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失望

「レニン……ここに来てたのか……」


 クリィヴからの手紙を読み思わず声が漏れる


「今日も何か用事があるの?」


「クリィヴに呼ばれた、クロニーは家で本でも……」

「いや!ウィックスと一緒が良い!」


「……だけどこの前の誘拐犯とか……」


「……いや!私はウィックスと片時も離れたくないの!」



「よう、ウィックス、彼女も一緒か?」

「クロニーのお願いは断れなかったんだ、職質されたけど顔を変えて誤魔化したり大変だったよ」

「面倒じゃないのか?」

「僕はクロニーと出来るだけ一緒に居たいから……」

「そ……そうか……」


 クリィヴは苦笑いを浮かべ答えた


「クリィヴさん……こんにちは……」

「おう、こんにちはクロニー」


「それと……いるねもう一人、部屋の奥に」


 そしねウィックスはドアの先に目を向ける


「この私を視界を介さずとも認識できるのは……やはり本物だな、ウェイマス」


「その呼び方はやめてくれ、もう僕はウィックスだ」


「それと……もう一人の子……誰?」


 ドアの陰に隠れて怯えるようにクロニーを見つめる……


「年下でもダメなのかお前は……」

「そうだ!怖いものは怖い!」


 呆れるクリィヴに開き直るレニン、そして僕に向けられた質問を返した


「その……僕の人生の伴侶だ」


「え……そ……そう……か……」


 レニンは複雑そうな顔を浮かべた……しかしすぐに我に帰ったかのように口を開く


「違ァう!私は雑談をしに来たのではない!ウィックス、私から消えて何をしていたんだ?!それを聞きたくてここに来たんだ!」


 ウィックスは目を逸らしつつこう答える


「えっと……クリィヴのパーティに入って貢献した」

「……他には?」


「この町を破壊しかねないドラゴンを倒した」

「……それだけなのか?」


「……それだけ……」


「それだけなのか……失望した……」


「……」


 ウィックス以外はよく分からないようだが彼は黙り込んだ……


「私は……ウェイマスに唐突に消えられて怖かった、不安だった、だって命懸けの仕事でミスしてももう誰も助けてくれない……だけどウェイマスが世界の為に飛び回り多くの人の窮地を救っていると信じてたから……耐えられていたのに……!挙句の果てにこんなちっぽけな幼女に堕ちていると来た!ここまで落ちぶれたか!ウィックス!」


「……ごめん、レニン……」


 レニンの怒号に僕は下を向きながら謝りこう続けた


「若い頃の僕は知ってしまったんだ、英雄になれない事を、そして僕は恐怖の対象であることを、僕がいくら人を助けても後に聞くのは怪物の話、それに人同士の戦争も終わったら目を覚ましたかのように僕の話ばかり……自分のやってきたことが怖くなった」


 助ければ助けるほど僕と言う存在の恐怖を振り撒く事になった、その状況に僕は疲れてしまった


「次は自分を偽って少数の人にこの力を尽くした、それがクリィヴ達だった、けど次に生じたのは力が集中し人々の注目が集まったことから来る僕の存在の暴露の恐怖だった」


 次に不安は僕に降りかかって来た、決してパーティ達を信頼していない訳ではない、しかし注目される事で第三者が現れ僕の力がバレかねない……


「これ以上の危険を避けるために次の僕は孤独を選んだ、しかし誰にも触れない虚しさには数日たりとも耐えられずクリィヴに訪ねて居場所を教えてしまった」


 その時僕は知った恐怖よりも苦しい孤独を、人々との一切の関係を断って暫く経つと僕という存在が僕だけに使われている現実が途方もなく虚しかった……僕はこの力を誰かに使わないといられない性分だった


「ウィックス、私は納得出来ない!あなたがここまで恐怖に支配される弱い存在だなんて信じられない!信じたくない!私はウェイマスが憧れだった!理想の英雄だった……なのに……ねえ……私にもう一度見せてよ……圧倒的な力を用いて皆を救う英雄のウェイマスを……」


 レニンは前のめりに顔を前に突き出し叫んだ


「……もう僕は君の思うウェイマスじゃない……それに僕の力の使い道は僕が決める、そして僕は決めたんだ、僕はクロニーの為にこの力を使いたい」


 どうやっても納得が行かない僕が見つけた答えが彼女だった……彼女は力をほとんど持っていなかった、それなのに僕の恐怖を催す行動や間違えを犯しても真っ向から向き合える勇気、そして不安も孤独も全てを優しく包み込んでくれる母性……


 クロニーは僕とは真逆だった、だからこそ愛おしくなってしまった、そして僕は彼女に魅了されてしまった


「……そうか……だが一つ誓ってくれ、どうか悪役にはならないでくれ……あなたが悪に染まれば誰にも止められない……だから……」


「分かってる、僕はこの地球を終わらせる要素が全て揃ってしまっている、だからこそ責任を持って誓うさ、それともう一つ……」


「僕のクロニーを『ちっぽけな幼女』って言ったの……それはどういうこと……?」


 ウィックスから突き殺すような殺気がレニンに向けられる……!


「ひぃぃっ!すみませんでした!師匠!」


 一瞬でレニンは土下座し許しを乞う


「さっきまでの威勢はどこに行ったんだよ……それとウィックス、ソレを気軽に使うな」


 クリィヴは呆れながら言った


「ごめん、つい……」

「全く……これから苦労しそうだ」


この拙い作品が気に入った物好きはブックマークをしてくれると嬉しいです、

ただ評価されると筆者は


高評価→調子に乗ってさらに拙くなる

中くらい→微妙な気持ちになる

低評価→落ち込む

のでぶっちゃけしない方が心の平静を保てます。(建前)

どうしてもしたいのなら止めはしないさ。(本音)

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