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このろくでもない、しかしやかましい店内2

「――スゥゥパァァッダァァクッッ!! ヒィッロォタァイムッ!! ネクストシーユー!」


 やたら気合いの入ったナレーターと共にスーパーダークヒーロータイム(通称SDHT)が終了。なんか夕日に佇む仮面ライダーデュラハンが哀愁漂うアイキャッチとして移っていた。


 いや今更どうかっこつけても頭が無い時点で相当シュールだからな? 制作した奴よ、わかってんのか?


「あー、終わっちゃいましたカ、デュラハン。見たかったんですけどネ」


 後方でいきなり聞こえた声に思わず振り向く。ていうかもちろん該当するのは一人しかいないわけだが。


 見慣れた制服、見慣れた長い金髪、そして見慣れたキツネ面。細く長い指が豊かな胸元のボタンをプチプチと外していく。


「……もう交代の時間ですか? 相変わらず気配消すの上手いっスね。ていうか、頼むから着替えんの休憩室じゃなくて更衣室か仮眠室にしてもらえませんか、店長?」


 俺の嘆願にも、ボタンを外す店長の指の動きには一切の淀みも遅れもない。ああ、無駄に気合いの入ったブラしてんなぁ。


「いやー、ほらこういうのも深夜勤務手当てというやつですかラ! 日頃頑張ってるジム君にサービスしようかト」


 止めろ。今すぐ止めろ。


「いりません、見たくないです。そもそも見たくないものを見るのが手当てというのが納得できないっスね。お願いですから現金で下さい!」


「いやいや、ジム君。手当てになってるのはむしら私のほうでもなんですヨ。……人に見られるのって結構これが癖になるんですよネ」


「……結局店長の趣味なだけですか」


 頬の辺りを上気させながら、どこかうっとりと身をくゆらせる店長。正直に言おう。確かに店長はスタイルがいい、顔はわからんがなんか美人っぽそうな感じもする。長い金髪も綺麗だし似合っている。仕事だって基本以上できる人材だ

 でもなんか得体知れねぇんだよコレ。あからさまな地雷臭がするっつうか、性格がエキセントリック過ぎるっつうか。

 昔戦場で培った危険察知の勘に引っかかるんだよ。


「それよりも、デュラハンが終わっちゃったことが今はくやしいですネ まあ明後日にはまた同じ回がやるからいいですけド」


 ……は? またやるのか?


「このデュラハンって番組、何回も流してるんですか?」


 俺の質問に、店長が少し驚いた表情を取る。


「あれ、ジム君、仮面ライダーデュラハンって知らないんですカ? 今魔王国で大人でも子供でも大人気のヒーロー番組ですヨ。番宣の『痛快娯楽復讐ダークヒーローアクション、仮面ライダーディラハン! 仮面ライダーデュラハンにご期待下さい』とか聞いたこと無いですカ?」


 いや色々盛りすぎだろ、なんだ『痛快娯楽復讐ダークヒーローアクション』って。


「普段あんまテレビ見ないもんで……そんな人気なんですかこの首無しライダー?」


「人気も何も、週に日曜朝八時からの本放送一回に深夜再放送三回のヘビーローテーションですヨ! それでも前は再放送が週四回、変更時は『減らすな』と苦情が来たぐらいなんですかラ」


 いくらなんでも垂れ流しすぎだろおい。


「……ちょっと待って下さい、この番組は本来は子供がメインなんですか!? 首とかポロポロ取れてるんですよ?」


 どう考えても悪影響出まくりだろ。


「子供って残酷な物やグロテスクな物が好きですからネ。それにアクションのかっこよさやストーリーで大人も引きつけてるんですヨ。

まあ子供に影響と言っても、デュラハンごっこをしようとして自分の首にケガした子供がいるぐらいですシ」


「めちゃくちゃ悪影響じゃないですか!」


 これで許されるとか魔王国ワイルド過ぎだろ。


「それからほら、なんといっても主人公が魅力的なんですヨ。

――――夜の顔は友の仇を討つために都市伝説を狩る仮面ライダーデュラハン、昼の顔は人一倍熱意はあるが時々うっかりドジを踏むリストラ追い込み担当の会社員という設定なんですネ」


「二重の意味で首切り処刑人かよ!」


 うっかりミスでリストラしてくるとかイヤ過ぎるだろうが主人公。


「最近は変身にも新フォームが出てきてるんですヨ。

『世にもおぞましく名伏し難き苦悶の表情を浮かべる人面パン(アンノウンブレット)』、通称『アンパントリガー』を首に装着することであらゆる能力を十秒だけ百倍に引き上げるパワーアップフォームでス」


「……いや、もういいっスから。もうデュラハンの話は聞きたくないですから、店長」


「ちなみにその状態から有り余るパワーで反物質を生成、右手に込めて敵にぶつける『アンチ・マテリアル・インパクト・パンチ』、通称アンパンチが必殺技なんですヨ!」


「だからもう聞きたくないっスから! 勘弁して下さい!」


 どんどん盛り上がる店長と反比例して、あきらめ気味に半泣きで俺は声を上げた。どうやら魔王国の日曜朝八時は魔界になるらしい、その時は間違ってもテレビはつけないようにしよう。

「大体店長、もう交代なんでしょ? 俺、そろそろ店入りますからとっとと仮眠とって下さいよ」


「あら、いけなイ。デュラハンで忘れてましたネ。……あ、そうそう、ジム君。私は一度寝るとなかなか起きないんですヨ。だから仮眠室の鍵は開けておきまス」


「……はあ、つまり起こしにこいと?」


 小学生かアンタは。


「んー、ちょっと私の意図とは違いますネ」


 店長が少し困り気味に首を捻る。なんだ? なにが言いたい?


「つ・ま・り、私のベッドにジム君が入ってきてもわからないよという気遣いで……」


「くだらないこと言ってないでとっとと寝ろどアホ!」


 あとで仮眠室のドアにタンス置いて出てこれなくしてやろうか? ……店長の場合、「監禁放置プレイもたまにはいいですネ!」とかいいそうであんま効かなそうだなぁ……



試験的次回予告


 都市を本と見立て、自分達を本を構成するストーリーと位置付ける悪と恐怖の都市伝説同盟秘密結社、『街奇譚社(タウン・ペイジ)

 街の暗部に生きる彼らタウン・ペイジにただ一人立ち向かうは、闇を葬る闇、都市伝説を狩る都市伝説(アンチフォークロア)、仮面ライダーデュラハン。

 果たして、口裂け女を下したデュラハンが闘う次なる敵とは?


「口裂け女が倒されたか……」


「クックック、口裂け女は我らの中でそこそこの大物!」


「次の相手……どうするよ……?」


「俺の名はデュラハン、貴様達を処刑する者だ……俺の顔を、その魂に恐怖の刃で刻みつけろ!」


「お前のような悪をこの街でのさばらせたんじゃな、……俺の顔が立たないのさ」


次回『断罪者』


 首を洗って待て!




※次回予告と次回内容に関係は一切ありません。本当です。本当ですってば。

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