プロローグ
(トントントントン。トントントントン。)
「あ~~あ。サウジの金満サッカークラブが、間違って俺と契約してくんないかな?」
(トントントントン。トントントントン。)
「『自身を高める。』と考えたらイングランドでプレーするのも悪くは無いか。」
(トントントントン。トントントントン。)
「て言うか。」
(トントントントン。トントントントン。)
「学校の授業以外で、サッカーをやった事なんか無い。」
(トントントントン。トントントントン。)
「『ボールを持ったら、とにかく思いっきり遠くへ。可能な限り外に向けて蹴り出せ!』が唯一の教えだったな。」
(トントントントン。トントントントン。)
「自陣のゴール前でパスを繋ぐなんて。とてもとても。」
(トントントントン。トントントントン。)
「さっきから何『トントン』言っているかって?」
(トントントントン。トントントントン。)
「頭皮に刺激を与えているんだよ。」
(トントントントン。トントントントン。)
「前髪が無いわけでは無いが、薄くなっている事は否定しない。」
(トントントントン。トントントントン。)
「気付いてからでは遅いからな。」
そこへ
「こんにちは。宅配便です。」
「は~~い。今行きます。」
「おぉ届いた届いた。
『何が?』って。新しい発毛グッズに決まっておろう。
なになに?『これを使えば発毛の悩みの全てから解放されます。』とな。
怪しいな……。
ただ物は試し。駄目だったら高い授業料と割り切れば良い。
それに内服タイプでは無いので身体に害を及ぼす恐れも低い。
今回も打撃タイプ。説明書には
『何処そこに当てるのが効果的。』
と丁寧に部位も記されている。
では早速試してみるとするか……。」
「せ~~の。」
(グサッ!!)
「……グサッ?」