集落
1階のロビーにつくと、もう既に仲良くなって話をしている人や、1人で隅の方で本を読んでいる人、椅子に腰掛けている高齢者等揃っていた。
12時58分、数名のスーツを着た人達がマンションに入って来て、何やら準備を始めた。
13時になったと同時にロビーが少し暗くなり、映像が流れ始めた。
映像には現総理大臣の雪衣 直登が現れた。
「皆様、お集まり頂きありがとうございます。まずは長旅のお引越しお疲れ様でした。…現在、この国は減退の一途を辿っています。この制度をまずはこの神奈川県から始め、全都道府県で今後行っていく予定です。この相模原市の一部地域を生保区とし、この生保区は集落として考えて下さい。」
制度について雪衣総理大臣から詳しく話された。
話された内容は、この集落には消費税がないこと。そして、自給自足の生活をしても構わないし、今まで働いてきたことを活かして仕事をしてもいい。食事は毎食提供あるが、それは集落に納めた物で翌月の配給の質が変わるという。物は稼いだお金でも自給自足で出来た食物でも、商売として売っているものでもいいという。
1人での生活が難しい高齢者は高齢者施設で生活。
学校はこの集落に小中高は1校ずつ。学生はそこに通うことになる。
「ここまでで分からない点はありますか?」
総理大臣にそう聞かれるも、ここにいる全員が頭の中で整理するのに必死だ。
大人が頭の中で整理するのに必死な中、1人の高校生が手を挙げた。
「この集落からは出れますか?」
その問いに大人達は総理大臣を見た。スーツを着た男性が総理大臣と通信しており、その問いに総理大臣が笑顔で答える。
「それは許されない。この集落から出たければ出ればいい。だが、出た人間はもうこの集落には入っては来れず、外に出て情報を流されても困るので、私の管轄下で働いてもらうことになる。それが子供だろうが高齢者だろうが…だ。それが、国として税金払わずして国民に食・住を得られるように出来る最大の譲歩かな。」
その言葉を聞き、一部のものは頭を抱え、一部のものは納得した。
「それでは私からの話は以上となります。あとの質問についてはそこの私の部下の人に聞くように。ではこれで失礼する。」