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迷い迷って辿り着いたのは……あなたの隣でした  作者: あさぎ
一章 情熱色の真っ赤なワイン
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1.アンナ・ロングフェロー

〜 一章 サイラス編 〜


事故に遭い異世界に転生してきたアンナ。

そんな彼女は今、イケメンで女の扱いも上手いサイラスという青年と恋仲にあった。


しかし、サイラスのふわふわとしたまるで遊び人のような態度になんとなく嫌な予感が拭えない。

彼に限ってそれはないと思いつつ……心には段々と不安が募っていく。


 


 ここは、中世ヨーロッパのような雰囲気の世界。


 街にはおとぎ話のようなレンガの家がずらっと建ち並び、石畳がその間を縦横に走っている。


 ここから少し遠いけど、奥には立派なお城だってある。




 前の世界では冴えないOLだった私。


 ある日帰宅中にスマホを見ながら道路を渡っていたら……急に突っ込んできた車に撥ねられ、その命は突然終わりを迎えた。


 そして終わったと思ったら、なぜかまた目が覚めて。

 気づいたらなぜか、今度は別の世界で生きる事になってしまった。




 しかも、転生したのは貴族の一人娘……いわゆる『令嬢』で。


 まるで『異世界転生』のお話のような展開だった。

 私が向こうの世界で好んでよく読んでたジャンル、まさにそれそのもの。




 だから、私もそのストーリーみたいに好みのイケメンに出会って、あっさりすぐに結婚できるものだと思ってた。


 私が転生してくるまでに色々と準備できていて、すぐさまサクッと『恋愛』が始められるものだと思っていた。




(でも、そんな事はなかった……)


 世界は変わっても、現実はやっぱり現実だった。


 私はあくまで『この世界の人間』として再び生を受けた。

 誰かの作り話でもなんでもない、本物の世界として生きる事になってしまっていて。


 だから、お膳立てなんて当然されてるはずもなく。

 前の世界と同じく、そこは自分の力でなんとかしないといけないらしかった。


 当たり前っちゃ当たり前だけど、異世界来てまでそんな現実的な事に縛られるとは微塵も思ってなかったから……正直ガッカリ。


 そもそも、お目当てのイケメンだって……そもそも周りにほとんどいなくてさらにガッカリ。


(せっかく転生してきたんだし、それくらいは夢を見させて欲しかったんだけどなぁ)




 まぁ、最初はそれこそショックだったけど……それはそれでいいかと最近は開き直っている。


 別に無理に結婚なんてしなくたっていいし、それに……


 なんてったって、令嬢生活が最高すぎるのだ。

 もう最高すぎて結婚とかどうでもよくなるレベルに。




 まず何と言っても、働かなくていい。


 365日休日。

 素晴らしすぎない?最高すぎない?


 朝、無理矢理眠い目こじ開けて起きなくて良い。


 嫌な上司とかお局様、ヤバい客とかの相手なんてしなくていいし、理不尽な業務を振られる事もない。残業だって当然無い。




 そしてそして、好きなものばっかり食べていい。これまた最高。


 あれが食べたいわ〜って従者の一人に頼めばポンポン出てくる。

 普通の高級食材はもちろん、貴重なキャビアにトリュフだって山盛り食べ放題……どんなものでも言えばすぐに屋敷の専属の敏腕シェフが腕を振るってくれる。




 かと言って、お金の心配もしなくて良い。

 家の収入源である、領地の管理とかそういうのはぜ〜んぶ家来達に任せてるから。




 だから、ただひたすら遊んで暮らすだけでよかった。


 暇になってどこか行きたくなったら、従者に言えば馬車でさくっと連れて行ってもらえる。


 貴族だからってずっと屋敷に篭っていないといけないのかと身構えていたけど、王家とかとは違うらしく案外その辺の制限はゆるくて。


 できるだけ目立たないようにした上でそこそこの時間までにちゃんと戻ってくれば、割とどこへ行くのも自由だった。


(と言っても、調子に乗って夜中まで友達の屋敷で飲んでた時は流石に叱られたけど……)




 唯一の仕事は月に数回ある晩餐会だけ。

 ほぼ強制参加だけど、集まったお偉いさん相手に愛想笑いで適当に社交辞令を連発するだけの簡単なお仕事。


 むしろやらなきゃいけない事といえばそれくらいしかなくて、基本的に超自由。


 毎日毎日、好き勝手遊んでるだけでいい。


 書斎にある大量の本を好きなだけ読み漁り、色とりどりの花の咲き乱れる広い庭を散歩して、友達と長々お茶したりして……




 そんな、何不自由ない生活を……

 私は『長間 杏奈』改め、『アンナ・ロングフェロー』として新たな人生を楽しんでいた。



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