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このろくでもない、しかしやかましい店内4

「だから真面目にやれと言ってるだろうがお前はっ!」


 胸ぐらを掴み、怒鳴る魔王さん。しかし勇者も引かない。


「冒険者は自由人なの! だから戦闘中ジャンプ読みたくなって逃亡しても自由! 延々と立ち読みしてても自由! 袋閉じこっそり見ても自由! イッツ、フリーダムだよ!」


 そ ん な 自 由 は な い ぞ ク ソ ガ キ 。


「すいません、勇者さん、それ自由を超えてただの営業妨害ですから。買って下さい」


「……すまない、ここがコンビニである以上、立ち読みだけじゃだめだな。たしかにできれば何か買ったほうがいいだろう」


 右手を出す勇者。開いた手の平をこちらへ向ける。


「だ が 断 る」


「……じゃあ客じゃないんで店から排除しますね」


 営業スマイルを振りまきながら距離を詰める。袖をまくり、軽く腕を振った。さてひと仕事。


「あ、ウソウソ、ごめんなさい言ってみたかっただけです! 止めて! ガム買うから! からあげ氏買うから! 不気味に笑いながら近づくの止めて!」


「だからジャンプ買えよ!」


 お前、出版社に恨みでもあんのか?


 ピコーン


「……あ、いらっしゃーせー」


 慌てて来客に気づき振り向く。このアホ勇者につき合うと気が散って仕方ない。


「まーたコンビニなの? アホ勇者。あ、そういやストッキングの変え買っとかないと」


「仕方ない、こういう習性の動物と思って諦めろ。……店員、カップラーメンの新製品あるか?」


「――店員よ、『ガチペド一歩』の第八十二巻は入荷しているか?」


 次々と入店する三人、魔術士イーリー、盗賊ロンバート、戦士アンバー。アルドが逃げたので戦闘中止してこっちにきたのだ。


「あー、新製品ならドリアン味の焼きそばと、海の家のラーメン味のカップヌードルがそこ並んでますよ。

……戦士さん、それも魔王指定有害図書に認定されたので取り扱ってません」


 戦士の巨体が一瞬、きしむ。


「――神は、死んだ……」


 ロリコンに神はいない!


「魔王様ぁ、休憩ですか? 休憩ならコンビニで休んでいいですかね? この季節ダンジョン結構寒くて……」


「おーい、店員、ワイヤーカッター無い? ちょっと鋼糸切りたいんだよねー」


 続いて二名、前衛のサイクロプスとオーガが来店。オーガは鋼糸がついたままなのか気をつけの姿勢のままピョンピョン跳ねている。


「あーはいはい」


 カウンターからワイヤーカッター、両手で保持する巨大ニッパーを引きずり出す。その刃先をオーガの鋼糸へ。

 バチリという小気味よい音と共に鋼糸が切断。オーガが自由を取り戻す。


「ふー、きつかったぁー。まったくこのコンビニは何でもあるな、助かるわぁ」


「お、からあげ氏が半額サービスか。……なぁ店員さん、からあげ氏ってなんの肉なんだ? からあげって書いてあるだけでよくわかんないんだが」


 サイクロプスがケース内の商品を眺めながら聞いてくる。どうやら小腹が空いているらしい。


「ああ、食肉です」


「……え? いやだからなんの肉……」


「だから食肉です」


 マニュアルでこう言えと言われてるんだから仕方ない。とりあえず毒ではないと思うんだが。


「おい、お前ら、前衛役は普段三人いることと決めてたよな? なんで今日は二人しかいないんだ、おかげで私は危なかったんだぞ!」


 腕組の姿勢で詰問する魔王さん。すいません、反省会をレジ前でやらないで下さいお願いですから。


「ああ、なんかオーク族のやつですよね? 今日はどうしても予定があるからって抜けたんですよ」


 自由になった体を動かしながらオーガが答える。ていうか一応魔王さん上司なんだから、事前に伝えてやれよ。


「おい、ふざけるな! お前らダンジョンの仕事をなんだと……」


「何でも別れた嫁さんとこについていった息子さんに会いに行ってるんですって」


「……あ、あー、うんまあそれならしょうがないか」


 話が突っ込みづらいのか魔王さんの勢いが弱まる。魔族もやはり色々あるんだなぁ。


「ええい、とりあえず休憩だ。解散!」


 魔王さんの合図でのろのろと店に散る魔族二人。いや店で休憩されても困るんですが。

 気がつけば店内に客は七人。やはり客ってのはまとまってくるものだ。


「なーなー、店員さん」


 勇者が声をかける。なんだお前、早く雑誌コーナー行けよ。


「店員さん実は腕の立つ東方の武術士なんだろ? 俺ら一応ランキングは高いほうのパーティーなんだ、どうだい、こっちのほうは弾むからさ、うちのパーティー来ない?」


 人差し指と親指で丸をつくりながらニッカリ笑う勇者。なんだ勧誘かよ。どうも暴れすぎたのがまずかったか。


「誘ってもらって悪いんですが、冒険者の仕事には興味は無いですし、今の職場で満足してるんで、また次の機会にお願いします」


 上司に不満はあるがな。ふと周りを見るとイーリーやロンバート、アンバーまで近くによって来やがった。


「まぁ、そう言わずにちょっとやってみたら? あんたの実力ならいい稼ぎになるわよ。……ところで極めた武術士って闘気で滝を割れるってほんと?」


「できません」


 なんだよ闘気って、そんなもん無ぇよ。


「噂によると、特定の秘孔というツボを突いて人体を爆発させるとか……恐るべし、東方の武術士」


「盗賊さん、それ嘘ですから」


 人体は爆発物じゃないぞ。


「――胸に七つの傷が」


「ありません!」


「弟がキライでヘルメット被ってるとか……」


 おい、

 手を伸ばし、発言者=勇者の頭を掴む。そのままギリギリと力を込めてアイアンクロー。


「俺・の・名・を・言ってみろおぉぉぉっ!!」


「ジム! ジム・スミスさんですぅぅっ!」


試験的次回予告。


「ハァーイ、みなさんコンニチワ! 『店員&店長』の『アイマスのキャラ選択画面で上上下下左右左右BA、通称コナミコマンドを入力すると選べる隠しキャラ』をやってる方、店長でス!」


「のっけからサラッと大嘘つくんじゃねぇよっ!

……店長、アイマスってよく知らないんですけど、たしか巨大ロボで隕石破壊するアニメでしたっけ?」


「止めテッ! 黒歴史を紐解いてはいけなイ!

えー気を取り直しテ、次回のダンジョンコンビニ デッドラインは『The ball man waliking across the street is my father(通りをわたっている頭がハゲた人は私の父です。)』

それではシーユーネクストタイム!」


「もっとマシな言い方があるだろっ!」


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