分からないが、そんな疑問は直様彼方へと消えて行った。
ゆっくりとベッドから立ち上がり、近くにあった全身鏡に向かって歩を進める。
さっきまで体を横たわらせていたせいか、若干足が覚束無いが、なに不自由無く歩くことが可能だった。
ゆっくりと、でも確かな足取りで全身鏡に近づき、程なくして全身鏡の正面に着いた。
「…………」
目を見張るしかなかった。
鏡に映るのは、黒髪ショートの指して可愛くもなかった『私』の顔ではなく、ビスクドールのような大きな瞳と白い肌。整った顔立ちの十五かそこらの美少女が大きな瞳をさらに開いて鏡の前に立っていたからだ。
……夢、だろうか。
何と無くそう思って頬をつねってみる。
私が腕を動かすと、鏡の中の美少女も同じように頬に向かって手を伸ばす。
「……いひゃい」
思いっきりつねってみて確かめてみたが、夢では無かった。頬が物凄く痛い。
しかも、痛くて出てしまった声がもう聞き慣れた『私』の声ではなく、鈴の音のような可愛らしい声だった。
改めて鏡の前の少女に向き合う。
どこからどう見ても『私』には見えないワタシ。
「マジかよ…」
可愛らしい姿の状態でこんな言葉を吐いてしまった私は悪くないと思う。
読んで下さり有難うございました。
異世界トリップしてみたい…(現実逃避)