問い鉄砲
この銃声を聞いた眼前の宇喜多秀家は?
宇喜多秀家「如何する?」
明石全登「赤い甲冑が井伊直政であれば、数は4、5千。兵には武田遺臣が多く、皆精鋭。正面衝突は回避すべきと考えます。」
宇喜多秀家「わかった。」
この銃声は井伊隊後方の福島正則と黒田長政の耳にも……。
黒田長政「ん!?」
福島正則「井伊の奴。出し抜きやがったな。」
黒田長政「待たれよ。其方も私も少なくない損耗を被っている。井伊の勢いに負けじと……。」
福島正則「『井伊に全ての手柄を持っていかれよ。』
と申すのか?」
黒田長政「いや、そう言う事では……。」
福島正則「『石田三成に怖気づき、先手の役目を忘れている所を……。』
等と誹りを受ける事になるのだぞ!斯様な思いをするぐらいなら。」
と突撃を指示する福島正則。
黒田長政「……こうなっては仕方が無い。しかし後藤は何処へ行った?今の状況で宇喜多の大隊に突っ込むのは愚の骨頂。井伊は今、誰と戦っているのだ?福島は間違いなく石田に狙いを定める。それに私は……。」
先手では無い。
黒田長政「福島の後を追い、後方から石田攻略の手助けでもするか……。」
と決戦を覚悟する両陣営。そんな中、当の張本人となった井伊直政は……。
松平忠吉「井伊殿。如何為された?兵が進まぬでは無いか?」
井伊直政「いくさの事は全て木俣に委ねています。彼が前に進めば前へ。退くのであれば退く。今、彼が鉄砲を放った後突撃しないのには某かの理由があるはずであります。」
木俣守勝「……しかし前が見えぬ。
『突撃せよ!』
と言ったわ良いが、敵は少なく見積もっても3万。何処に誰が居るのかわからない中、戦うべき相手。それも今の手勢で勝てる相手を見つけるのは困難。それに我らは、あくまで物見。先手を務める福島殿をこれ以上刺激するのは、家康様に迷惑を掛ける事になる。これは避けなければならない。」
こうした中、
「殿。井伊の赤備えが見えました。」
福島正則「ん!あそこに敵方は居なかったぞ?」
「と言う事は先程の銃声は敵方から?」
福島正則「いや、わからぬ。もしかすると井伊が
『敵が目の前にいるのに、何で戦わないのだ?』
と問うて来た可能性もある。何れにせよ戦わない事には変わりが無い。恐らく井伊の目に、我らの動きが映っているであろう。ここで退くわけにはいかぬ。ならば覚悟を決め、戦うのみ。」
明石全登「殿。敵の姿が見えました。」
宇喜多秀家「井伊か?」
明石全登「いえ。黒字に山道。福島であります。」
宇喜多秀家「奴が亡き太閤殿下の恩を忘れ、家康に奔った張本人。相手にとって不足は無い。今度は逃がすな!」
明石全登「わかりました。」




