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ポテチで人は生き返る

作者: 京風な魚
掲載日:2026/05/29

これまた深夜テンションです

「最後に……ポテトチップスが食べたいなぁ」

完全に衰弱しきった父が弱々しすぎる声でそう伝える。

母が頷いた後、私は全速力で病院内に売ってあるポテチを買った。そして届けた。父が袋を開けようとしたが力が足りず数ミリだって開かなかった。急いで母が開けて父のほとんど空いてない口にポテチをねじ込んだ。すると父がカッと目を見開き、「うんまぁぁぁぁぁぁ!!」と大きな声をあげた。心電図が信じられないほど波打っている。さっきまで小さい山がぽつぽつとあっただけなのに。ボケーっとしていると父が母の手からポテチを奪い取り、ガーッと口の中に入れていく。涙をボロボロ流しながら食べていた。夢でも見てるようだった、ついさっきまであと1分したら死んでしまうのではないかと思えた父がこんなにも元気にポテチを貪っているのだ。だが父は生きている。それでもう十分だ。

数日後、ビシッとしたスーツを見に纏った七三分けの男が入ってきた。その男は名刺を差し出した、それはタイムリーなポテチ会社のお偉いさんの名刺だった。

「一体どうしてあなたのようなお方が何か用でしょうか?」

「突然の来訪失礼します。旦那様のことを小耳に挟みまして、そこで一つ頼みたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

「えぇ、まぁ用件によりますが…。」

「おっとこれまた失礼、私としたことが用件を伝えることを忘れていました。あなたの旦那様に頼みたい事ですが…」

その時、私は父が人体実験にでも巻き込まれるのではないかと恐れていたが、ポテチ会社の人は気の抜けたようなことを言った。

「ぜひとも、私たちの会社のCMに出てください!」

「「「はぁ?」」」

その場にいた私、父、母の3人は口を合わせて言った。

「不謹慎なのは重々承知しております。ですが、どうしてもCMで『人も生き返る美味しさ!』と言う売り文句を使いたいのです。」

「私たちが言いたいことはそのようなことではありません! 旦那があなた方のCMのために身を削らないといけない理由はなんですか?」

「それを聞かれてしまったらもう私たちが儲かるためとしか言いようがありません、もちろん売り上げの10%はあなた方家族のものです」

私たちはすぐにポテチ会社が一つのCMで儲かる量を調べた。撮影の日はすぐに決まった。



撮影の日、私は出演するわけでも無いのに緊張していた。CMの内容としてはこうだ。父がバリボリとポテチを貪って、その間にテロップで「この方は最近弊社のポテチを食べて生き返りました。」と表示して、その後に人気タレントが「死人も生き返るうまさ! ザクザクポテチ!」

と言って終わる。よくよく考えなくても父の労力が少なすぎる。こんなので10%も配当が生まれてしまったら世の役者さんは怒ってしまうんじゃないか。そう考えてるうちに撮影が始まった、父は指示通りポテチを貪っているだけだ。ただいつもは食べてる時に小声で「美味い」とか声が漏れているから、これでも声を抑えるのに苦労しているのだろう。何も問題なく撮影終われ! と願いを込めていると、撮影は終わった。1テイクで完璧だったそうだ、母と私は複雑そうに笑った。


数日後、本当に私の父がポテチを貪る映像が全世界に放映された。今でも夢なんじゃないかと思う。まぁ父が生きてることが夢のようなことなんだ、今さらテレビに出たくらいで驚きすぎたら奇跡に失礼だ。そう自分の中で納得していると父がいきなりぶっ倒れた。


そこからはもう早かった。父がもうほとんど助からないことをまた知らされて、病気のベッドの上にいて衰弱した父の姿がある。前と同じだ。

「お父さん、大丈夫?」

見当違いなことしか聞けなかった、大丈夫なわけがない。父は結局死んでしまうのだ、ポテチの奇跡は結局1ヶ月も続かなかった。うなだれていると、父がボソボソと言った。

「最後に……コーラを飲んでみたいなぁ」

私と母は見合わせて、大きく首を縦に振った。

まんじゅうこわいみたいになっちゃった

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