01
__ピンポーン
一階から聞こえるチャイムの音。重い瞼を薄く開き、目を擦っては枕元に置いてある時計を見る。
土曜日の朝8時過ぎ。
朝から来る客としたら、私の友達の可能性はない。配達とか陽達の友達かその他か。
まあ、蒼汰か陽が出てくれるだろう。
__ピンポーン、ピンポーン
枕で耳を塞ぐように寝返りをうち、布団を頭まで被る。部屋にいる私にも聞こえてるんだから、同じ二階にいる三人にもチャイムの音は聞こえているはず。
__ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「もう!!」
思いっきり布団を横に捲るとベッドから出る。そのまま部屋を出て一階へ下りるが、一階にはやはり誰もいなかった。
父は出張で長らく家にはいない。母も実家に泊まってきてるのでこの家には今は3兄妹しかいない。
__ピンポーンピンポーン
「開けますってば! 」
鳴り止まないチャイム音に、寝起きでイライラしながら玄関を開けた。
あれ。
玄関に下りてスリッパを履き、ドアを開けたのはいいものの、誰も立っていなかった。所謂ピンポンダッシュというやつだったのかな……すごいチャイム鳴らされていたけども。
ドアを閉めようとした、その時に。
「や、お、追いついた」
髪を乱して走ってきた男の人が玄関前で立ち止まった。制服を着てリュックを背負っている男の人は、膝に手を置いて呼吸を整えているようで顔が見えない。
「あ、あのー」
警戒しながら閉めかけたドアをゆっくり開けると、その男の人はパッと顔を上げた。
「い、泉。ひ、久しぶり」
額に少し汗を浮かべ苦笑する男の人。小さい頃から知っていてよく遊んでもらっていた。しばらく会っていない間に背も伸びて、声も低くなっている。
けど間違えない。
栗色の髪に、よく細められるひとえの目。小さい頃から見覚えのある顔にだんだんと重なっていく。
「さっちゃん!!」
私が男の人を指差してそう言ったタイミングで、二階から蒼汰が下りてきた。
「あ、蒼ー!」
「皐月!?」
蒼と呼ばれ、目を見開き駆け寄ってきた。
何しろ蒼汰とこの人は歳が一つ違いで1番仲が良く、中学までは同じ所だったのだ。私もだけど。
真柴皐月。今高3の私達のいとこである。