南宮山
安国寺恵瓊「それで私の所を尋ねられた。と言う事でありますか?」
石田三成「はい。」
大谷吉継の話を受け、石田三成は今の岐阜県の大垣市。同じく不破郡垂井町に関ケ原町。そして養老郡養老町に跨る標高419mの南宮山に布陣する安国寺恵瓊の下を尋ねたのでありました。
安国寺恵瓊「大谷様や島殿は
『吉川を信用する事は出来ない』
と仰ったのでありますか?」
石田三成「私はそのようには決して……。」
安国寺恵瓊「石田様は御人好しでありますね。」
石田三成「えっ!……と言われますと?」
安国寺恵瓊「あ奴のこれまでの動きを見ればわかるでしょう。」
石田三成「確かに吉川殿は、輝元様の上坂に反対されていました。しかしその後の安濃津城での戦いで主力として働かれたと聞いています。」
安国寺恵瓊「……あぁ。あのいくさで戦ったのは秀元に長宗我部様。長束様と私でありまして、吉川はこれと言った活動はしていません。吉川並の働きをした人物を他に1人挙げるとするならば……。」
鍋島勝茂。
石田三成「既にここを離れた?」
安国寺恵瓊「はい。それにも関わらず吉川は、
『自らの活躍により、安濃津を開城させる事に成功した。』
と喧伝。流石の秀元も閉口していました。」
石田三成「(……安国寺と吉川の仲も踏まえて受け取らなければならないか……。)」
安国寺恵瓊「石田様?」
石田三成「聞いていますよ。」
安国寺恵瓊「その吉川の事を大谷様と島様が不審に思われている?」
石田三成「申し訳ない。」
安国寺恵瓊「いえいえ、我が意を得たりであります。ところで石田様。」
石田三成「如何為されましたか?」
安国寺恵瓊「今、我ら毛利勢が布陣しているのは南宮山の東側。徳川方が居る赤坂に睨みを利かせると共に、もし徳川方が大垣城を攻めた際の後詰めを想定されているものと思われます。」
石田三成「はい。」
安国寺恵瓊「1つ気になる事がありませんか?」
石田三成「何でありましょうか?」
安国寺恵瓊「もしこれらの場所で動きが見られた場合……。」
南宮山で最初に発見するのは誰でしょうか?
安国寺恵瓊「そして……。」
兵を動かすのは誰からになりますでしょうか?
安国寺恵瓊「吉川広家であります。しかも今、吉川が居る所は……。」
高所に陣取る毛利秀元は勿論の事。安国寺に長束。そして長宗我部に至る全ての部隊が通らなければならない場所にあります。
安国寺恵瓊「吉川は
『先手を務めます。』
と言っているかもしれませんが。」
石田三成「秀元様の動きを牽制する事も念頭に置いている?」
安国寺恵瓊「はい。故に……。」
大垣での籠城は控えた方が宜しいかと。




