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電話が鳴った。
わたしは、よっこらしょ、と立ち上がって出た。
「はい、●●です。」
「ああ、良かった! おいでになりましたか。ボクは○○君の大学の同級生で、■■と申します。
実は○○君が大学内で大麻を所持していたとして、逮捕されてしまったんです。彼がそんなことするような人じゃないことはボクが一番よく知っています。何かの間違いです。でも警察は大学生の言うことなんか信用してくれません。
幸い、ボクの叔父の知り合いに有能な弁護士がいるんです。でも、ボクは依頼するようなお金は持ってないんです!
急ぎます! 警察は、こいつはクロだと決め込んだら、何があっても犯人に仕立て上げてしまいます。大学生の大麻冤罪事件なんか、マスコミだって騒いでなんかくれません!」
「まあ、どうしましょう! わたし、どうしたら・・・?」
「お金さえ準備していただければ、これから弁護士事務所の人にそちらに行ってもらいます!」
「おいくらくらい準備すれば?」
わたしはオロオロした声で聞いた。
「とりあえず手付けですから、100万くらい準備すれば・・・。」
「わかりました。」
しばらくして、玄関のチャイムが鳴った。
「△△弁護士事務所の□□です。」
「はい。ただいま、まいります。」
わたしは、たまたま配属の報告に実家に帰ってきていた息子に目配せした。大学を中退して警察学校に入り直し、刑事課に配属されたばかりの息子が応対に出た。
いつのデータを基に電話してきたんだか・・・。