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むかえに来たのは3人のモーツァルト+1でした

「一体ここはどこよ…」


 辺りを見まわしても観たこともない風景が広がっている 。 確かに自宅に帰り着いた筈なのに。


 空は青く清々しい。 風はそよそよと気持ちいい。 足元の草は目に優しい。花々は甘く優しく香る。


 知らないうちになんとも心地よい所に来てしまったな、 と明日歌≪あすか≫は思った。


 さっきまで蒸し暑い中いた 所為か、少し頭がクラクラす るけども。


しかしなんでこんな所に自分がいるのか、明日歌には皆目見当がつかなかった。


明日歌は現在高3。一般的には進路など悩み事の多い時期ではある。

今の今まで全く自覚はなかったがストレスのあまり自己防衛として自らが見せている幻であろうか。


どうしたものかと思案していると、遠くから数人の気配が近付いて来ているのを感じた。


「おお!いらっしゃったぞ」

声のする方を向くと、数人の男性がこちらに向かっているようだ。

周りに人がいない所をみるとどうやら自分の元に来たらしい。


「ようこそいらっしゃいました!“救世主”殿」

声の主の出で立ちに明日歌は驚いた。




モーツァルトだ。

否、教科書でみたご本人とはまったくの別人だが正に彼の人と同じ装いをしている。

他二人の取り巻きとおぼしき人たちも同じ格好をしている。

この髪は自毛なんだろうか。

 


 モーツァルト×3の後ろには護衛らしき人が一人。おっさ…否、おじさま方とは対象的に清潔感ある短かく切られた暗色の髪をカッチリしすぎずセットされている。

 腰に帯びている剣に手を掛け、明日歌に不用意な言動をしてくれるなと言外に伝えているように見えなくもない。

 それくらい彼の表情が硬く、張り詰めた空気をまとっていたのだ。


「さあさ、参りましょう」

「そうですとも、女王様もお待ちしているでしょう」

「国を挙げておもてなしさせていただきますぞ!」




 どうやらこの三人は明日歌を女王様とやらの元に連れて行きたいらしい。そしてこの三人は相当な身分の高さを持っているのだろう、多分十も歳が離れていないであろう護衛の男の顔に、でがでかと『いいから従っておけ』と書いてあるようだ。

 

 確かに今現在、なぜ自分がここに居るのか明日歌には解らない。でも、この三人は「ようこそいらっしゃいました!」と言ったからには明日歌がここに来ることがわかっていたという事だ。

 ならば、長いものに巻かれた方が良さそうだと判断しついて行くことにした。

 だが、何故自分が…。明日歌の愛読している小説にはよく、自らが今まさに体験している場面がある。


モーツァルト×3の言うには自分は救世主らしいし、もしかして…と思う。

 自分が所謂勇者というものなんだろうか。だとしたらドラゴンだったり魔王とかと戦わなければならないのだろうか。自慢にもならないが、自分には特殊なスキルはない。戦うにしても、明日歌とは一回り歳の離れた弟、6歳の大樹≪だいき≫を姉弟喧嘩や、悪戯したときシバくくらいの戦闘力しかない。今だからこそ、力で勝っているものの数年経てば適わなくなるのは必至である。

 それなのに戦えとか言われたらどうしよう。厳しい修行とかするんだろうか。それとも伝説の勇者アイテムを求めて旅に出たりするんだろうかなど、明日歌の持てるだけのファンタジー知識を総動員しつつ、モーツァルト一行の後をついて行くしかなかった。





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