午後7時
大垣城。
島左近「殿。」
石田三成「どうした?」
島左近「『赤坂で出陣の動きあり。』
との情報が入りました。」
石田三成「(狙いは)ここか?」
島左近「いえ。
『東山道を通り、近江に入る。』
との事であります。」
石田三成「佐和山か?」
島左近「いえ。
『大阪を目指す。』
との事であります。」
石田三成「わかった。宇喜多様にお伝えしてくれ。
『前線を近江国境に変える。』
と。」
島左近「その事についてでありますが。」
石田三成「『ここに留まれ。』
とでも言いたいのか?」
島左近「いえ。そうではありません。大谷様を救うため、近江に向かう事。これに反対ではありません。ただ何もせず、近江の陣所へ移動するのはお待ちいただきたい。」
石田三成「松尾山の前で相対すのか?」
島左近「松尾山の前と言えば前であります。ただ殿がお考えになられている
『前』
とは少し異なる場所であります。」
石田三成「ん!?」
島左近「いくさの事はお任せ下され。」
9月14日午後7時。石田三成ら大垣城の主力部隊は出撃。赤坂に気付かれぬよう馬の口には枚を噛ませ。蹄には藁を巻き。そして松明も灯さず。ただひたすらに雨の中、兵を進めたのでありました。
翌9月15日深夜2時。
本多忠勝「殿。三成が松尾山に向け動いています。」
徳川家康「掛かったか?」
本多忠勝「はい。」
徳川家康「東山道か?」
本多忠勝「いえ。南宮山の南を迂回したとの事であります。」
徳川家康「ならば背後を気にする事も無いな?」
本多忠勝「はい。」
徳川家康「福島に伝えよ。
『三成は南宮山を回り、松尾山に向かった。』
と。」
本多忠勝「わかりました。」
石田三成が松尾山に向け動いた事を知った福島正則は勇躍出陣。これに福島同様石田三成に恨みを覚える黒田長政に細川忠興。そして加藤嘉明が追随。赤坂を出陣し、東山道をひたすら西へと進めたのでありました。その頃、南宮山……。
吉川広家「動いたか……。」
安国寺恵瓊「吉川様。如何為されます?」
吉川広家「石田殿が南宮山を回ったと聞いている。恐らく近江国境に構築した陣所へ赴くものと思われる。これらは高所にあり、敵も手を焼く事必至。あそこで苦しんでいる所を狙う。」
安国寺恵瓊「家康は?」
吉川広家「あれは督戦部隊。実戦に役立つものでは無い。突っ込まぬ限り、攻め寄せて来る恐れは無い。」
安国寺恵瓊「わかりました。秀元様にお伝えします。」
吉川広家「お願いします。」
福島正則らは垂井を通過。南宮山に動きが無い事を確認し、再び西進。徳川家康が新たな陣所に考えていた桃配山辺りに達したか?思われた丁度その時。




