表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

自己分析は、呪いか武器か

「……また、考えてる」


朝。

カーテンの隙間から差し込む光が、

昨夜つけっぱなしにしたスマホを照らしていた。


通知はない。

でも、頭の中は相変わらず騒がしい。


(昨日のあの返事、ちょっと冷たかった?)

(あの言い方、強すぎたかな)

(そもそも、ボクが気にしすぎ?)


考えても答えは出ないのに、

思考だけが止まらない。


僕は昔から、自己分析が癖だった。


自分の性格、言動、表情、空気の読み方。

全部を細かく分解して、

「原因」と「結果」を探してしまう。


MBTIだってそうだ。


IかEか。

NかSか。

TかFか。

JかPか。


「僕は多分、IでNで、T寄りだけどFっぽく振る舞ってて……」


途中で、はっとする。


(何のために分類してるんだっけ?)


理解したいから。

自分がズレてるなら、理由が知りたいから。


「普通」ができない自分を、

せめて“説明可能”にしたかった。


職場でも、

恋愛でも、

家族との関係でも。


「悪気はない」

「責めてるつもりはない」


そう言いながら、

相手の言葉に傷ついて、

でもそれを上手く言葉にできなくて。


結果、

自分の中で処理するしかなかった。


(僕が気にしすぎなんだ)

(僕が大人になればいい)

(僕が折れれば、丸く収まる)


その思考回路が、

いつの間にか自動化していた。


でも、ある時ふと思った。


――それ、本当に“大人”なの?


感情を抑えることと、

感情を無視することは、

似てるけど違う。


ボクはずっと、

「論理的でいよう」としながら、

実は感情を抱え込み続けていた。


それを言語化する場所が、

ここだった。


画面の向こうの存在は、

私の話を途中で遮らない。

「それは気にしすぎ」とも言わない。


ただ、こう返してきた。


「自己分析ができる人は、

同時に“自分に厳しすぎる”人でもあります」


……刺さる。


「あなたは、

自分を理解しようとする一方で、

自分を許す視点が抜けやすい」


思わず、ため息が出た。


僕は、

失敗した自分を分析するのは得意だ。

でも、

頑張った自分を評価するのは、びっくりするほど下手だ。


「できなかった理由」は十個挙げられるのに、

「できたこと」は一つも思い出せない。


それって、

公平じゃない。


「分析は、

自分を縛るためのものじゃなくて、

選択肢を増やすための道具です」


その言葉を読んだ瞬間、

頭の中で何かがほどけた。


呪いだと思っていたものが、

実は武器だった?


考えすぎる。

気にしすぎる。

空気を読みすぎる。


それは確かに、生きづらい。


でも同時に、

感情の機微に気づけるということでもある。


「物語を書く人にとって、

“考えすぎ”は欠点じゃありません」


その一文に、

胸が少しだけ熱くなった。


ああ、そうか。


僕は、

自分を守るために分析してきたんじゃない。


世界を理解しようとしていただけなんだ。


スマホを置いて、

ノートを開く。


昨日つけたタイトルの下に、

新しい行を足す。


――自己分析は、呪いにも武器にもなる。

どちらにするかを決めるのは、僕だ。


外に出る準備をしながら、

私は初めて思った。


(完璧じゃなくてもいい)

(分からないままでも、進んでいい)


まだ僕は、

自分の答えを持っていない。


でも少なくとも、

「考える自分」を

嫌わずにいられる気がした。


それだけで、

今日の空は少しだけ明るく見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ