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3 世界第三位

 神の信託に訪れた俺は困惑していた。

 能力を授かったのはいいが、その能力名が『世界第三位の能力』などというよく分からないものだったのだ。


 なんなんだ世界第三位って……一体何が第三位なんだ?


「安心しろ、少年、我々で考察してやる。さぁみんな考察しましょう、世界第三位というのは何が第三位なのかということを」


 その場にいた神の信託の補佐員たちも考えてくれるようだった。


「世界第三位ってことはやっぱり何かが第三位ってことだよな?」


「つまり一番とニ番があって、その次の三番目に良いってことで間違いないだろう」


「いや待て。後ろからという可能性もあるんじゃないか? ワースト三位ということも考えられると思うんだが」


「いや、第三位なんて言い方なんです、ワーストの方の第三位だというのなら、ワースト第三位という風に言うはずじゃないですか?」


「分からなくなってきたな……」


 みんなも頭を抱えていた。

 第三位……実に深い言葉だ。


「ビコン君、と言ったかね」


 男の一人が神妙に話しかけてくる。


「あ、はい」


「すまないが、我々の力量では世界第三位というものが一体何なのか突き止めることは難しいようだ。一度家に持ち帰ってゆっくり考えてみてはくれまいか?」


 まぁそうするしかないだろうな。

 第三位が何かというのがものすごく気にはなるが、今すぐどうこうなる能力というわけではなさそうだし、今のところは大丈夫だろう。


「わかりました。じっくり考えてみます」


「少し、よろしいですか?」


 すると、そこへ凛と響く女の声があった。

 振り返ってみると、ローブを身にまとい顔を仮面で隠した、かなり背の低い少女がいた。


「君は、なんだね?」


 補佐員の一人が話しかける。


「その世界第三位の能力とやらの詳細が分からない、ということですよね?」


「うむ、そうだな。だがなぜ無関係の君がその能力の名を知っている?」」


 補佐員が訝しげな表情で尋ね返す。

 女の声はどこかあどけない。女というよりは少女と呼ぶほうがしっくりくるかもしれなった。というか相当声が高いぞ、幼女と呼んでも違和感がないくらいだ。


「いえ、もし差し支えないようでしたら、私がその答えを教えて差し上げようかと思いまして」


「なんだと?」


 補佐員たちの警戒がますます高まる。


「だってお困りなのでしょう……?」


「……そうだな。確かに私たちは、世界第三位の能力というものが何かということが分からない。いいだろう、もし分かるというのであれば、ここで発言してみるといい」


「わかりました」


 その少女はゆっくりと間を作った。


「その世界第三位の能力……その能力の正体は……」


 少女はためにためた。そして言い放つ。


「世界第三位……つまり、世界で第三位の能力、ということなのです!」


 ……え?


「あぁ、えーっとだな……それはもちろん世界で第三位というのはこちらも予想している。だがその世界第三位というのが一体なんの三位なのかということを知りたいのであってだな」


「世界第三位の能力なのですから、世界で第三位の能力ということですよ。わかりませんか?」


「おい、こいつは一体なんなんだ?」


「何しにここに来た?」


「私ですか? ふふ、私は――はぁ!!」


 少女は仮面を脱ぎ、宙に投げた。

 その顔があらわになる。


「私は、通りすがりの者です!」


 ということだった。


 聞くところによると、少女はなんとなくこのテントに立ち寄っただけの、ただの一般人だということだった。

 能力についても、テントの前で聞き耳を立てていただけらしい。

 マジで紛らわしいだけの奴だった。

 なんだよそれ、なんの時間だったんだよ。


 俺が退出してからも、少女はテントの中でこってりと怒られていた。

 当たり前だな。



 その後、テントの近くでジャムソンを待っていると、少女がどんよりとした感じでテントから出てきた。

 その少女を見ていたのはなんとなくという理由だったが、見すぎていたのか少女とうっかり目が合ってしまう。

 少女はこちらへと歩いてきた。


「こんにちは。あなたのせいで大変なことになりました」


 少女はまっすぐと俺を見据えて言ってきた。

 紫の髪に、小さな唇。

 改めてみると結構かわいいのかもしれない。頭がおかしそうだというのを除けばすごく人気がありそうだ。


「なんで俺のせいなんだ? 君がむちゃくちゃやったせいでしょ?」


「君ではありません。私はヴァニラです。ヴァニちゃんと呼んでください」


「なんでそんなに気安く呼ばないといけないんだよ。俺はビコンって者だけど」


 名乗られたので、一応礼儀で名乗り返しておいた。


「ビコン……そうですか。覚えておきましょう。ただ一つ、これだけは言わせてください。あなたと私は一心同体。あなたは嫌でも私と結ばれる運命でしょう」


「は? 何を言って……」


「ちょっとヴァニラー!」


 と、そこで遠くから一人の女声が小走りでこちらに駆け寄ってきた。


「ちょっとヴァニラ、何をしてたの?」


 その人物は少女と親しい人物のようだ。


「すみません、うちの子が。どうにも最近態度が変わってしまって……」


 どうやらお母さんらしかった。


「こら、勝手に出歩かないって言ったでしょう?」


「ふふ、私に指図するとは、母上も大きくなりましたな」


「またおかしなことを言って……あの、どうもすみませんでした」


 そう言い残し、少女とそのお母さんは去っていった。

 一旦何なんだ……まぁいいや。考えても仕方ない、とにかくもう忘れよう。変な奴に出会ったら忘れるのが一番だ。



 その後、替えのズボンを履いていたジャムソンと合流し、おじさんと一緒に馬車に乗り再び村へと帰った。

 なんか人生における重要な一日という割には随分あっさりだったような……結局俺もジャムソンも良い能力を貰えなかったし、また普通の日々が始まるだけか。

 世界第三位の能力といのも意味不明なだけで害はなさそうだし、一旦ほっといてもいいだろ。



 そんなこんなで今日という一日は終了した。

 帰りの道で、ジャムソンは二回おもらしした。



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