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騎士と銃士と天才少女  作者: しもさん
一章〜天才少女〜
2/2

天才少女⑴



 眠い………。

 とにかく、眠い………。

 自分がどうして眠いのかその原因はわかっているのだが、今この状況で寝てしまうのは非常にまずい事もわかっているので、こうして辛うじて眠ってしまう事を耐えているのだが………。それにしても眠いものは眠い!


「くぁ………っ」


 思わず欠伸をしそうになって慌てて飲み込む。そーっと周りを見渡して見たが、周りにいる先生方は壇上にいる学園長の話を真剣に聞いている様子で俺の事など眼中に無いようだ。

 心の中て先生方が目を光らせてなくてよかったと思いながら、眠いのを堪えつつも再び学園長の話を聞く。

 今日この日、この学園『桜聖おうせい騎士学園』の入学式があり、今まさにその入学式の『学園長の挨拶』と言う最も長く退屈な時間を過ごしているのだ。一体なにが嫌で学園長の長話を聞かされなくてはいけないのか?少なからず疑問に思っている生徒はきっと沢山いるだろう。勿論、俺もそのうちの一人だし。

 そんな事を思っている最中も学園長の話は途切れる事なく続いていて、とうとう睡魔に耐えきれなくなった俺は大きな欠伸を漏らた後このまま立って寝てしまった。ああ、意識が遠のいて………。


「いてっ!」


 と、完全に意識が飛んでしまう前に後頭部に衝撃が走り、俺は半ば強制的に寝覚めさせられた。後ろを振り返るとすんごい目をした女の先生が出席簿らしき物を片手に立っていた。


「す、すいません………」


 女の先生は口には出さなかったが、その代わり目で「次はないわよ?」と訴えてきたので、俺は迷わず謝罪を述べた。その後、女の先生はため息一つ漏らした後にその場を後にして、もといた場所であろう所に戻って行く。くそぉー、さっきは学園長の話で気づかなかったのに………。

 と思っていても口に出せるほど勇気のない俺は、代わりに先生の背中を思いっきり睨みつけてやった。………器小さいなぁ、俺。


「………それではみなさん、この学園であなた達の素敵なものを見つけられる事を祈って、ご挨拶とさせてもらいます」


 そんな事をやっているうちに、いつの間にか終わってしまった学園長の挨拶。みんなが一斉に礼をし出して、遅れまいと慌てて礼をする。よっしゃ!これで長話から解放される!!

 学園長の長話を乗り切ってしまえば、後は新入生挨拶と閉式の言葉くらいだろう。その二つ、特に後者なんて一瞬にして終わるし、前者も学園長の挨拶に比べたら短くて楽だ。


「続きまして、新騎士生挨拶。新騎士生代表、新井あらいかすみ

「はいっ!」


 俺が予想した通り、やはり次は新入生代表挨拶だった。まぁ、予想もなにも事前に配られている入学式の予定表や壇上横にある壁に大きく張り出されている予定表を見れば一発なのだが、如何せん俺はそれを配布された一時間後には無くすし、あまりにも眠かったため張り出しの方も全く見てなかったのだ。

 まぁ、それもしょうがないと言えばそうなのかもしれない。その時の俺は、この学園なんて入学する気全くなかったんだし。と言うか、今も本当は無いんだけど。

 元気良く返事をした新入生代表の新井さん?は遠目ではよくわからないけど、挨拶と同じように元気系の部類に属してそうなショートカットの髪型をしていた。顔もまぁ、遠目ではあるものの可愛い顔をしているような気がする。というか、全体的にハキハキしているイメージかな?動きとか特に。


(あ………やばいな、こりやぁ)


 結構頑張って耐えていたけれど、そろそろ本気で睡魔がヤバイ………もう意識が保てそうに無い。

 そう思った次の時にはもうまぶたは閉じられ、再び開く事はなく俺の意識は闇へと落ちいく。


(そう言えば、ここでは新入生じゃなくて新騎士生っていうんだな………)


 などとどうでもいい事を最後に俺の意識は完全に闇へと落ちた。

 落ち際に、先ほどの新騎士生のハキハキとした声が耳に聞こえてきたような気がするが、今の俺には子守唄にしかならなかった。





     ⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘




 「お………。おぃ…き………よっ!」


 何だ。何か外が騒がしい気がするが、身体が思うように動かない。あ、この感じは体験した事がある、というか何度も体験してるな。これはアレだ、寝ているのに無理やり起こされている感じだ。


 「…きろって!おい………ぉいっ!!」


 うるさいなぁ。俺は眠いんだから寝させてくれよ………て、俺は何処で寝てたんだっけ?あれ?朝起きた覚えはあるから二度寝か?それにしては布団の感覚は無いし………って今俺立ってる感覚だぞ。それに、声の主も誰だかわからないな。男の声だから姉さんじゃなくて爺さんだと思うんだけど、それにしたって若すぎるような………って!


「いい加減起きろよっ!!」

「はっ!?」

「ったく………入学式で、しかも立ちながら爆睡とかお前は一体どんな精神の持ち主だ?」


 全てを思い出して意識を覚醒させると、そこには自分と同じ学生服を着た、おそらくクラスメイトであろう男子が俺に話しかけてきていた。声の感じと会話で、この人が俺を起こしてくれたのだろう。


「ご、ごめん………ありがとう」

「ほんとだ!入学式終わって教室帰る時間になっても一人だけずっと立ちながら寝てるんだから、マジでビビったわ」

「はは………」

「先生達も、お前の事はほっといて歩いていくしな」


 マ、マジかよ………。俺早速先生方に嫌われてるのか?


「だから、お前を起こしてやって事情まで説明してやってる俺に感謝しろよな!」


 そう言われてから周りを見渡す。そこには、軽く後片付けや話し込んでいる先生を除いて俺たち以外の人はいなかった。

 という事は、俺は本当に先生方に見捨てられたわけね………トホホ。

 そう思うと、わざわざ俺を起こしてくれたこの男は優しい奴か、相当変な奴かのどちらかだろう。何せ、一クラスに四○人以上はクラスメイトはいるのに、そのうちこの男を除いては誰も俺に声をかけようとはしなかったのだから。もしかしたら声をかけてくれたのかもしれないけど、俺を起こすまでの事はしなかった。

しかし、それが当然の行動だという事も理解できる。普通は見ず知らずの人を助けようなどとはなかなか思えないものだから。


「うん………ほんと、ありがとう」


 だから、この男は本当に優しい奴か、相当な変人で間違いない。だからこそ、俺は素直にこの男にお礼を述べられたんだと思う。これが女の子だったらなお良かったんだけどなぁ。


「いいってことよ!それより、早く教室行かないとマジでやばいぞ?」

「え………げっ!?もうこんな時間かよ!!」

「ってことで、走るぞ!!」

「異議なし!!」


 そうして、俺たちはおもむろに走り出す。後ろから先生のお叱りの言葉が聞こえたような気がするが、今回ばかりは無視させてもらいます!!

 俺は知り合ったばかりの名前もわからない男と共に教室を目指すのであった。







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