時間を掛けるわけには
加藤清正「しかし時間を掛けるわけには行かぬ。」
庄林一心「兵糧攻めをされるのは避けなければなりません。」
島津義弘「進出した以上、結果を残さなければならぬ。」
島津豊久「仰せの通り。」
島津義弘「敵は我らの鉄砲を恐れていると見て?」
島津豊久「間違いありません。」
島津義弘「ならば……。」
まだ清正が抑える事が出来ていない藤崎台の突端へ進出するのが上策。
島津豊久「わかりました。先手は私目が担います。」
段山から島津豊久が出撃。鉄砲隊を前面に押し出しながら藤崎台目掛け突進。
庄林一心「殿!」
加藤清正「どれくらい持ち堪える事が出来る?」
庄林一心「一刻でありましたら。」
加藤清正「わかった。伝令!森本に伝えよ。」
藤崎台への侵入を試みる島津豊久。島津隊が放つ鉄砲を急ごしらえの小楯で防ぎながら豊久隊と相対する庄林一心。両者一進一退の攻防が続くが、兵数で劣り。かつ仮説の防御設備での対応を余儀なくされた庄林は後退。その前に設置した小楯に下がり、再度の抵抗を試みるも多勢に無勢。難しい状況に追い込まれていた。その時……。
一発の砲弾が島津兵の前衛に着弾。
加藤清正「何とか間に合ったか?」
庄林一心「なあに殿。斯様なものが無くとも!」
加藤清正「なら法華坂に戻そうか?」
庄林一心「いえ。兵器があるに越した事はありません。ただ……。」
加藤清正「どうした?」
庄林一心「大筒の弾でありますが……。」
島津の前衛に打ち込むのは止めて下さい。
庄林一心「中に我が部隊が混じっている恐れがあります。今回被害が無かったのは偶然でしかありません。」
加藤清正「では何処を狙えば良いのだ?」
庄林一心「後方をお願いします。さすれば敵の新手を防ぐ事が出来ます。前線に残された敵は私が対処します。」
加藤清正「わかった。」
島津豊久「清正め。藤崎台にまで大筒を用意しておったとは……。仕方無い。皆の者!段山へ引き揚げる!!」
段山。
島津義弘「ん!?豊久が退却を指示したか?」
「敵が大筒を準備しており、これ以上の進出は困難との事であります。」
島津義弘「……わかった。豊久を救うべく藤崎台へ進む。」
「大筒の射程内に入ってしまいますが。」
島津義弘「構わぬ。こんな何の備えも無い所に置いておける大筒の数等知れている。その大筒が着弾するのであれば、それもまた運命。受け入れる他無い。」
藤崎台。
加藤清正「庄林!義弘が動いた!!追撃は止めよ!!!」
庄林一心「わかりました。ただこれを機会に藤崎台の突端に備えを施したいと考えます。」
加藤清正「奴らが黙って段山に戻ったら許可する。ただ……。」
庄林一心「敵の射程には十分気を付けます。しかし今は守りを整えるのが先決であります。」
加藤清正「わかった。ただ無理はするなよ。」




