ウィックスの怒りと恐怖
「料理の世界も難しいな」
獲物を見つけては全身で丸飲みにする意外の食事をあまりしてこなかった僕には難しい
と本を読みながら歩く、君たちの世界で言う歩きスマホと同じ事で煙たがれるが、そんなのこんな格好してるんだしどうでも良い。
「きゃっ!」
クロニーは何者かに口を押さえられ路地裏へ引き込まれた……!
まずい……反応が遅れた……しかし下手に派手な事は出来ない、何せ僕は死人、何かの拍子で死者の生存がバレると誘拐犯以前の問題となる
僕は路地裏に人の速さで駆け込んだ
◇
「……っ!…っ!フロストファング!」
ガチッ!
クロニーは氷魔法を自分の歯にかけて誘拐犯の腕に噛み付いた
「ぐぉっ!大人しくしやがれ!」
ズサッ……!
クロニーの右腕にナイフが突き刺さる……!
「イヤ……いっ……ああっ……!」
クロニーは右腕の響く激痛に蹲った
「リグロウ」
「うぅ……うう?あれ?」
クロニーの傷が治る、そして誘拐犯の目の前にウィックスが現れる
クロニーの悲鳴を聞きつけた瞬間、僕は本気になってしまった……
「よくも好き勝手してくれたね……」
いつもの何処か抜けてる雰囲気は消え、肌が引き裂けそうなほどの怒りと血が凍るような殺気が誘拐犯に向けられる
「」
恐怖の悲鳴すら上げる暇すら無かった、誘拐犯は右胸を貫通され肋骨の間に指を通して鷲掴みにされ、一瞬にして天高くまで連れ去られた
僕は誘拐犯の首に指先を打ち込む、これは時間感覚を麻痺させる毒、もう助からないだろうし即死しない量寸前に打ち込んだ
「償う地獄は作ってあげるから、そこで今までの行いを省みるんだね」
そして誘拐犯を街の外の方に全力で投げ飛ばした
奴は宙に舞う恐怖、空気摩擦で全身が焼ける感覚を長時間味わい続けるんだな
◇
僕はクロニーの元に降り立った
「さっきの人はどうしたの?」
「どうしたって……誘拐犯が許せなかったから……」
「私は人のことを言えないけど……それで殺して良いと思ってるの!?」
お礼の言葉が来る思っていたが返ってきたのは疑問と怒りの怒号だった
「っ……」
何も言い返せなかった……怒りに身を任せた自分を後悔する……
「ウィックスは『僕の力の使い道は僕だけが決める』って言ってた、でもそんな使い道はしてはいけない!ウィックスならもっと良い方法なんていくらでもあるのに!」
僕は軽いパニックに陥った、嘘だ……まさか……もしかしたら本当にクロニーの心は遠くへ行ってしまうんじゃないか……
「……実は前にもあるんだ……あまりに許せない人がいるとあらゆる手を使って、必要以上に苦しめて殺す時が……そんな自分が怖い……自分自身が違う人間みたいになってしまう事があるんだ……僕は……どうすれば良い?」
思考回路が恐怖で押しつぶされて肝心な事が言えない、全く検討ハズレな事をつらつらと並べていく……
だがいずれも相手は悪人だ、許されない事をしていたのも事実だった、でも彼らにも家庭があっただろう、友人もいただろう、それらの関係を理不尽に踏み躙ることなどやってはいけないこと、ましては必要以上の苦痛を与えて殺すのはタブーなのは分かっているのに……
「えぁっ……ウィ…ウィックス?」
クロニーは僕の異常な動揺を前に怒りの表情から困惑に変わる……
「怖い……僕は……やめてくれ……独りにしないで……離れないで……」
全く脈絡の無い言葉を吐きながら、地に膝をつき頭を抱えた……情けなさすぎる言葉が吐き出される……
「ウィックス……そんな顔しないでっ……!離れたらなんてしないよ!」
クロニーの柔らかい感触が僕の顔を覆い尽くした……
「あっ……あぁぁっ……」
クロニーの優しい感触が恐怖で凍りついた心を溶けてゆく……
クロニーに突き離される方が怖い……そうされると僕は本当に独りになってしまう、もう僕にはクロニーしか居ないのに……こうやって近くで居て安心出来る人はクロニーしか居ないんだ……
「良かった、落ち着いてくれて……それと私を助けてくれてありがとう、助けてもらったのに怒っちゃうのは良くないよね……ごめんね……けど今後殺人は絶対ダメだからね」
「うん……どうにか工夫するよ……それと僕の頭を撫でて……」
「えっ?こう?」
「ぁぁぁ……」
僕は目を瞑り、凍りついた心をじっくりと溶かしてもらった……
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