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女王様は可愛い娘ちゃん

しばらく歩いたら、賑やかな街並みにぶつかった。石畳のいつかテレビで見たヨーロッパの街ににている。




雑踏をかき分け、おそらくメインストリートであろう大通り進む。

食堂や八百屋、魚屋…日本の商店街にもある店が連なる中、楽器を取り扱う店がかなり多くある。

すれ違う人々は皆といって良いほどその手には楽器であったり、楽譜であったり、音楽関係の持ち物をもっている。



キョロキョロと辺りを見回していると、護衛のお兄さん《ハロルド》さんに困った顔されてしまった。



「すみませんっ、余所見して」


慌てて謝った。


「いえ、何か気になったものでもありましたか?」



「ええまあ…楽器屋さんが多いなと思って」



「ああ、やはり都なので沢山工房があるんですよ。貴女は何か楽器を嗜まれますか?」



「いえ、あまり。学校の授業でリコーダー吹いた位で後はさっぱり」



「リコーダーとは?」



こちらではリコーダーが無いのか、名称がちがうのか。



「縦笛です」



「そうですか。そちらではりこぉだあと言うのですね。うちの父も好んで演奏しますよ、頑固おやじですが腕だけは良いんですよね。腕だけは」


なんか最後の言葉には棘を感じなくもない。

ハロルドさんは苗字をシュトラウスさんと言うらしい。もしかして彼の親子同様に仲が悪いのか。

まあ余所様のお家を詮索するのは憚られるだろう。それ以上は何も言わない方がよかろう。


だが、話題が無くなってしまった。

困ったな…。

沈黙は苦痛だ。



「あそこが城です。」




ハロルドさんが指さした先には白い、大きな建物が見えた。

ちょうど千葉のあのテーマパークのお城みたいだ。




「確か女王さまでいらっしゃるんですよね」


「ええ、国民に愛されている素晴らしい方ですね。早くに御生母様から離れ即位されお寂しいでしょうに…」





ハロルドさんの表情は本当にその女王さまを想っているようだ。臣下の者がここまでの表情をするのだから慕われている良い女王なんだろう。











そして城に着くとすぐに女王さまの執務室へ行くよう促された。引き続き3人のおじさま、モッツアルアさん(チーズか!)とハロルドさんと共に向かった。









「モッツアルアの三伯爵とシュトラウスでございます。救世主様をお連れしました」



執務室の扉が開く。

促されるまま、部屋にはいるとそこに女王さまらしき人は居なかった。


秘書官らしき男性と、後は…。




「よくいらっしゃいまちたわ。あたちがこの国を預かっている、ナーナ=フロイラインでちゅわ。」








女王様はプニプニの赤ちゃんでした…って…。

まさか、とは思ったが明日歌以外は皆彼女に対して敬意を払い、目上の人のように接しているから間違いないのであろう。



「えっ…と女王様ですよね?」

思わず、ハロルドさんに確認してしまった。

「はい」 


「赤ちゃんに見えますが」


「赤ちゃんですから」


「若すぎませんか」


「我が国では世襲ではなく神託で国主を決めるのであまり珍しい事ではありません」




マジですか。




「因みに戴冠の儀式の時に自動的に喋れなくても喋れるようになり、国を治める為に必要な知識も同様ですので政務も問題ありません。」




便利である。

それにしてもかわいい。プニプニのほっぺ、フワフワもちもちの肢体。その、愛しささえ感じるフォルム。




嗚呼っ…。

衝動的な欲求に突き動かされ思わず女王さまを抱き上げ、その感触を感じると抱きしめてしまった。



ハロルドさん曰わく愛されているってやつは、あれか、この愛くるしさで悩殺か。

じゃあしょうがない。なにが、いや、すべてが。





ひとしきり女王さまを愛で、ふと我に返り冷や汗がでた。

もしかして、これって…不敬罪になったりするんだろうか。





モッツアルアさん達の顔を見るとうんうん。かわいいよね、女王さま。みたいな顔をしてた。

続いてハロルドさんは驚きはしているようだが概ね好意的な様子である。

最後に、秘書官らしき男性は…驚愕の表情を浮かべていた。






「そんな…僕の抱っこではそんなに嬉しそうな顔しないのに」


「そっち!?」




確かに安心したようにおとなしく抱っこされている。終いには大きな欠伸までし始めた。ちょこっと覗いた乳歯まで可愛らしい。



「貴女の抱っこ、気持ちいいわ。ねぇ、お昼寝ちたいからこのままトントンちてくれないかちら?」


言われるがままに、一定のリズムでオムツでモコモコのお尻をポンポンとしていると、あっという間に寝入ってしまった。



「すぐにベッドを…!」


秘書官らしき男性はワタワタと用意をし、ぐっすりと女王様が寝入っているのを確認しベッドに寝かせた。





「しばらく眠っていそうですね。」


「そうですね。こちらにどうぞ。お茶にいたしましょう。」



秘書官の男性に促されて女王さまの眠っているベッドの近くの椅子に座る。モッツアルアさん達とハロルドさんは一足先に座っていた。



「救世主どのはずいぶんやや様に慣れていらっしゃるようですな。」



まず口を開いたのはモッツアルアさん達の中の一人。



「12歳の離れた弟が居ますので、一通りの事は母を手伝っていました」



当たり障り無い会話をいくらかした後、あの。と明日歌は口を開いた。



「ところで、なぜ、いや何のために私はここに居るんでしょう?」


遅すぎる問いではあるがモッツアルアさん達の出で立ちに面食らってしまい、その後はなんだか言い出し辛くなってしまっていた。



明日歌の問いに、皆うぅむと唸ると、どこから話せば良いだろうかと頭を掻いた。




「あの。」と口を開いたのはハロルドさん。



「詳しくは女王様がお話になりますが、とにかくいまこの国は危機的状況なのです。それを打開するには異世界から救世主を召せよと神託があったのです。」




なるほど。ありきたりなファンタジーだな、と明日歌は思った。



「ドラゴンとか、魔物とかと戦ったりするんでしょうか?」



「とんでもない!竜族や魔族とは、友好関係を築いているのでそんなことをしたら外交問題になりますよ!」


「じゃあ、何故?」


「それは…」


ハロルドさんが口ごもると、すかさずモッツアルアさんがまあまあ、と間に入った。



「兎に角、お茶が冷めてしまう前に飲むとしましょう。」



それもそうだ、とりあえず女王様が起きたら教えてくれるみたいだし、と思い花の香りが芳しいお茶に口をつけた。




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